05 巨大馬車の弊害
街道に引き返してアードに入った馬車の中で、壁越しに聞こえてくる雑踏の様子にレーシアは緊張し切っていた。旅路ののほほんとした様子はどこへやら、今はがちがちである。
一方のアトルは「この目立つ馬車何とかならねえのか」と思っていた。
それなりの規模の町には、町を囲う城壁がある。日の出の少し前に開き、日の入りと共に閉じられる城門前には、門衛たちが陣取り、中に入る者、出て行く者を監視しているが、この無駄に目立つ馬車のせいで足止めを食ったのである。
門衛としても、トニトルスの襲撃の直後で警戒を強めていたのだろう。
「その馬車、止まれ」の声と共にびくっと震えたレーシアを宥めながら――彼女はまたしても本を抱えていた――、アトルの方は「馬車」と言うときの門衛の、微妙に疑問を滲ませた言い方に笑いを堪えていた。
その後、対応したリーゼガルト(御者台にいたからだ)と門衛との、「本当に馬車か」「馬車です」「積荷は」「人と本と食糧とその他細々したものです」――ここで、「武器を細々したものだと言い張るのか……」とアジャットが疑問だという顔をし、ミルティアとアトルが「余計なことを言わないように」と釘を刺した――「この町に来た目的は」「補給です」という延々とした遣り取りが続き、最終的には伝家の宝刀とばかりにリーゼガルトが「あーもう、これでいいだろ!」とミラレークスの身分証を見せ、門衛が「失礼しました」と引き下がる流れとなった。
「ミラレークスの身分証、すげえ」
アトルが言うと、アジャットが胸を張った。
「当然だ。――ところでレーシアさん、呼吸と心臓の方は大丈夫かな?」
レーシアは門衛と直接やり取りした訳でもないというのに、緊張か恐怖か極度の人見知りのせいなのか、呼吸困難になっていたのだった。
「こいついつか人見知りが祟って死ぬぞ」
アトルは真顔で言ったのだった。
アードの町がトニトルスから受けた被害は、倉庫二つの倒壊だった。倉庫の持ち主は不運だったとしか言いようがないが、言い換えればトニトルスたちは「狩り」を始めてすぐにレーシアに気付いてここを離れたということだ。倉庫の倒壊のせいで脇道が一本封鎖され、倉庫内にいた数人が負傷したらしい。
町の空気はまだぴりぴりとしている。鐘塔の鐘は鳴り止んでいるものの、音色の違う鐘が一斉に鳴らされた残響は人々の耳に残っている。そんな中を通る大き過ぎる馬車は、否が応にも注目を集めるのだった。
馬車が大き過ぎるというのは、他にも様々な弊害を招く。
まず、普通に馬車を停めて降り、買い物をする、ということが出来ない。細い脇道には入れないし、大通りに停車させれば渋滞を招く。そこで、ミルティアとグラッドが馬車から降りて買い物をし、馬車はその間進み続ける、という手法を取ってきたという。今回もその手法を取った。
山と積まれる荷物の中の、比較的分かりやすいところに置いてある小箱から、アジャットが耳飾りを二つ取り出す。金色の金具に、親指の先ほどの大きさの赤い滴型の石が下がっているものだ。それをミルティアとグラッドが受け取って片方の耳に着け、二人揃って指で弾いた。チィン、と高くあえかな音がする。
「行ってきまぁす」
「おっ、お供します……」
ミルティアとグラッドが徐行する馬車から飛び降り、ひらひらと、あるいはおずおずと手を振る。
次の弊害だ。馬車を降りた二人を待つために停車しておく場所がない。
「うむ。大抵は広場を使っていたのだが――この町の広場は小さいな」
アジャットが窓から広場を見て批評した。
「どうすんの?」
アトルが訊くと、アジャットは躊躇いなく言った。
「どこかの家の馬車停めを貸してもらう」
「いや、馬車停めがある家ってかなりの金持ちなんじゃ……」
「何のための身分証だ」
アジャットは胸を張った。
「私の身分証は高等指定魔術師のものだからな。他の者より信用は高いぞ」
アトルは眉間に皺を寄せた。
「あのさ、俺、指定魔術師なんて聞いたこともなかったんだけど、それってなんでかな」
控えめに、役職の知名度の低さを指摘してみたのだが、アジャットはまるで怯まなかった。
「確かにミラレークスの階級の知名度は低いとも。だが、それらしい豪華な身分証を見せられれば、誰だって呑まれるものだよ」
「…………」
「…………」
アトルとレーシアは揃って黙り込み、アトルはもう何も言うまいと決め、レーシアはそれでいいのかと真面目に考え込んでいるようだった。
リーゼガルトは実際に、目ぼしい馬車停めのある邸宅を捜して町の中心部へと向かうよう、アルナー水晶の術式に指示している。
「上手くあの二人と合流できるのか?」
アトルが訊くと、アジャットはフードの奥に手を入れた。恐らく耳に触れたのだと思われた。
「耳飾りがあるだろう。あれは通信魔術の補助道具だ。ここにあるのは五十個だが、この五十個が互いに認識し合って通信魔術の精度を飛躍的に高める」
恐らくアジャットがその五十個のうちの一つを着けているのだろう。どこにいようと、あの二人とアジャットが連絡を取れるということだ。
「便利――」
そう呟いたのはレーシアだった。その瞬間、フードに隠れたアジャットの目がきらりと光ったのを、アトルは見た気がした。
「そうだろう、私もそう思う。仕組みを説明しようか?」
レーシアは単純にそれを、親切と受け取ったようだった。
「うん――いいの?」
アジャットは間違いなくにんまりと笑ったに違いない。お近付きになるこれ以上ない好機である。
「まず、魔術師が術式を用いて魔力を結晶に溜めておくことは、きみも知っているかな?」
こくん、とレーシアは頷いた。
「そこでミラレークスは、その魔力に互換性を付けることを考えた。魔力にいわば性格を付け、その性格が同じもの同士が引き合うことを利用して、このような補助具を作ったというわけだ」
「沢山あるの?」
「もちろん。ここにあるのは柘榴石を使ったものだ。見た目にも綺麗だろう」
そんなことを話しているうちに馬車が停止した。窓から外を見てみると、明らかに富裕層の住宅が揃っている一画のうちでも、群を抜いて大きな邸宅の前だった。
「さてと。馬車停めを貸してくれるようお願いしてくる」
アジャットが言い、荷物の山を蛇行して避けながら扉まで行き、がちゃりと開けて外に出た。リーゼガルトの声が「上手くやれよ」と言っているのが聞こえる。
「うう……」
レーシアは膝の上の本の山を恨めし気に睨み付けたが、重さのせいで持ち上げられない。アトルの方も、傷があるのでそうそう手伝ってはやれない。
しばらく経ってから、アジャットが戻って来て意気揚々と言った。
「馬車停めを貸してくれるそうだ」
「重い……」
レーシアが泣き言を言い、それでやっとレーシアの膝の上の本がそのままだということを思い出したのだろう、アジャットが「すまない」と言うと、本をせっせと床に下ろした。レーシアがやっと自由になり、伸びをしたところで、アジャットが言葉を続けた。
「きみたちはこのまま中にいるように」
アトルとレーシアが躊躇いなく頷く。アトルにしてみれば動けば傷が痛むだけだし、レーシアはわざわざ知らない人の所へ行こうなどと思わない。
「それから、追手のことだが――」
アジャットが言ったが、レーシアは聞いているのかいないのか、ぼんやりとそちらを見遣るのみ。
「私たちが上司から聞いていた『エンデリアルザ』の特徴は三つだった。まずは異常な魔力量。それから、休眠状態か仮死状態にあるだろうこと。そして、銀髪あるいは紺色の髪であること」
銀色も紺色も、この近隣諸国ではまず見掛けない髪の色だ。
「追手も同じ情報を持っているかも知れない。だから、レーシアさんは余り外に出ないように。この馬車は特殊な造りをしている、滅多なことでは倒壊もしない」
何だか物騒な単語を告げられた気がするが、気にしないことにする。
レーシアがこくんと頷いた。「渡りに船だ」と顔に書いてある。外に出たいとは全く思わないらしい。
馬車がもう一度動き出し、レーシアが寝台の端で身体を支えた。門扉が開く音がして、直進。それから左折。漏れなくレーシアが右に傾き、アトルはちらりとレーシアが激突するであろう床を見て、レーシアの頭が割れないかと心配したが、杞憂だった。レーシアは大分傾いたものの、堪えた。
今度は右折。アトルは黙って手を伸ばし、殆ど重みを感じないレーシアの左手を取って引っ張り、支えた。
馬車が停まった。知らない人物の話し声と、リーゼガルトの声がする。
「こんなに立派な馬車です、停める場所にもお困りになるでしょう」
「ええ、まあ。しかしいきなりの厚かましいお願いに応じてくださって、感謝しますとオールディ様にお伝えください」
「はい。主も喜ぶことでしょう。――是非中へお通しするようにと言い付かっているのですが……」
「それは光栄な。残りの二人が追い着く間、お邪魔させていただきますね」
「中にいらっしゃる方――」
「あ、俺から言うんで」
リーゼガルトが御者台から飛び降りる音がして、がちゃりと扉が開いた。
「アジャット、来いよ。お呼ばれしたぞ」
言いながらリーゼガルトが大刀を背中から下ろし、馬車の中に置いた。それなりの身分のある人物の自宅に上がるのに、度外れて物々しい獲物を持って行かないという良識が働いたらしい。そうやって大刀を置きながら、中にいるアトルとレーシアに「分かってるよな?」という視線を寄越す。レーシアは感知しなかったが、アトルは頷いた。
非礼を言うならば、いかにも不審者というようなアジャットの外套はどうなのだということになるのだが、室内であろうと食事中であろうとフードすら取らないことから、何か事情があるということは察せられる。
例えば、顔に傷があるとか。
二人が去った後、レーシアは馬車の中を隈なく見て回ろうとするかのように動き回り、これまで見知らぬ人間に囲まれて遠慮していたということがよく分かった。
「うわあ、本だらけ……。なんで持ち運んでるんだろう、本が傷むのに」
言いながら、詰まれた本の山の背表紙をざっと見る。
「ランゲンの本がある……キリシャも……。ねえ、今ってほんとに私がいたときから百年経ってるの?」
アトルは「ランゲン」も「キリシャ」も知らないのでどうとも言えないが、アトルは欠伸交じりに答えた。
「まあなあ。国が動いた最後の戦争が百年戦争だったからな」
「私がいたのは戦争前夜だったから――そっか……」
レーシアは肩を落としたが、すぐにアトルを振り返ってにっこりした。
「でも、百年経ってるなんて信じられない。ランゲンにもキリシャにも会ったことがあるの。ランゲンは念動系魔術の天才なの。怖い人だけど」
「へえ」
アトルは気のない返事を漏らした。仰向けに寝転んだ彼の思考は、傷がいつ塞がるかということに向いていたのだ。レーシアもアトルの生返事に都合のいい解釈を付けたりはせず、その後は黙って本や荷物を見て回っていた。
数回荷物に躓いて転んでから、レーシアはむっとした顔でそれらを見た。
「危ないと思うんだけど……」
「おまえ程のどじがいないんじゃねえの?」
アトルが返すと、レーシアは首を傾げたが、確信を込めて言った。
「ううん、こんなの誰でも転ぶよ」
アトル自身は転ぶ気がしなかったが、反論するのも面倒なので「はいはい」と流しておく。
レーシアが数回転び、アトルがそのうち二回に一回につき「大丈夫か」と声を掛け、一時間ほどが経った。
外ががやがやと騒がしくなり、アトルは寝転んでいたのを頭だけをもたげて首を傾げた。
「……? どうしたのかな?」
レーシアも疑問に思ったのか、とてとてと走って(途中一回転び掛け)アトルが寝ている寝台の上の窓の傍まで来て、外を覗こうとした。
「――っておい! 馬鹿!」
アトルは低く叫び、咄嗟にレーシアを右手で引き戻した。左腕を掴まれたレーシアはあっさりと身体の均衡を崩し、よろめいたものの転びはせずに持ち堪えた。
「ちょっと、なに!」
レーシアは驚いたように抗議の声を上げたが、傷が痛んで悶絶するアトルを見てわたわたと慌て始めた。
「え、ちょっと、なに、大丈夫!?」
アトルは痛みの大波が去ると、はあ、と溜息を吐いてから口を開いた。
「大丈夫だ。――あのな、騒がしくなったってことは近くに人がいるってことだろ? おまえがのこのこ覗きに行ってどうすんだ」
きょとんとするレーシア。アトルは舌打ちしたくなったが、堪えた。
「あのな、聞いたろ? おまえを追っ掛けてる奴らは、おまえの髪の色を目印にしてる可能性があるんだって。ちょっとは警戒しろ」
アトルとて、追手がここまで迫っているとは思わないのだが、万が一ということがある。
レーシアは一瞬呆気に取られた後で、懸命な顔をして頷いた。「けいかい、けいかい」と呟いてる辺りに頭の悪さが透けて見えていると、アトルは思う。
――あるいは今まで、警戒が必要な生活を送ったことがないのかも知れない。
アトルはレーシアのかつての――アトルたちからすれば百年以上前の、レーシアからすれば先日までの――生活を全く知らない。宝国にいたということしか知らない。
アトルは外の様子に耳を澄ませた。開門の音、馬車の車輪の音がする。どうやら客が来たらしい。外にいるのは声からして三名、恐らく屋敷の衛兵二人と侍女が一人だ。恐らく、客をどこに誘導するかの打合せだろう。
この馬車の壁はなかなかに厚く、何を言っているのかまでは聞き取れないが、どうやら揉めているらしい。その語調はレーシアにも分かったのか、彼女は軽く首を傾げながら「喧嘩?」と呟いた。
「さあな」
アトルは呟くように返事をしながら、面倒なことが起こらないようにと祈った。
しばらくして周囲が落ち着きを取り戻し、なんて事はなかったか――とアトルが安堵の息を漏らしたその瞬間、こんこん、と固い音がした。
誰かがこの馬車の扉をノックしている。
「…………」
アトルは息を呑んだ。続いて、レーシアがまかり間違っても返事をしたりしないよう、彼女の手を警告するように握った。レーシアは意味を理解したらしく、潜めた声で文句を付けた。
「――そこまで馬鹿じゃないよ」
アトルは肩を竦め、ごく小さな声で皮肉った。
「どうだかな。自分の行動を顧みてみやがれ」
またしてもノックの音。アトルは表情を険しくした。
これが「馬車を退かせてください」などという、事務的な連絡ならばいい。アトルは怪我人で、レーシアはそもそも役立たずなので、要望には応えられないが、このまま居留守を使っていればいいだけだ。しかしこれが、レーシアに掛かった追手であれば。
やばい――とアトルは静かに息を詰める。これは、痛いだとか言っていられない。まずい。もしも本当に危なくなれば、アジャットたちが戻って来てくれることを期待するか――逃げ出すしかなくなる。
「レーシア」
とにかく可能性は聞いておこうと思い、アトルは小さくレーシアを呼んだ。レーシアは怯えたように扉を見ていたが、声が掛かったことでびくっとし、慌ててアトルに向き直った。
「な、なに?」
「俺の傷って、俺が痛いと認識してるから痛いんだよな?」
レーシアはアワアワという擬態語が似合う顔になった。
「う、うん? あのね、宝具とか封具ってまだよく分かっていないことも多いから、えっと、仮説ではそうなんだけれど、実際はよく分からなくて」
「仮説で十分だ。――俺が痛くないと思っていれば痛くないんだろ」
いざとなったら逃げ出すことも考えなくてはならないのだ。アトルは自分が動けるかどうかを考察する。レーシアを一人で町に放り出した日には、町にいる詐欺師や奴隷商どもに、カモに葱を添えて差し出すことになりかねない。
三度目のノックの音。二人は声を低めて話しているので、声が外に漏れたとは考えにくいが、それでもここまで粘るのだ。
単に職務熱心なだけか、それとも――。
アトルとレーシアが意図せず同じ間合いで固唾を呑んだとき。扉の外で盛大な溜息が発せられた。
「あーもう。なんなのよ。留守番くらい残して行けばいいのに――こんな馬車、邪魔でしょうがないわ」
メイドのようだった。
そうですよね邪魔ですよね、ほんとよく分かります、とアトルが思わずうんうんと頷いていると、頭の上に疑問符を飛ばしそうな様子のレーシアがつんつんと彼の袖を引いた。
「――大丈夫、だったの?」
「ああ」
アトルが答えると、レーシアは安心したように微笑んだ。
憎たらしいほどに可愛い笑顔だった。
一瞬見惚れてしまったアトルは、「なに考えてんだ俺」と呆れて首を振り、天井を見上げることとなったのだった。
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シルヴェスター・アラン・デイザルトは、先に立って案内をするメイドの後について歩きながら、興味深げに周囲を見回した。
彼が今歩いている豪商オールディの邸宅の、玄関広間から応接室へと続く廊下の壁一面には、金の額縁に収められた絵画が均等な間隔を開けながら飾られている。等身大の肖像画から小さな静物画まで大きさは様々。先導しているメイドも、シルヴェスターがそういった絵画を眺めていると思ったのだろう。
しかし実際のところは、シルヴェスターは絵画になど毛筋ほどの興味も持ってはいなかった。
耳を澄ます。音が遠い。
いや待て。この先からも音がする――。鈴の音にも似た、軽やかな音。
「その絵は、ケルザの若かりし頃の作品ですわ」
メイドが唐突に言い、シルヴェスターは自分の視線が一枚の絵画に向いていることに気が付いた。ケルザという名前には聞き覚えがある。抽象画の巨匠だったはずだ。彼は笑みを浮かべる。
「そうか。美しい絵だね」
緑の目を細めて笑う金髪の美男子に、メイドは顔を赤らめる。しかしシルヴェスターの興味は急激に別方向へと引き寄せられつつあった。
音がする。凛とした音。あるいは地鳴りのような音。二種類の音。この邸宅の外からも音がする。まだ遠い。どれが目的のものなのか分からない。しかしどれも強い魔力だ。一つ一つ確認していくのが賢い手だろう。
「あれ」の魔力の音を知っていれば話は早かったのだが、そうもいかないのが現状だ。「もう片方」の魔力の音は鮮明に覚えているが、それは今は役に立たない。
シルヴェスターはメイドに微笑み掛ける。
「きみ」
「は、はいっ!」
メイドはきりりと背筋を正した。よく見ればまだ幼さの残る顔立ち、歳は十六かそこらか。
「ここには他にもお客様がいるのかな? もしそうだとすれば間の悪い時に来てしまったね」
メイドは瞬きした。それからにこりと笑う。
「いいえ、主がお通ししろと言ったのですもの。歓迎しておりますわ」
シルヴェスターは眩しいほどの笑みを浮かべた。
「それは嬉しいな。ではせっかくなのだから、そのお客様にも会っておきたいものだ」
不作法かつ無遠慮な言い分にも、絶対にこのメイドは逆らえない。
シルヴェスターの肩書きにはそれだけの力がある。




