5−2: 大探査1−2
3つの降下船は、グラビトン、グラビティーノ、ループ量子重力に干渉し、徐々に高度を下げて行った。スクリーンにはモニュメントが現われていた。
「ここのも大きいか?」
私はスクリーンの映像と降下船の目が見た映像を共有感覚空間で重ねて見ていた。
「大きいことは大きいだろうが。ナブロスほどじゃなさそうだ」
「地上を見えるか?」
テランのサラーがあちらの船から言った。
「いや、まだよく見えないな」
「こちらの映像を繋ぐぞ」
サラーがそう言うと、共有感覚空間にテランの船からの映像が割り込んできた。
「彼らは何をやっているんだ?」
その映像には、爬虫類とも猿ともつかない動物たちが、こちらに向けて石やら何やら、ともかく手当たり次第に投げているように見えた。何やら叫んでいるようでもある。
「降下を一旦止めよう」
ヴェールコール人のネセムがそちらの船から言った。
地上の連中は石を投げるのを止める様子はない。
「モニュメントはある。そして凖知性体と思える者がいる」
ネセムが言った。
「教えをもたらした者が連中を知性化したのだろうか?」
私の疑問が降下隊の全員に伝わる。
「それなら、この歓迎は何なんだ?」
サラーが当然の疑問を口にした。
「あまり歓迎されているとも思えないが」
ネセムが答えた。いや、それはわかっている。テランとエランにはその言い回しが通じるのだが、ヴェールコール人には伝わらないのかもしれない。
「ネセム、結晶がどの段階まで消去されているかわかるか?」
私はそう頼んだ。テランもエランもヴェールコール人から結晶のレプリカを受け取り、さらにその複製を使ってはいるが、彼らほど扱いに長けているわけではない。
「やってみよう」
しばらく沈黙が続く。地上では飽きることなく石を投げ付けてきている。これはどういうことなのだろう。もちろん、これが彼らなりの歓迎であるという可能性はある。他種族の記録を見る限り、一般的な歓迎ではないが。
「すべて読み出されているな」
ネセムからの答えがあった。
「技術面では鉄器のあたりか?」
「文化面では文字のあたりか?」
サラーと私が続けて訊ねた。
「おそらくそのあたりだろうと推測されているが」
現世代の銀河文明を構成する種族は、そのあたりまでが先史となっている。テランとエランでは、つまり地球では鉄器に入った頃には既に文字があり、有史なのだが。この違いは何なのだろう。教えをもたらしたものの計画にすぎないのかもしれない。だが、どういう意図で? それに有史に入ってから宇宙に乗り出すまでに地球に2倍から3倍の時間がかかっている。
あるいは種の発生から青銅器ないし鉄器に至るまではテランとエランは他の種族の数倍の時間がかかっている。
どちらがよりありえる変化なのだろうか。他の種では、教えをもたらした者による干渉により生物学的進化が地球よりも早く進んだのだろうか。もしそうだとして、そしてテランとエランには干渉がなかったのだとしたら、テランとエランがそもそも宇宙に乗り出すなどということが可能だったのだろうか? 独自にそこまで知性化することなどあり得ない。それともやはり私たちは鬼子なのだろうか。あるいは捨て子なのだろうか。
私はまた地上の映像に意識を移した。
「いや、どう見てもその段階を維持しているようには見えないが。読み出されたのはいつ頃だ?」
「推測が入るが、かなり前だ。君たちの時間で言えば数万年前というところだろう」
ネセムの声にも疑念が現われている。
「だとすれば、初期の知性化対象だったはずだ。昔の方がモニュメントは大きかったのか?」
コラスが指摘した。
「そうかもしれないが。ともかくこの地上の状態をどうにかしないと」
サラーが答えた。
「あまりやりたくはない方法だが、サンプルを取るか」
ネセムが提案した。
3つの降下隊の班員は沈黙していた。アブダクションはあまり薦められる方法ではない。おかしな伝説を作ることになるかもしれない。いや、私たちが来ていること自体が、既におかしな伝説を作っているのかもしれない。なら、ちょっとアブダクションをすることに何の問題があるだろう。いや、地上の今の状態だ。状況を悪くするかもしれない。
「ネセム、少しだけのサンプルでかまわないだろう。何が起きたかを知るにはともかくサンプルが必要だ」
サラーが提案した。
その少し後、地上で数人が輪になり何かを叫んでいた。
「ネセム、一人取ったのか?」
その様子を見て、私はつぶやいた。
「遺伝情報だけではわからないことが多そうだ。話を聞きたい」
あまり気にする様子もない答えが返ってきた。
「ともかくサンプルの解析と調査が必要だ」
サラーが割り込んできた。
私たちは一旦高度をとることにした。




