その6
二日間のお祭だけど、二日目にエントリーはない。
卒園児たちがあちこちのチームで踊るから、なんて言う先輩と待ち合わせ。
肩ストラップのワンピースと、夏のお約束の日傘。
踊りが流して行くのを見ながら、少し飲んじゃうつもりだから、自転車はやめておく。
昨日の晩の先輩、自転車漕ぎ難そうだったな。
26インチのママチャリのサドルを目一杯上げて、ゆらゆら。
今日は昨日踊った場所とは別の会場に行く。
長いコースを繰り返しで踊るコンテスト参加チームたちは、粋で華やかだ。
あたしが以前参加していたチームも、衣装や振り付けに趣向を凝らし、曲もプロに作ってもらっていた。
昨日は最後さえちゃんとしてれば、楽しかったな。
来年、踊っちゃおうかな。笑夢の美少女、復活・・・少女じゃないか。
先輩との待ち合わせは、目印はいらない。
大体の場所さえ決めておけば、雑踏の中に飛び出る頭。
「今日はずいぶん、可愛い格好してるな」
「いつも、何着ても可愛いでしょうが」
先輩と会うときはジャージかジーンズが基本だから、女の子服を見たのは、池袋で鉢合わせした時だけだったかも。
「体調は大丈夫か」
「うん、なんでもない。今日はビール飲みながら、ゆっくり見物だし」
「利尿作用で脱水が怖いから、アルコールは止めとけ」
過保護じゃないですか、あきふみせんせい?
賑やかな会場を歩きながら、時々小学校低学年の子供に声援を送る。
声をかけられた子供は嬉しそうにこちらを見るけど、踊りながら前に進んで行く。
お祭だとは言っても、長いコースを踊るので、知った顔に会うことは少ない。
「手足が痺れたりしないか?」
「大丈夫だってば、そこまで体力は低くない」
反発しながら、ちょっと嬉しい。
そんな風に、心配してくれてたんだね。
人混みで邪魔な日傘を畳んで、並んで踊りを見ていた。