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Campsite -キャンプ場-【後編】

      警告

この作品には一部残酷描写が含まれています。

苦手な方はご注意ください。

今話では《ふれいあの森キャンプ場》の様子と主人公ー鳳とは一味違う登場人物が登場いたします。

2013-1-21大幅に加筆と訂正いたしました。

《ふれあいの森キャンプ場》はフリーサイトのキャンプ場で、フリーサイトとは区画サイトキャンプ場が決められた区画内にテントを張るのに対し、決まったエリア内ならばどこでも自由にテントを設営し運用していいのがフリーサイトの魅力である。

思い思いの景色にこだわったり、キャンプ場の設備利用の利便性を重視したり、ひっそりと静かに自然を満喫したりと設営場所の自由度は高いが、設営場所は基本早い者勝ちなので気に入った場所に設営できないといった落とし穴もある。

場所は道の駅-日向の里から4キロほど南下し、ふれあいの森方面に右折し500メートルほど進むと看板入り口が見え、キャンプサイトはキャンプエリア内を囲むように日向川の支流の小川が東西に流れ、その小川沿いに約1キロメートルに渡って広がり、川沿い・林の中・平坦な砂地・見晴らしの良い小高い丘で好みが合う様々な場所でキャンプ生活を楽しむことが出来る。

キャンプ場内の施設建物は、キャンプ場のほぼ中央に管理事務所があり管理事務所の東側、川沿いにコインシャワーがあり、管理事務所から林道を北側に進んだ向かいに男女別のトイレが設置されている。

食堂兼集会所は中に炊事場もあり、管理事務所の東側に隣接している。

約20名ほどが座れるベンチとテーブルが備え付けられており。水道は山の湧き水を利用し食堂の横に併設された貯蔵タンクから供給されていた。

また管理事務所近くでは無線LANが使用できインターネットを利用することも出来る。

管理事務所から西側の小川沿いのエリアには、コスモス・れんげ・すみれ・すいせん等が植えられておりキャンプの宿泊客の癒しの空間になっている。

キャンプ場入り口の駐車場は管理事務所から小川を隔てた南側にあり、二箇所の木の吊り橋が架けられている。

北側山頂は断崖絶壁になっており、北側からの侵入は不可能で数年に一度、不幸な転落事故が起きているため危険を知らせる看板と柵が設けられていた。

そう《ふれあいの森キャンプ場》は周辺探索を行い・地理に明るい者が見れば、サバイバルのための要害として立て籠もるには非常に優れた場所である事が分る、ロケーションに作られたキャンプ場になっていたのだ。


もうすぐ夜が来ようとしていた。

4月の日の入りは18時前後で気温差も昼と夜とでは18℃位から11℃位に下がり肌寒くなる。



橋の上で、男が両手をジーンズの前ポケットに手を入れ、口笛を吹いて立っていた。

男の名前は新見悠にいみゆう

新見はやや長めの黒い前髪を耳にかけ、長身で甘い顔だちの爽やかな容姿の青年だったが、どこか危険な香りを、その内に潜めている雰囲気を持った稀有な存在感があった。



新見と典子は管理事務所近くのキャンプエリア側の橋の中ほどで、立花と松永の二人が帰って来るのを待っていた。


「新見くん、二人とも大丈夫かしら?」

心配そうに典子が話しかけて来た。

江川典子えがわのりこは同じ大学のサークル仲間で同学年の4年生。

やや長身で華奢な体が不安そうにしているのでさらに細く見える。

大きめの瞳は小作りな鼻と口とのバランスが整い。

3年生の時にはキャンパスクイーンコンテストで準グランプリに選ばれた美人だ。


「そうだな、やはり行かせたのが間違いだったかもな」

俺は軽く唇をかみ締めた。


今から10分程前。

時計は18時を回ろうとしていた。


世界中で死者が蘇り、生者を喰らう。

この世の地獄のような事態を、たまたま同じキャンプ場で一緒に遭遇した。

田中夫妻の妻、田中光江たなかみつえと江川典子が、炊事場で一緒に夕食の準備をしていた。


「まだ二人は帰らないの?」

ニンジンの皮むきをしながら光江が話しかけてきた。


「はい、まだみたいです」

典子は帰りの遅い二人の後輩。

眼鏡をかけた美少女の立花早智たちばなさち、お調子者で愛嬌のある松永淳也まつながじゅんやの顔が浮かび不安が増していく。


「無事に帰って来るといいわね

私達のために行ってくれたんだから」

呟くように光江が話す。


「すいません、夕食の準備途中ですが

私、新見くんに相談してきます」

不安に耐えれなくなり、光江に夕食の準備途中

炊事場を離れる事に謝罪し新見の元に向かう。

新見とは1年生のとき半年と短い期間だが付き合っていた。

別れた後も、不安や淋しい時は新見の優しい顔が浮かび。

新見に会いたくなってしまう。

他の男とも何人か付き合ったが胸の中にはいつも新見がいたような気がする。

あの日以来、自分の日常が変わってしまってから。

さらにその想いは強くなった。


-


俺は管理事務所から西側の橋を封鎖するバリケード作りをしていた。

ここの橋を封鎖してしまえば、キャンプ場に入るには東側の橋しか道はなく。

後は小川を渡って来るしかないので、キャンプ場を守るには都合が良くなる。


「新見くん」

走って来たのだろうか、息を切らせて典子が俺に呼びかける。


「お願い、一緒に二人を探しに行って」

典子は付き合っていた時。

別れた後も俺の前に急に現れては、無茶なお願いをしてくる。

辺りは陽も落ち暗くなっていた。

夜は危険だった<奴ら>は夜の方が活動が活発になるし。

人間は知覚情報の83%の情報を視覚で得ているのだ。

視野が狭まる夜間に街をウロウロするの自殺行為だった。

とりあえず俺は典子に同意を示しつつ、管理事務所の東側の橋まで歩いて来たところだった。

まあ典子も、もうすぐ夜が来るというのに<奴ら>がいる。

危険な街まで二人を探しに行こうと本気で思っていないだろう。

典子とはもう出会ってから4年目になる長い付き合いだ。

1年の一時期、短い期間だったが典子とは男女の関係もあったが今では遠い過去のように思える。


「お前の気持ちは分かるよ二人を心配してるのも、けど難しいんだよ」

諭す様に話す。


「志願して行ったのよ。

あの二人はみんなの物資を補給するために、助けなきゃ」

瞳を潤ませながら典子は、俺の手を握り詰め寄る


「二人は危険を承知で行ったんだ、お前まで危険に合わせられない」

典子の細い肩を抱き寄せながら耳元でささやく。


「もし何かあったら二人は助からない、その時は現実を受け入れるんだ」

先ほどよりも強く彼女を抱きしめながら言うと。

典子の体から力が抜けるのを感じた。

彼女も納得してくれた様だった。

要は本当に助けて欲しいのは典子自身だ。

二人の帰りが遅いのは、なにか残酷な運命に巻き込まれたのか。

典子は自身にもいつかその運命が降りかかる様に感じ、不安な気持ちを振り払いたかったのである。


「あ、車のライト!!」

二人が戻って来たと思い、声を弾ませながら典子は言う

キャンプ場の入り口側を、振り返り見ると

こちらに山道を上がってくる一台の車のライトが見えた。

その車は俺が松永に貸した車ではなく、別の車だとすぐに分かったので典子に強い口調で命令した。


「急いで、みんなに知らせるんだ。知らない車が来たことを!」

俺は4月1日の、あの日から《ふれあいの森キャンプ場》の生存者以外で、初めて会う知らない生存者に、どう対応し向き合うかを考えた。

これ以上無い警戒心を抱きながら車が上がってくるのを静かに口笛を吹きながら待った…


《三文オペラ》の序幕の調べが山の中で小川の音と混ざり合っていた。


お読みいただきありがとうございます。

今話は主人公の鳳くんが登場しない話になり申し訳ございません。

新見の今後の動向・活躍にもご期待いただけると幸いでございます。

(新見の口笛で( ̄ー ̄)ニヤリとしていただける方がいれば嬉しいです。)

ではまた次話で!


2013-1-21大幅に加筆と訂正いたしました。

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