ツイノベ体育祭
ツイッターで体育の日にあげていたものです。
やば、靴脱げた。でもリレーの途中だし、このまま走り切る!
結果は堂々の一位。埃まみれのスニーカーは実行委員の男子が届けてくれた。……ガラスの靴みたく大事そうに、掌に乗せて。
「汚いよ!」
「なんで?頑張った証じゃん」
その言葉で、胸の中のスターターピストルが高らかに鳴る。
やべ、靴脱げた!一〇〇M走の最中じゃ拾って履く余裕もないからそのままゴールした、けど。
クラスの奴らは「シンデレラか!」ってゲラゲラ笑うし、右足の靴下は汚れたし、誰得だよ体育祭。内心毒づいてたら「かっこよかったです」って声をかけてくれた、後輩の女の子。……俺得です。
三年男子のリレー、知ってる顔なんてないのに熱心に見てたら「部活の先輩でも出てるの?」ってクラスの子に聞かれた。
「ううん」
あたしが見てるのは、
「On your mark, Get set」
そう口にしてスターターピストルを鳴らす、あの人。
四〇〇M走の選手紹介。放送係に名前を呼ばれると男子はみんな「ッシャアッ!」って叫んだりスター気取りで手を振ったり投げキッスしたりするのに、君ときたら恥ずかしそうに
「ハイ」
って超小声。なのに走るとぶっちぎりで一位だなんて、ギャップあり過ぎでしょ。ほれるでしょ。
彼氏に応援席から連れ出された先は、体育館倉庫の裏。
「チャージさせて」
言うが早くぎゅうううううっと抱き締められた。
「ありがと、元気出た」
にこやかにお礼を云うと、奴は青組の席に小走り。――って、赤組の皆さんスイマセン!敵のホープを回復させちゃったのは私です!
大きめの学ランに、白のハチマキと手袋で応援する姿は、どの組の誰よりもかっこよかった。そう告げると「あなたのチアリーダー姿もかわいかったよ」と、君が笑う。卒業アルバムを開けば、凛々しい男装の君と罰ゲーム並みに女装の似合わない俺。恋になる前の、初めてのツーショット。
校舎のベランダで、得点板を渡す係が私、掲示するのが彼。初コンビだけど息が合った。
撤収作業中、奴はまだ渡す得点板があるみたいに手を出す。
「頑張ったから褒美くれ」
「……飴しかないけど」
デートして、と囁かれた。それはむしろ、密かに片思いしてた私への特大のご褒美。