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肩越しの青空  作者: 蒲公英
肩越しに見えるのは
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その4

部屋に戻ると、昭文はテレビをつけずに、窓越しに外を眺めていた。

小さなテーブルの上にはビールの缶。

「あったまって来たか。今日はのんびりだ」

すでに機嫌良くほどけている顔を見て、つんつるてんの浴衣から出ている足を見下ろした。

備え付けの浴衣って、あたしは腰紐で上げが必要なんだけど。

「昭文みたいに大きい人って、あっちもこっちも詰めたり上げたりしなくて良くて、いいなあ」

「その代わり、入んないのがある。バスローブが肩で引っかかる」

足して2で割れば、ちょうどいいかもね。


まだ観光シーズンじゃない旅館は、物音が少ない。

テレビの音は必要ない。窓を開けると、微かに虫の声がした。

過剰に喋って、気持ちを引き上げたりもしなくていい。

機嫌をとったり、はしゃぎすぎて困らせたりもしなくていい。

昭文はそこにいて、落ち着いた顔で座っている。

昭文の足元に座って、筋肉質の足に寄りかかってみる。

悪い感じじゃないね、こんな時間の連続で生活するんだとしたら。


黙りがちなまま時間が過ぎて、夜更かしの習慣のない昭文が、布団に入ろうと言う。

掛け布団をはぐって上に正座したら、お定まりの展開になった。



布団は二組敷いてあるのに、昭文はあたしを抱えたまま寝息を立て始めた。

先に眠っちゃうんじゃないの。蹴ってやろうかな。

でも、いいや。眠りに落ちる前の、昭文の声が聞こえてたから。

「明日の朝、一番に見る顔は静音だな」

眉はしっかり描いてあるけど、顔は浮腫まないだろうか。

昭文の腕の中は、布団なんかいらないくらい暖かい。

はじめから猫の皮着用じゃなかった昭文は、睡眠不足で不機嫌な顔を見せても、動じないかも知れないな。

そんなことを考えているうちに、あたしも眠りに落ちた。

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