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ForeRunner  作者: 宮沢弘
出会い
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1−2: 出会い2

 船はテランに伝えると同時に、三発のルシフェリン発振レーザーの準備を始めた。船が求めている許可を私は承認した。先程射出しておいた反射鏡が耐えられるのはそのくらいだろう。テランも同じ方法を取るだろうから、実際に何回撃てるかはわからない。その後は無様な船対船の殴り合いになる。

 船が二発の発射許可を求めた。私は承認した。船の目の一つを通して、反射鏡がかすかに光るのが三回見えた。と同時に、船が震えた。左舷に一発直撃を食った。

 船は寄生させている保護虫を放出し、傷を覆う。あとは外科治療用の寄生生物の働きと、船自身の回復を期待するしかない。下の惑星に降りられれば、船に何かを食わせてやることもできるだろうが、今は船の備蓄でやりくりしてもらうしかない。

 反射鏡はもう失なわれているだろうが、通信用のレーザーで存在を確認する。やはり三発のレーザーで消失していた。さて、これで殴り合いだと覚悟し、反射鏡があった場所へと推進剤と微距離転移で移動を始めた。

 グリンと船の三半規管に反応があった。反射鏡があった近くに、質量が現われている。また大質量が現われ、その質量が見るまに減少していく。余剰次元窓による転移と、FTLからの減速に見られる反応だ。この両方を使う種族は少ない。これが単一の種族によるものだとしたら、現われたのはヴェールコール人だろう。


 先史文明の主は、現在「教えをもたらした者」と呼ばれている。彼らは他種族の知性化を始めたと考えられている。彼らは知性化処理を行なった惑星にモニュメントを残している。いや、現在の知性化体の母星にはモニュメントがある。そこから逆に、彼らは処理を行なった惑星にモニュメントを残したのだろうと考えられている。だが、彼らと直接繋がる証拠は何もない。だが、現在の知性化体たちも、それぞれが知性化処理を行なっている惑星にはモニュメントを残している。


 ヴェールコール人から通信が入った。

「君たちの両方がここに来るという報告があったのでね」

 ヴェールコール人の船を中継し、テランの抗議が聞こえる。私たちも同じく抗議した。

「双方の言い分はわかる。だが君たちは戦ってはいけない」

 やはりテランは抗議を続けている。こちらも同様だ。

「エランの諸君。君たちの記録にあると思うが、君たちの祖先が私たちと接触した時のことを思い出して欲しい」

 船からその記録が送られ、私たちはそれを思い出した。

「テランの諸君。君たちも祖先の記録を参照して欲しい」

 互いの記録・記憶がヴェールコール人の船を中継して行き交う。


 ヴェールコール人の母星にもモニュメントはある。その古さから、初期の知性化の対象だったのだろうと考えられている。だが、そのヴェールコール人にしても教えをもたらした者についての記録はない。そこから考えられるのは、教えをもたらした者は、常に知性化を完了させなかったということだ。知性化の方向を与え、ある段階にまで到達すると、別の種族へと目を向けていたのだろう。そこが現在、他の種族が行なっている知性化とは異なっている。


「そう、私たちは現在テランと言っている君たちに会い、その後に現在エランと言っている君たちに会った」

 それがどうした、とテランは言った。

「こちらの記録も公開する」

 ヴェールコール人のテランの祖先との出会い、そして言語の翻訳。それが私たちエランの祖先との出会いをどれほど容易なものにしたか。

「そう、君たちのオリジンは不明なままではあるものの、君たちは同じ種族なんだ。君たちの母星のおおよその位置も分かってはいる。だが星は動いているため、君たちと接触した時点での情報では3つほどの星系にしか絞り込めない。そして、その星系のどこにもモニュメントはない」

 古い種族であるヴェールコール人は、とっくにエランの実際の母星を探査したのだろう。古い種族であるヴェールコール人にとっては、それ自体はさして困難なことではないだろう。


 ヴェールコール人が古い種族だと考えられている理由はもう一つある。彼らだけが、鉄とケイ素の文明と、生体による文明の両方を持っている。銀河内のほとんどの種族は鉄とケイ素の文明を持ち、残りのわずかな文明が生体による文明を持っている。どちらかだけでも成熟するには時間がかかる。その両方を持っているということは、それなりに歴史を持っているためだと考えられている。


 だが、どこにもモニュメントがないのだとしたら、結局状況に変わりはない。

「いや、状況は多少なりとも変わる。君たち若い種族が、もう一つの両方の文明を持つ種族になるのだから」

 だとしてもオリジン不明であることに変わりはない。

「だとしても、私たちを見て欲しい。両方の文明を持っていることは、ある種の特異な地位を持つ」

 それはヴェールコール人の長い歴史に支えられたものだ。若い種族であるエランにもその地位が得られるとは限らない。

「いや、そうじゃない。私たちは遺物の研究に、ほんの少し先じている。それは、それこそが理由だ」


 では教えをもたらした者はどのような文明を持っていたのだろう。

 そしてもう一つ、教えをもたらした者を知性化した存在は何者だったのか。


「教えをもたらした者は、両方の文明に通じていたと私たちは考えている」

 だが、所詮私たちはオリジン不明の鬼子だ。

「その立場が変わる。先史文明に近づいた二番目の種族だ」

 エランに接触した時からの計画だったのだろうか。

「計画というわけではない。君たちの祖先に接触した際、それぞれの嗜好に合う文明の種を渡しただけだ。だが、そうなってくれればと考えてもいた」

 鬼子で二番目…… それは立場をややこしくするだけではないだろうか。

「そこで提案だ。私たちは君たちとの最初の接触の情報を公開する。そして私たちが君たちの後見種族となろう」

 テランの声が聞こえた。

「その提案を受け入れるにしても、時間が必要だ」

 その点については同感だ。テランとエランの交流から始めなければならない。

「大丈夫。私たちにはまだ時間がある」

 まだ?

「そう、まだ。私たちは種族の終りに近づきつつある。だが、君たちを援助するには充分な時間があるだろう」


 テランとエランは一先ず合意し、ヴェールコール人とともにナブロス星系の探査を始めた。


化学レーザーは実在しますが、実際のルシフェリン-ルシフェラーゼによる反応ではレーザーにできるほどの出力も、レーザーとしての特性も持たないと思います。ここではそれが可能なように改良されたルシフェリンとルシフェラーザを使っていると思ってください。


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