手紙
愛知医科大学で、2014年度の受験時に小論文の課題として出された問題の答えを考えて、ツイッターにあげていたものです。設問は「あなたにはこれまで3年間真剣なお付き合いをしてきて、来年くらいに結婚の約束をしている彼ないしは彼女がいるとします。ところが2カ月前にふとしたことで知り合った別の人が好きになってしまい、今付き合っている人と別れる決心をしました。600字以内でお別れの手紙を書いてください」というものです。文字数は596文字になりました(空白・改行を除く)。
あなたへ
突然手紙なんて出したから、さぞ驚かれたでしょう。
メールで済ますべき事ではなく、またきちんとお話しできる自信もなく(私はおしゃべりが下手ですから)、こうしてお手紙というかたちを取りました。もちろん、それだけで済まそうなんて思ってはいません。
勝手な事を云います。結婚を、取りやめにしてください。
あなたには何一つ落ち度なんてありません。また、あなたの事をきらいになったわけでもありません。
私はあなたを好きなまま、他の人の事も好きになってしまいました。
こんなのは一時の気の迷いだと、何度も自分を諭し、忘れようとしました。三年もお付き合いしているあなたとの未来だけを考えようと。でも、『いつか』『そのうちに』だった結婚話がいよいよ現実味を帯び、あなたが集めてくれた式場のパンフレットを手渡された瞬間、まず浮かんだのは「無理だ」という言葉でした。
無理だ。
あの人が好きだ。あなたが好きだ。無理だ。
めちゃくちゃでしょう。私もそう思います。でもこれが、嘘偽りない今の気持ちです。
どうか、私を待たないでください。あなたの時間を無駄にしてしまいますから。
慰謝料の用意をします。私と直接やりとりしたくないという事でしたら、お手数ですが弁護士さんを間に立てていただけますか。
はじめてで最後の手紙が、あなたを傷つけるだけのものでごめんなさい。
信じてはもらえないかも知れないけれど、あなたの事が本当に大好きでした。