救出はいつか
船が難破し、偶然流れ着いた近くの小島で、俺は暮らしている。
もう5年も昔の話だ。
当時子供たちと一緒に運よく流れついた人たちも、俺と一緒に共同生活をしている。
子供が8人、夫婦一組、それに俺だ。
俺は、この小島を5年かけて全域を調べ上げ、俺たち以外に誰もついていないことを知った。
そして、いくつかの泉を見つけ、洞窟や住めそうな場所を調べた。
今じゃ、俺がこの島の島長をしている。
一度、ヘリが救助に来たことがあったが、謎の墜落をしてしまった。
「助けがくるのって、いつになることやら」
食料も、魚釣りをするから、問題はない。
肉がないことは残念だけど、稲によく似た穀物なら、この島に自生しているから、そのあたりは問題ない。
いつの間にかそんな独り言をしながら、波がかからない岩場に座って魚釣りをしている俺がいた。
「ねえねえ、何しているの?」
息ぴったりな言葉のデュエットが聞こえてきた。
「やあ、君たち。今日の晩御飯を釣っているんだよ」
顔を見るまでもなく、唯一の双子の姉妹だと分かる。
「ご飯?」
「そうさ、今日は焼き魚の日だからね」
「お魚、いいね!」
妹が話してくれる。
「そうさ、お魚だよ」
膝に妹が、背中に姉がしがみついてくる。
「じゃあさ、これ持って行ってくれないかな」
双子に俺が今まで釣った釣果を、漂着していたカバンに詰めていたものを渡す。
「わかったー」
二人とも一緒に返事をして、そのままかばんをもって行ってくれる。
その背中を見届けながら、このままでもいいかと思いだしている自分がいることに気付いた。
「そうか、救助が来なくても、この人数だったら何とかなってるしな…」
そう言いながら、釣りを続けていた。