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Campsite -キャンプ場-【前編】

        警告

この作品には一部残酷描写が含まれています。

苦手な方はご注意ください。

街には蠢く死者で溢れていた。

死者はただ蠢くだけでなく生者を喰らうために周囲を探し歩き回る者。

生者が発する音や匂いを感知するまで一箇所に座りこんだ者。

寝ているかのように倒れている者もいた。

それは生者にとって死の罠と呼べる。

世界は死者による人類滅亡へと主役交代をしようとしていた。


〔ふれあいの森キャンプ場〕←右折500mの看板が見える。


「あ、見えました。あそこを右折してください。」

少し安心したのか、先ほどよりも声を弾ませて立花が話しかけてくる。


きっと先ほどから話していた大学の仲間達がいるからだろう。


「了解」

軽く僕は頷く


「で、まだそちらの男性は目を覚ましそうもありませんか?」

男性というのは、先ほど<死人>に追いかけられた時のアクシデントで脳震盪を起こし車内でそのまま失神している男性のことだ。


「うん、松永君ていうんですけど彼。まだ目を覚ましてないです」

心配そうに立花は助手席から後部座席で横になっている松永を見ている。


「そうか心配ですね、頭を強く打っていた様なので」

僕も相槌をうつ。


松永と立花は、都内の同じ大学のサークルの2年生で<終末の始まり>。

あの日は大学のサークルのメンバーと〔ふれあいの森キャンプ場〕に4人で遊びに来ていて、この事態に遭遇したらしい。


「あの、鳳さんはどこから来たんですか?」

立花は少し躊躇しつつ質問してきた。


「東京から逃げて来たんです。

むこうは本当にひどい状態で地獄でした」

僕はあの日のことを思い出す。


いたるところで鳴り止まないサイレン

助けを求め逃げ惑う人々の悲鳴 

喰われ死んでいく断末魔の叫び声

散発的に聞こえる銃声

建物や車の破壊音

獣のような唸り声を上げ人々に襲い掛かる<死人>の姿と声

いたるところに血や肉が散乱していた


そして、そんな思い出とは正反対に神々しい朝日の姿が目に焼きついていた


「すいません、私聞いちゃいけないのに」

立花は申し訳ないように俯く


僕は自分自身も知らず涙を流していた。

それを見た立花が慌てて謝ってきたのが申し訳なかった。


「そんな、こちらこそごめん。なんか涙だけが流れちゃったみたいで」

僕は女の子の前で泣いたことを言い訳がましく照れながら言う。


「いえ、そんな、みんなこの一週間でつらい目にあったのに

初対面の人に無神経でした。すいません」


僕は話を切り替えるように唐突に切り出した。


「ふれあいの森って、良い名前だよね」

出来るだけ明るく話す。


「はい私もそう思います!」

立花は笑いながら答え


「島津さんと同じこと言うんですね!!」

さらに笑顔で話す。


「そうなんだ、島津さんっていうのは大学の友達?」

僕が聞くと

「ううん」立花は頭を振りながら


「一人でキャンプ場に遊びに来た人で

バイクに乗って一人旅をしているおじ様ですよ!おじ様!!」

僕の勘違いじゃなければ立花のテンションがやや高めに見えた。

その理由は後になって判明するのだが……


「そか、じゃあもうすぐ僕もその島津さんにも会えるね」

立花は僕のこの一言に反応しさらにニヤニヤしていたのが不思議だった。

島津を想像してみたがバイクに乗った一人旅をしているおじ様と聞いてしまうと、もう身長180以上のワイルドな容姿しか想像出来ず思わず笑ってしまう。


すると立花もつられて、はにかむ様に笑い、頬がやや桜色に染まっているのを見て。

僕はその愛らしい笑顔に釘付けになり、不意にこちらを見た。

立花と目が合いドキッっとしてしまい慌てて目を逸らした。


照れ笑いをした二人にはちょっとした沈黙があり車を走らせていると。


「鳳さん、キャンプ場の入り口が見えましたよ!」

安堵し明るい声で立花が教えてくれた。

前を見ると、大きく立派な木材に《ようこそ ふれあいの森へ》と木彫りした看板が見えた。


僕はもうこの世界では数少なくなった生存者達に会える喜び。

不安ともいえる緊張感に用心をしなければと心に言い聞かせると。

自分の防衛本能のスイッチが自然にオンになるのを感じていた。


お読みいただきありがとうございます。

鳳くんが出会うキャンプ場の人たちが次話から登場いたします。

お楽しみに!

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