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肩越しの青空  作者: 蒲公英
曇天に舞う青空
39/73

その2

お祭りへの参加は土曜日だけ、保育園チームだから、長いコースを踊ることはない。

衣装はTシャツと短いスパッツだけだから、化粧や髪に時間を掛けることもないし、コンテストにもエントリーしてないから、気楽と言えば気楽だ。

土曜日の昼過ぎに、ポニーテールを逆毛にして鳴子入りのウエストバッグをつけたあたしを見て、母は「お祭り?」と聞いた。

「うん、ちょっと助っ人を頼まれたから、一日保育士」

「どうせなら、笑夢えむで踊ればいいのに」

「踊りたい気はあるんだけどさ、練習にフルで出られないし」

練習のために週に何度も拘束されるのは、社会人にはちょっと辛い。


どんよりしたお天気で、降らないといいななんて思いながら歩く。

集合場所で先輩が持っていたふらふは、綺麗な空色だ。

ところどころに白い布が見えるのは、雲なのかな。

多分、中央には保育園の名前が入っているんだと思う。

「いいだろ。旗が空で、子供たちが太陽だって園長が考えたんだ」

ああそうか、それで朱赤のシャツなのか。今日は、お日様がいっぱいだね。

本当に、お天気がもつといいなあ。


「あきふみせんせー!」

子供たちが何人も走って来る。

よじ登ろうとする子、体当たりをする子、旗を持ってみたいと言う子。

「あきふみせんせい、人気だね」

ぼちぼち集まって来はじめた他の保育士さんたちと、挨拶を交わす。

園長先生に丁寧に挨拶されて、恐縮してしまった。

「原口先生のお友達ですって?良い踊り子さんなんですってねえ」

「そんなことはないです。踊るのが久しぶりなので、今日は楽しませていただきます」


「はーい、みんな集まってー。今日は、このお姉さんが一番前で上手に踊ってくれるので、みんなも負けないくらいかっこ良く踊りましょう」

園長先生がメガホンで子供たちに話すのを、保育士さんたちと並んで聞く。

ちょっとくすぐったい。

子供たちの後ろに、竹竿を立てて仁王立ちの熊。

視線が油断なく子供たちの頭の上を、行き来している。

今日は「原口先輩」じゃなくて「あきふみせんせい」なんだな。

一人だけ朱赤じゃなくて、青いシャツ。サイズがなかったんだろうなあ。

あきふみせんせい、お仕事を拝見させていただきます。


カオスな子供たちを並ばせ、小さい子供の横にはお母さんたち。

虹色のオーガンジーのリボンを襷掛けにして、背中に大きく蝶々結び。

進行係さんに先導されて、道路に出るとワクワクする。

さあ、子供たち、踊るよ!

あたしの後ろには保育士さんが二人、つまり三角形のトップ。

最後尾の先輩が、ふらふを大きく振って準備完了の合図をする。

空はどんより曇っているのに、先輩の上にだけ青空が広がる。


「子供たち、元気はいいか!」

「おー!」

「二歳児から六歳児までが、可愛く元気に踊ります。沿道の皆々様には手拍子の応援をお願いします。では、まいります!いよぉーっ!よっちょれっ!」

声だし役の若いお父さんのアオリで、音楽が始まる。

子供の歩幅に気をつけながら、あたしは踊り進めた。

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