第四話
――なんなんだ、あのラーメン屋!
鼻息を荒くするたび、都会の冷淡な風が、空の胃袋を刺激するようだった。
飛行機での長距離移動にも関わらず、機内食をほとんど食べなかったのは、どこかで日本の味を期待していたからなのかもしれない。それがこんな仕打ちを受けることになるとは……。
よくあんなふざけた店が経営を続けられているものだ。
もはや待つ時間すらも嫌になった飯田は、近くのコンビニに入った。
目に留まった弁当と菓子パン、缶コーヒーを適当に選ぶと、二つあるレジの早そうな側に並ぶ。
飯田の前には会計中の老人しか居なかったが、動作が遅く、待っているうちに反対側のレジが空いてしまった。
「次でお待ちのお客様、こちらへどうぞ」
店員からの誘導に従って、飯田が舌打ち交じりに隣のカウンターへ商品を置こうとしたときだった。
いきなり目の前の視界が塞がれた。何が起きたのかと思えば、首周りの肉をだぶつかせた女が、その寸胴な体を飯田とレジカウンターのスペースに割り込ませてきたのだ。
「おい、あんた。順番ぐらい守れよ」
「はい? 何を言ってるの? 私のほうが先に決まってるでしょう」
「……は?」
これだから先進国に胡座をかいてる奴は嫌いなのだ。余裕があるくせに、弁えのようなものがない。飯田は呆れたようにため息を吐くと、なんとかしてくれというふうに、店員へ目配せした。
しかし、
「申し訳ありません。こちらの、女性のお客様からとなりますので……」
注意を促されたのは、飯田のほうであった。
「な、なんでだよ! 俺のほうが早く並んでいただろうがっ!」
「あなたね、これが見えないのかしら?」
牛蛙のような顔をした巨体女が勝ち誇ったようにかざしてきたのは、またもあの識別バンドと呼ばれるものだった。
女はそのまま大量の商品が入った買い物かごをレジに置くと、唖然とする飯田を尻で押し出した。
なすすべなく振り返れば、先程まで並んでいたレジにもすでに新たな客が列を作り始めていたため、結局、ここでも飯田の順番は一番最後になってしまい、会計までに五分近くの時間を要することになったのだった。




