夢の一端③はちみつ時間
夢で見たシリーズその3。
自分が、実生活において生み育てた覚えのない、男児(小学校中学年程度)の母であるという夢を見た。
夜半、就寝しようと寝室に向かうタイミングで、子ども部屋からいそいそと男児が出てきた。枕と、上掛けを手にして。
「どうしたの?」とこちらが問うと、その子は眠気のせいなのかとろりと半分溶けたような眼をして「ここで寝るの」と、寝室と子ども部屋との間にささやかに横たわっている廊下――今まさに私と子が立っている――で寝るという宣言をした。
「??? なんで?」
意図が分からず、『バカ言ってないでちゃんとベッドで寝なさい!』と叱る前にぽろっと問うてしまう。すると。
「おかあさんのそばにいたいから」
先ほどはひたすら眠たげだった目を、こんどはこちらへの愛情ではちみつのようにとろけさせにっこりと笑う、坊主頭の男の子。
愛嬌たっぷりのその笑顔に、怒る気は完全に失せた。それだけではない。
「じゃあ、私もここで寝ようっと」
男の子から注がれたまっすぐな気持ちにそそのかされて思わずそう言うと、「やったぁ」とその子も夜にふさわしい音量で控えめに喜んだ。
二人して、身体の右側を下にして眠る。背中にぴったりとくっつかれ、おまけに腕を腹に巻き付けられて暑いしやや苦しい。それでも、『離れて』とは言う気になれず、まあいいかと目をつむる。
はちみつに包まれたようにしあわせで、夢が終われば溶けて消えてしまう、はかない夜。