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TETSU: 2053  作者: 宮沢弘
第一章: ビジネス
2/9

2 接続

### 2

「先生、今、出てもいいかな」

 入口の横にあるボタンを押して言った。

 数秒遅れて返事があった。

「かまわないが。そこじゃぁ不便かい?」

「街の様子をと思ってね」

「そうか。あぁ、大丈夫だ」

 もう一つのボタンを押すと入口が開いた。

「居てくれると心強いんだがね」

「こっちも街の様子を確認できると心強いんだ」

 俺はジャケットの内ポケットからハンチング帽を取り出した。

「もう接続できてるはずだから、どうにかなるさ」

 医者は白衣のポケットから5cmほどの長さの棒を取り出し、放り投げて来た。

「鍵を渡しておくよ。気をつけてくれよな」

 俺は鍵を受け取り、ハンチング帽をかぶった。後頭部の炭素基体微細回路素子にあるアンテナの位置を気にしながら。

「接続確認」

 後頭部のさらに後にそれが黄色く表示された。

「大丈夫だ」

 ドアを開け振り向く。

「もし事が起こったら、後のメンテが必要になるぞ」

 俺は鍵を内ポケットのさらに裏側に入れた。

「かまわない。それも含めての依頼だ」

 脇道から一歩出ると、もう夜の第2世界市になっていた。ネオンが輝いていた。今どきとも思うが、アニメーション・ネオン看板も目に入ってきた。

 夜の第2世界市は、歌舞伎町に似ている。だが、多くを占めるのは飲食店ではなく、技術屋のものだ。秋葉原から流れて来た店もあるのだろう。

 歌舞伎町は薄膜ディスプレイを用いてもいたと思うが、第2世界市ではむしろ目につかず、レトロな雰囲気を醸し出している。見た目で言えば、むしろ秋葉原の方が歌舞伎町に似ているだろう。

 医者のビルを中心に俺は歩いた。所々で寿司や焼きとりをつまみながら、確認できる場所では、何箇所かの装備を確認した。確認できる範囲では装備に問題はなかった。

「薬剤の劣化が気になるところか」

 また何箇所かを確認し、天麩羅をつまみ、最後に蕎麦をすすってから医者のビルへと戻った。ビルのドアを閉める時に、どこからか銃声が聞こえた。

「まぁ予定どおり。ヤクザさん、頑張ってくれよ。テストが紛れる程度にさ」

 そう思い、俺はドアを閉めた。



### 3

 俺は制御室の冷蔵庫から炭酸飲料の缶を取り出し、ディスプレイを眺めながらリクライニング・チェアに座った。一瞬頭の中に青色が浮かぶ。

「ブルー・D5E32・スカイ・419E6・テツ。接続継続」

 接続継続にしておけば、この制御室くらいなら動き回ってもどうということもなかろう。

「接続承認。接続継続承認」

 頭の後の方にメッセージが浮かんだ。

 実射テストの予定までにはもうすこし時間がある。

「もう一度装備を」

 右のこめかみの向こうに装備の一覧が現われた。それをスクロールしていって気付いた。

「ドローンか。的にしかならないだろうが……」

 左のこめかみに機体の仕様が現われた。

 群行動させて、一度や二度の効果を期待する程度だろう。三度めがあれば運がいい。

「周辺映像」

 このビルを中心にした、周囲のカメラからの映像が頭の周囲に広がる。

「装備の場所を……」

 頭の周囲に広がる映像のあちこちに赤、青、黄色の点が光った。

「こちらの有線・無線機器、動作相互確認」

 銃が動く様子が複数のカメラで確認され、銃器を対象としたもの以外のカメラの映像も複数のものが確認された。十分ほどの間に、すべての点の一部に緑色が表示された。

 動作や映像に矛盾がないということは、おそらく手を入れられてはいない。すくなくとも、手が入れられていたとしても、その機能はまだ起動していない。

「クリア。こちらの有線・無線機器に対し、周波数、コーディング、テスト。選択はランダム」

 すべての点が赤、青、黄色に戻った。数分の間に、すべての点の一部に緑色が表示された。

「周波数、コーディングの対策はできていると」

 そうなると、次は相手が打っている手を確認しておく必要がある。

「マップ・クリア。未確認電波探査」

 頭の周囲にこのビルを中心とした地図が浮かび、あちこちに濃く、全体としては薄く紫色がそれを覆った。濃い紫色の点が次々に消え、三十個ほどが残った。

「未確認発信源、記録。射線確認。一次、二次、三次」

 赤色の点が現われ、紫色の点の一つ一つに、それらから三本の線が伸びた。

「射線記録」

「記録」

 頭の後にそのメッセージが現われた。

「周波数、コーディング確認」

 しばらく返答はなかった。一分ほど経ってから、紫色の点の一部に緑色が現われた。だが、数個、緑色が現れないままの点があった。

「未確認発信源α、マーク」

「記録」

 また頭の後にそのメッセージが現われた。

 これで一区切りついた。あとは実射のテストを残すのみだ。

 俺はまた冷蔵庫から炭酸飲料を取り出し、ディスプレイを眺め、リクライニング・チェアに背を預けた。

 ディスプレイを眺めながら、しばらく時間を潰した。ディスプレイに次々と映る映像には喧騒が映し出されていた。

「よし、実射テスト。銃器選択はランダムに、一発ずつ、五射。人に当らないように。射撃の様子をディスプレイに」

 五回のテストが映し出された。

「銃器の状態を」

 左のこめかみに、今使った五個の銃器の状態が現われた。状態に異常はない。

「銃器、一射につき二発に設定」

「設定」

 頭の後にメッセージが現われた。

「あとは、どれだけ先手を打たれているかか。そのあたりは実際の状況にならないと確認は難しいか」


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