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ツイノベ 春の呟き

ツイッターにあげていたものです。

 今年の春は早熟で、浮気な桜と白木蓮は陽気につられて咲き急いだ。一方、菜の花やハナミズキはいつもの時季に。その律儀さは約束を守る人のようでいじらしい。

 桜が元の咲き時を思い出せば、菜の花と共に織りなす「この世の春」としか言いようのない景色を、来年もまた見られるのだけれど。



 桜が花を脱ぎ葉を大いに茂らせると、新しい季節が来たように思う。緑は浅く、目に眩しい。まだ幼子の若葉を『葉裏が銀に輝く季節』と聞いたのは、ずいぶん前の事だ。宝物は他にもたくさんあった筈なのに、ゆるいゼラチンのようだった青い心にそれだけが残って、今も季節がくる度見上げる葉裏。



 音も聞こえぬ程の遙か高みをゆく飛行機が、雲の尾を細く長く引いている。生まれると同時に、じわりと空に滲みだす白。掠れながらなおインクの切れないペンのように、柔くどこまでもまっすぐ続いていく誰のものでもないその落書きは、書くだけ書いて諦めが付いたのか、やがてゆっくりと溶けた。



 社会的距離のお手本のつもりなのか、ぽつりぽつりと控えめに小さく開いたツツジを見た。そんなにこわごわと咲くもんじゃない、と叱りたくなる頼りなさだ。開くと言うよりは凝るが似つかわしい、そんな硬さを思わせるものだから、へんに悲しくなるじゃないか。



 散らばる雲を端へ端へと掃きやる強い風の中、鳥の群れがくるりくるりと幾度も旋回を繰り返して遊び飛ぶ。奔放な動きはセッションでありながらも、どこか統制がとれていた。マスゲームのように整った流れを大きく逸脱するもののないまま、鳥たちは飽きることなくいつまでも北へ南へ、東へ西へ。



 これは内緒なのだけど、春の空気には「長閑(のどか)」がこっそり大量に紛れ込んでいるので摂取するともれなくうたた寝をしてしまうのです。世界中の研究者が「長閑」を除外できないものかと頑張っているのですが、今のところ特効薬はないので、今年の春もほら、またあっちこっちで大あくびが。ふわあ。

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