表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
肩越しの青空  作者: 蒲公英
曇天に舞う青空
44/73

その7

「原口先生」

後ろから声をかけられて振り向くと、小学校の低学年の男の子と、若いお母さんだった。

「お久しぶりです」

幾分硬くなった先輩は、すぐに子供のほうにしゃがみこんだ。

「ずいぶん大きくなったなあ。元気だったか」

子供は恥ずかしそうに、先輩と話している。

母親の視線は、あたしに向いていた。


「原口先生は、デートですか」

「そうです」

立ち上がった先輩が、あたしの肩を抱く。

なんか、すごく微妙な空気だ。

先輩の顔を見上げ、母親の顔を見てから、子供に目を落とした。

「幸せそうで、良かったわ。私もね、結婚しました」

先輩の指の力が、少し緩くなった。

「おめでとうございます。お幸せに」


去っていく母子の後姿を見て、先輩がこっそり吐いた溜息で、事情がわかったような気がした。

流し踊りが賑やかに進む通りを見ながら、先輩は小さく「わかっちゃったよな、ごめんな」と言った。

「なりたての母子家庭と新米の保育士なんて、ベタな組み合わせだろ。もう二度と会わないと思ってたんだけどな。市内なら、そんなわけないか」

「いいよ、別に気にしないから」

嘘。すっごく気になる。

「自分が寝た後に母親が出掛けたことに気がついた子供が、夜の11時にパジャマのまま警察に保護された。一度眠ったら起きない子だから、なんて言葉を鵜呑みにした自分のバカさ加減に嫌気がさした。」

「聞きたくない」

「俺があれもこれも、甘く見てた証拠だ。寄りかかってきている人の抱えているモノを、引き受ける覚悟はできてなかった」

「聞きたくないってば」


過去の恋愛なんて、気にするだけ間違ってる。

だって先輩は今、あたしの横にいるんだから。

だけど、この先は?この先、あたしがどうなるんだか、知りたい。

曇天の下に広がる、空色のふらふ。

先輩の作る青空を、振り返って確認したあたし。

覚悟を決めよう。

あたしはもう、先輩の手の内だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ