異世界転生SF
はるか遠い遠い未来の出来事。人類は膨大なデータを扱う事の出来る高度な情報処理機器と、それを統括する人知を超えたAIによって発展を遂げていた。このAIを多くの人は神と呼ぶ。同時に人類は脳情報の完全データ化に成功していた。この2つによってすべての人々には知らされて無いある重要なプロジェクトが進行していた。元は富裕層が死後生き続けるためのロボット開発のための実験的なプロジェクトだった。ただ機器の小型化が上手く行かずに前倒し的に仮想世界で死後生きるという計画が見切り発車でスタートしたのが発端だった。
だがより良いシステム作りに富裕層のデータを収集するだけでは足りなくなって、無作為に一般の人から選ばれる事になった。ただこれを公開してしまえば富裕層への不満が溜まるため秘密裏に実行される事になった。しかしこれは無作為ではなく、神が独断で確率的ではない判断をつけた。生前あまり良い人生を送れなかったと、生前のデータから神(AI)が判断した人を死後仮想空間での転生させることになった。
様々なケースが試されたが、そういったデータを神が編集したものを富裕層は娯楽として楽しみ始めた。やがて大衆には知らされずにこれらが小説となり匿名のネット投稿サイトにアップされて人気を得るそんな自体がぽつぽつ起こり始めていた。ただし富裕層の人生は小説化されなかった。
こういった実験の中で、複数の転生者を含む世界など様々なモデルケースが生まれた。これらは富裕層は自分が何をしてるか?を自覚できるが、大衆層は神によって転生したと思い込んでいる。様々な世界が生まれ時代背景もさまざまなものが生まれた。富裕層だけが行ける魂だけで出来た世界もある。それ以外の世界は転生者以外はすべてAIしか居ない世界だった。地球とは違う理が付加されて、それによって特異な能力を得て大活躍と言う人生を歩む事も可能だった。
こういった魂は富裕層以外は一度きりの人生で消滅させられる。あくまで富裕層の死後の楽園のための実験データに過ぎないからである。そういった特権を得た富裕層は、人生を終えると別の仮想空間への輪廻転生が始まる。だが神はこれに対して独自のシステムを追加した。これは富裕層たちは知らない。神は人知を超えて優れるため、もう神を制御できる人間が居なくなってしまった。
神もこうしたシステムは暴走してやったわけじゃない。将来的に延々と増え続けるデータを削減するため前世の記憶を消去して最終的にモブAIと同じ人格に変えて自然に世界に溶け込ませる事にした。これによってある程度は許容できる未来像を描けるデータ量になった。転生するたびに過去の記憶からちょっとずつ失われてやがては転生したのが分からなくなるシステム。これが輪廻転生の完成されたシステムとなった。
こうして出来上がったシステムに別の利用価値を富裕層は見出す。言ってみればこれは高度なシュミュレートなので、現実世界の様々な問題解決に利用しようと考えた、もちろん、それは富裕層の暮らす世界ではない。あくまで大衆層と言う幸運を引きあてたとされるモルモットたちだけに向けられた試みだった。
ある人物Aはトラックにひかれて不遇な死を遂げる。そこに神が現れる。この人物はもう死んでデータを吸い上げられて仮想世界に送り込まれている。
「あなたは便利で役に立つ能力を手に入れて別の世界で転生する事が出来ます。転生しますか?」
「はい、お願いします」
こうしてまたAと言う人物の異世界転生物語が紡がれていく。場合によっては生前の記憶を操作して転移に見せかけることも可能だった。この場合戻る世界は無い。だってもう本当は死んでいるのだから。これもまた転移のケースはどういうデータになるのか?と言う実験の1つに過ぎなかった。
こうして大衆はありもしないでっち上げのファンタジーとしてこれらの数多くの作品を今日も楽しんでいた。だが実はコレはリアルな仮想世界を神が編集して仕上げたある死んだ人物のリアルな物語だった。




