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2.怠惰の騎士

 ベルフェゴール・コルレアーニは、最年少の親衛隊メンバーだ。

 親衛隊のメンバーには、それぞれチェスの駒に見立てられた階級がある。この階級は、その人物の力量によって定められている。

 ベルフェゴールはその中の『ナイト』に属している。高いといえる程の階級でもないが、まぁ『ポーン』よりはマシだろう。

 ちなみにレヴィアも親衛隊の一人で、階級は『ビショップ』。ベルフェゴールとそこまで変わらない。

 僕はすれ違った人に居場所を聞きながら、ベルフェゴールを探し歩いた。


「あの、すみません。ベルフェゴールさんは────あ」

「……ん?」


 白銀のショートヘアに、気だるげな目。見た目も僕と同じ位の年に見える。

 間違いない。彼がベルフェゴールだ。


「君は……どこかで会ったっけ?」

「あ、いえ、初めてです」

「そっか……僕に何か用事?」

「はい、少し聞きたいことが。三年ほど前に斬首刑になったソニア・サーペントの事なのですが…」

「……君、彼女の知り合いなの?」

「!…い、いえ…何故反逆などと馬鹿げた事をしたのかと疑問に思いまして…親衛隊の貴方なら何か存じているかと…」

「……ふぅん……」


 ベルフェゴールは少しだけ目を細めた。

 危ない。妙に勘の鋭い奴だな。

 もし僕が姉さんの弟だという事がバレたら、今までの努力が全て水の泡だ。それどころか、僕も首を切ることになってしまうかもしれない。

 僕は垂れてきた汗を拭った。


「……残念だけど、僕は何も知らないよ。何たって、その時僕は十五だからね。サットは……リーダーは、何も教えてくれなかった」


 そう言うと、ベルフェゴールは視線を落とした。

 なるほど。彼はまだ子供だから、事実は知るべきではないと。そう思われたのだろう。


「……そうだ、君の名前は?」

「私は…リベル・スペンサーです」

「リベルね……あと、そんなに畏まらなくていいよ。敬語も使わなくていいし。みんなからはずっと「居眠り坊や」って呼ばれてるから……あ、親衛隊のみんなね」

「…それじゃあ、お言葉に甘えて」


 僕の言葉を聞いたベルフェゴールは、僅かに目を輝かせた。


「ありがとうリベル……僕の事はべルフィって呼んでね」

「ああ、そうするよ」

「……そうそう、それからさっき「居眠り坊や」って呼ばれてるって言ったけど────」


 そこまで言って、ベルフェゴール────もとい、べルフィは、僕の後ろに何かを見つけた。

 後ろを振り向くと、そこには僕のよく知る人物が手を振りながらこちらへ駆け寄ってきていた。


「べルフィ!…と、リベル?レアな組み合わせだね」

「少し話してたんだ。ところで、何かあったのかい?」

「うん。べルフィ、ベルゼが呼んでたよ。また仕事サボったんでしょう?」

「……はぁ……怒られるの嫌だなぁ……」

「だったらちゃんとやればいいのに…ほら、早く!」

「……はーい」


 べルフィはレヴィアに手を引かれてどこかへ連れていかれた。

 去り際に、僕にだけ聞こえる声でこう言った。


「さっきの続きだけど……実は僕、女なんだ。……レヴィアは知らないけどね」


 僕はしばらくその場に固まった。



 次の日。

 僕は次なる標的(ターゲット)であるアスランを探そうとしていた。

 …のだが…


「…どうして君が僕の部屋に…」

「ごめんね。突然押しかけたりして……」


 いつのまにかドアの前にべルフィが立っていた。

 一体どうやってここを突き止めたんだ…?レヴィアにでも聞いたのかな…

 いつもと変わらぬ気だるげな目で、彼…いや、彼女は話し始めた。


「……また面倒な仕事が入ったから、逃げてきたんだ」

「逃げちゃ駄目じゃないか…ちゃんと仕事はしないと」

「そうだけど……じゃあ、リベルはアスランの子供の子守をしたいと思う?」

「…何だって?」


 僕は耳を疑った。

 親衛隊はそんな仕事もするのか、という事も思ったが、それ以上にアスランに近づける又と無い機会だと思った。


「…僕はやりたいね」

「……君、正気なの?」

「ああ。そこでだ、べルフィ。取引をしよう」

「……取引?」

「そう。僕が代わりにその仕事を請け負うから、君が上手く取り次いでくれないかな?僕が仕事をしている間、君はこの部屋を自由に使っていい…どうだい?良い話だろう?」

「……本当にいいの?」

「もちろん」

「分かった……ここで待ってて」


 べルフィは一旦部屋を出ていったが、すぐに戻り、


「……ありがとう」


 と言って、今度こそ出ていった。

 完全に足音が聞こえなくなったのを確認して、僕は椅子に座り、大きく息を吐いた。

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