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グレイと  作者: Satch
1/3

第1話:明けてません!

タイトルの最後が平仮名なのは間違いではありません

自室で寝ている時に、何かが爆発したような物凄い音と地響きで飛び起きた。


「じ、地震!?」


既に爆音と地響きは収まっている。


「夢だったのか?」


窓を開けてみても代り映えしない景色が広がっているが、人が集まってきていた。

しかし、誰も何が起きたか分かってはいなかった。



翌朝、執拗な玄関のチャイムの音で起こされる。


「誰だよ、こんな朝っぱらから!」


スマホで時間を確認すると朝の5時過ぎだった。マジか…。


文句の一つも言ってやろうと玄関に行きドアを開けると、笑顔の女の子が立っていた。

高2の俺と同い年くらいかな? 小柄で髪はピンク色、頭頂部辺りにアホ毛のような触覚のようなものが生えていて、

つやつやと銀色に光る全身タイツのようなものを着ていた。


「明けまして、おめでとうございますです!」


変なの来たぁぁ!! しかも夏なのに年始の挨拶って!!


「いや…明けてねーよ!」


すると女の子は、こきゅっと小首を傾げたあと、手首に巻いた腕時計のようなもの(某社のWatchに似てる)を操作して何やら調べている模様。


「…あ、えー、おはよう? ございますです」


「お、おはようございます」


って、なんで疑問形!?


「あの、私、きのう隣に落ちてきた、リサといいますですか?」


「いや聞かれても俺、君の名前知らないし…」


するとリサという女の子は、また手首に巻いた腕時計のようなもの操作して何か調べている。


「リサといいますです」


「はぁ……それで?」


「リサといいますです」


何故2回言う!


「うん…それで?」


「リサといいますです…」


リサの目に涙が溜まってくる。


「あー…そうか、俺の名前ね」


「はいです!」


リサはニコニコと満面の笑みを浮かべる。おい涙どこ行った!?


「俺は佐藤和真(さとうかずま)っていうんだ、よろしくな!」


「はい! よろちゃく……よろちく…???」


「…?」


リサは手首に巻いた腕時計のようなものを操作して、画面を見ながら何やらふむふむと頷いた後、

おもむろに自分の胸の先を摘むような手の形を作り、前に突き出した。


「よろ○くびー!」


「っ!?」


いやそれはもうドン引きだよ、何この娘?


「あれ…?」


リサは手を前に突き出したポーズで固まっていて、その目には涙が溜まってきた。


おそらくこの娘は外人で(その割には日本語しゃべってるけど)、動画とかで挨拶を確認しているのだろう。

しかも参考にしてはいけない動画を見たようだ…。


隣に落ちてきたっていうのも、隣に越してきたの間違いだろう。って隣に家なんかあったか?


リサは耳まで真っ赤にしながら「よ、よろしく…です」と言った。


「あのさ…」


「はい?」


間違いなく美少女に分類されるリサが小首を傾げると、アホ毛(触覚?)も一緒に動く。


「家、見せてもらってもいい?」


「それ知ってるです! 君ん家の朝ゴハンです!」


と嬉しそうにぴょんぴょこ飛び跳ねると、アホ毛(触覚?)も一緒に飛び跳ねる。


「ちげーよ! それは君ん家の晩ゴハンな!」


「えっ!? 地球の文化は難しいです!」



ということで、家を見せてもらうため外に出てみるが、やはり左右に家なんか無くて空き地があるだけだった。


「こっちです!」


俺の手を掴んで引っ張ってくるが、首から下は全身タイツに覆われているため、特に嬉しくもない。


「こっちこっち」


リサは空き地のほうに俺を誘導していく。


やっぱり何も無いと言おうとして、空き地のど真ん中に軽自動車が通りそうな穴が空いていることに気付いた。

その穴の縁まで行くと、リサが下を指差した。


「これです」


「ん?」


こわごわ下を見てみると、曲線の銀色の金属板のようなものが見えたが、薄暗くて何かは分からなかった。

すぐに家から懐中電灯を持って来て、穴の中を照らしてみて驚いた。


「な、なんだこれ…?」


軽自動車くらいの大きさの銀色の球体が見えた、航空力学を無視したような形、これはなんとなくUFOのように見える…。


「お、おまえ…どこから…来た?」


「? はい、宇宙から来やがりましたです」


ふふんと、そこそこある胸を反らせる。


「宇宙から……え?…侵略者!?」


「え!? わたし侵略するように見えるですか!?」


こんな可愛い娘ばかりなら、侵略されてもいいかも! っていやいや!


「見える見えないで言ったら見えないけど」


「ですよね!」


嬉しそうにぴょんぴょこ飛び跳ねるながら「わたしこの星に来る予定無かったですから」と言った。


「え? そうなの? じゃあなんで?」


「そ、それには聞くも涙のものすごーく深い訳があるです」


リサは飛び跳ねるのをやめて深刻な顔をすると、アホ毛もへんにゃりと元気がなくなる。


「ただ操縦ミスっただけだったりして(笑)」


俺はその重い空気を和ませるためのベタなボケを展開する。


「…なんで…分かったです……?」


「当たりかい!」


リサは両手両膝をついてorzこんな感じで項垂れる。

え!? 冗談だったのに!


「それで、すぐ発進しようとしたですが、ムリでした…」


詳しく聞くと、地球で言うところの"エンジン"がかからなかったようだ。


「この星に住む我が同胞が信号をキャッチしてくれてるといいですが…」


「えっ!? いるの? 地球に?」


「はい、特派員が1人いるはずです」


「マジか……女の子?」


「?」


「あーいや、君みたいな感じの娘かなって思って…」


「わたしみたい???」


「いや、なんていうか…」


「ちょっと待つです」


リサは手首に巻いた腕時計のようなもので調べているようだ。


「あー、そうですね、この星でいうところの女の子ですね」


「なるほど!」


「なんで嬉しそうです?」


リサが何故かジト目で俺を見ている気がする。


「いやいや、別に嬉しくないよ? そ、それよりその格好は?」


俺は疑惑を反らすように、リサの銀色に輝く全身タイツを指差す。


「え? あーこれは時空船…この星でいう宇宙船に乗る時の格好です」


宇宙服というより、ガ○ダムのノーマ○スーツのようなイメージかな。


「操縦する時は顔全体を覆うヘルメットをかぶるですが、見るですか?」


「あーうん…頼む」


リサは何故か後ろを向いて、どこからともなくヘルメットを取り出し、おもむろにそれをかぶって振り向いた。


「っ!? う、う、ううう宇宙人だぁぁ!!? 逃げろ!?」


「今頃っ!?」


俺はダッシュで逃げようとするが、リサに思いっきり襟首を掴まれた。


「…待つです!」


「ひぃ!?」


それでもなお逃げようとするけど、まったく体が前に進まない! 何この力は!? 



やっと少し落ち着いた俺は、改めてリサを観察する。

目の前にいるのは、宇宙人と聞いてほとんどの人が思い浮かべるであろう銀色のあの、グレイタイプと言われる宇宙人だ!


ヘルメットは全体的に銀色に塗られ、バイザーのようなものはなく、目の部分はウルト○マンのような感じの黒い卵型になっていて、そこから視界を確保しているみたいだ。


リサはネットとかで見る宇宙人と比べると、スタイルも良いし女性らしい丸みもあった。


「褒めてあげるです」


と俺の頭を突然撫でてくる、って心を読まれた!?


「この星の宇宙人像のモデルはわたしたちだと聞いてるです」


と言ってヘルメットを取った。できればもうかぶらないで欲しい、こわい。


「マジか…」


ここまで素直に反応している俺だけど、本当はまだ宇宙人と信じた訳じゃない。

今のところツッコミどころは日本語が流暢なことと、銀色の全身タイツが妙にエロいことくらいかな。


「そうだ! どこの星から来たの?」


「それは、この星の技術では観測不可能な惑星から来たですから、説明して分かるかどうか…」


「なるほど、そういう設定か…」


「せってい?」


リサはこきゅっと小首を傾げる。くそう、その可愛さに全部信じそうになる。


「なぜ俺たちの言葉を話せるんだ?」


「それは睡眠学習です、昨日の夜慌ててやったです」


えっへん、とそこそこある胸を反らせる。って一晩で!?


「じゃあさ、地球人とリサたちの違いは?」


進化の過程が違うから、まったく同じということもないだろう。


「あ、わたしのことは、リサちゃんって呼んでくださいです!」


「…それで、リサたちと地球人の違いは?」


「リサちゃんです!」


「…」


「…」


リサは頬を膨らましてそっぽ向いたので、その隙に全身を眺めてみる。

体のラインが全部出ちゃってるし、全身タイツのつやつや感が相まってエロさを演出している。

それと特筆すべきは、下着のラインが全く見えないことだ。 やべぇ、ドキドキしてきた!


「んで、リサちゃんたちと地球人の違いは?」


仕方ないので呼んでやったぜ。


「そ、それはですねー、な、無いです…」


リサちゃんと呼ばれたことも気付かないくらい目が泳ぎまくってて明らかに嘘だと分かる。


「そんな訳ねーだろー?」


俺は少し近寄って疑いのまなざしを向ける。


「な、無いったら無いです!」


リサは少し顔を赤くしながら、両手の平をこっちに向けてわちゃわちゃと動かしている。


「またまたー? ほんとはあるんでしょ? 言ってごらんよ!」


鼻先がリサの頬に触れそうなほど近づき、至近距離で疑いのまなざしを向ける。 何かすごく良い匂いがする。


「へ…」


「へ?」


「変態!」


「いだぁ!」


女子というか人間とは思えないくらい重いビンタだったので、宇宙人と認めました、まる。


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