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肩越しの青空  作者: 蒲公英
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その6

※予備知識:よさこい鳴子踊り/高知県発祥で、鳴子と言われる打楽器(元々は鳥追いの道具)を両手に持ち、よさこい節をアレンジした曲に合わせて、前に進みながら踊る。アレンジは自由で、サンバ・ヒップホップ・ジャズ他何でもアリ。衣装も踊りも各チーム趣向を凝らし、ヘソ出しから振袖まで、やはり何でもアリ。チームごとのカラーはあるが、毎年衣装も曲も、当然振り付けも変化する。




「あのさ、正調よさこいって踊れる?」

スポーツクラブのラウンジで、原口先輩の言葉に首を傾げる。

まさか、よさこいの話をこんなところでされるとは。

「基本だから、忘れてなければ。なんで?」

「保育園で、チーム作るんだけどさ」

鳴子両手に踊る熊。

「後ろ向いて笑うな、正面切って笑え。何人か踊れるお母さんに頼んでるんだけどさ、俺も覚えないとならなくて」

「いや、そんなに難しくないでしょ、男踊りも女踊りも」

「そりゃ、踊れる人の意見だ。園児は踊りになんないから、大人くらいはちゃんと動かないと」

原口先輩は分厚い掌を合わせて、あたしに頭を下げた。

「篠田先生っ!俺に教えてくださいっ!」


家に帰って、youtubeで確認した。

振って振って開いて進んで・・・かつて踊った記憶が蘇って、やけに夢中になって踊ってしまった。

これを、原口先輩に教えればいいわけね。

まだ6月になるところだし、お祭りは8月末だし、何回かで未経験者も覚えられる筈。

ん?教えるってことは、少なくとも覚えるまでは待ち合わせ続けるってことか?

また、上手く持って行かれた気もする。


練習場所が夜の公園ってのも、なんだかなあ。

こんな大男と二人っきりで夜の公園にいるっていうのは、近所の人たちに見られたくない。

自分の車で待ち合わせ場所まで行くと、駐車場にぼーっと大きな人影。

途端に、人気のない場所で男と待ち合わせて、しかも力では絶対に敵わない相手だと思い出す。

なんか、迂闊に隙だらけな約束をしたんじゃないだろうか。

人の良さそうな目尻の皺を見て、気を取り直して車から降りた。


まず鳴子の持ち方ね、なんて教え始めて、あっと言う間に1時間。

「ひえー・・・つっかれたー・・・」

石畳にべたっと座る原口先輩を見下ろす。

「急に冷たい所に座ると、痔になるよ」

「女のセリフだとは思えん」

あ、女の兄弟がいない人のセリフだ。

うちの弟、これくらいじゃ動じないもん。

「先輩、お姉さんも妹もいないでしょ」

「うん、弟がひとり。篠田は、妹だけ?」

訂正したほうが、良いのかしらん。

「あれね、龍太郎って名前なんだけど」


衝撃を受けた顔をした先輩は、しばらく黙った後にゆっくり口を開いた。

「美少女姉妹なんて記事にした新聞社に、抗議した?」

「え?そんなことで?だって、間違われることなんて年がら年中」

「プライド、傷ついただろうなあ。あの時、中学生くらいだろ?友達にからかわれたりして、ショックだっただろうな」

生真面目な顔に、こっちがびっくりしてしまった。

間違われちゃったのは仕方ないと思い、翌年踊らないと言い張った弟は、ずいぶんと根に持つタイプだと、あたしはこっそり呆れていたのだ。

原口先輩はもしかしたら、とても優しいのかも知れない。

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