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黒髪の乙女は光を抱く

アレクシスと微睡みのドラゴン

≪お前の想いはまがい物だ≫

頭の中に直接届けられる声。自分の後ろで次の行き先を相談する二人には聞こえていない。

(じーちゃん、それ、どういう意味?)

祖父の住みかである洞窟に訪れて半日。昔父と来た時には、祖父はすぐに人型となって歓迎してくれた。

しかし、今はずっとドラコンの姿のまま。まるで何かに対して、己が上位であることを見せつけるように――…。

≪4分の一しか我らの血を引くお前は、己の生物としての順位を考えたことがあるか?≫

(んなの考えたことないよ。じーちゃんまで、学園にいた貴族の奴らの考えなわけ?)

純血こそ至高だと謳う貴族の子どもたちを思い出して、アレクシスは眉をひそめた。仮にも高等生物たるドラコンの血を引いていたので、あからさまな差別は受けていなかったが、彼女は違った。リリーの方をちらりと見て、彼女の転入初日や、それ以後の様子を思い出す。

≪貴族など我らには取るに足らぬ。王族とて所詮は、貴族には毛が生えたに過ぎぬ≫

祖父は孫の表情を見て思うとこがあったのか、鼻で笑った。アレクシスが祖父と祖母の馴れ初めにもう少し興味を持っていれば、彼の祖母がとある王族の王女だと知っていただろう。

(じゃあ何?)

≪純然たる力関係だ。我はドラコン、高等生物の上位に君臨する。故に、我を使役出来るモノは限りがある≫

(貴族…あるいは王族も無理てことだよね?)

≪無論。人間風情には不可能だな。我らと同じ高等生物の上位、あるいは魔族の上位に限る。しかも、自身より力が強いモノのみだ≫

祖父はにやりと笑い、鋭い牙を覗かせた。そして、アレクシスに向かって炎の息吹を吹き掛けた。

「うわ…!何すんだよ、じーちゃん!」

背中に背負った魔法剣を反射的に抜いて、炎を吸い込ませる。それでも風圧に弾き飛ばされ、翼を生やしてなんとか空中で静止する。

≪お前は、弱い。人間にお前を従えやしないが、高等生物、魔族は別だ。お前はそれらの多くよりも、下位。こうして、我の息吹一つに押し負けておるしな≫

「………っ」

弱いと言われ、アレクシスは剣をギュッと握る締めて俯く。祖父がいつの間にか結界を張ったのか、後ろの二人には風圧どころか、こちらの様子にも気付いていないようだった。

≪弱きモノは、強きモノを畏れ、惹かれ、従順する。そのことをゆめゆめ忘れるな、アレクシスよ≫

「意味わかんねーよ…」

≪いずれ、分かる。反転する時は近い≫

祖父は首を持ち上げ、遠くを見た。煌めく金色の瞳に、星が映った気がした。

≪……もう行け。これ以上は、我も不愉快だからな≫

鋭く尖った爪で、宙に浮いている孫の襟元を掴んで、ステルラの方に向かって無造作に放り投げた。

「じーちゃん!!」

≪息災で≫

まだ何か言いたげな孫に、微笑みかけ、結界を強めた。今度は孫にも己の姿が見えないように。

≪アリーシャ。我らの孫は、難儀な存在に惹かれておるみたいだな≫

その名を呼ぶのも厭わしい少女の姿を思い出しながら、亡き妻に語り掛ける。そうして亡き妻と夢で会えるよう祈りながら、雷のドラコンは目蓋を閉じて微睡み始めた。


おじいちゃんドラゴン「アレキサンダー」

若かりし頃に一目惚れした妻・アリーシャは貴族の娘であり、

近親相姦の果てに生まれた禁忌の娘のため内密に育てられていたのを、

知り合いの妖精がたまたま見せてくれた水鏡で見つける。

イケメン。傲慢。

アリーシャ以外はどうでもいい。

一人くらいはアリーシャ似の子孫が欲しいと思っている。

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