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肩越しの青空  作者: 蒲公英
不本意なんだけどね
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その8

お盆に帰省(って程じゃない。1時間程度で帰ってくる)した弟と、量販店で買い出しをしていたら、先輩に声をかけられた。

「静音も休みか?保育園も交代で休みだ」

身体の大きい人に反射的に敵対心を持つ龍太郎は、すでに警戒心丸出しの顔だ。

「静音の弟さん?はじめまして」

龍太郎の表情をモノともせず、先輩はいつも通りに腰を屈めた。

「結婚相手の原口です」

「は?えーっと、静音、結婚すんの?」

不意打ちを喰らった弟の視線が、あたしの顔と先輩の顔を往復する。

「ぜんっぜん決まってないから!家族にまでそれを言うか!」

「いや、決まってるから。一念天に通ずってね」


呆気にとられた龍太郎の横で、ニヤニヤする熊。

ちなみに、二人の身長差は約30センチだ。

「つまり、原口さんはうちの姉貴に結婚の申し込みをして、姉貴はそれを承諾してないってことですか」

自分で意味を飲み込むために、龍太郎が整理する。

「そう。決断に時間かけちゃってて」

「ちがーうっ!この熊は、つきあい始める前に、そう言い出したのっ!」

もう、どこ向いて喋ってんだか、あたし。


「静音は見た目通りじゃないですよ。こんな女、どこがいいんです?気は強いわ喧しいわ、おまけに口も悪い」

「まあ、自分の姉貴をそう言わないで。その気が強くて喧しいところが、気に入ってるんだ」

「それ、ちっとも褒め言葉じゃないっ!」

セリフが三つ巴になって、他人様の迷惑になると困るので、レジを済ませて駐車場の隅の自販機の前に移動した。

そして、ちょっと感心する。

警戒心丸出しだった龍太郎が、短時間で警戒を解いて、笑顔まで見せたりしてる。

これは、ちょっと真似できない。


またね、と手を振って車を出してから、ハンドルを握った龍太郎は前を向いたまま、言った。

「いいんじゃない?あの人。静音がぎゃーぎゃー騒いでも、泰然としてそうだし。ただ、ガテン系の人と静音ってのは意外だけど」

「えーと、肉体労働者に近いかも知れないけど、ガテン系じゃなくて福祉系なの」

「違うの?何やってる人?」

「・・・事故ると困るから、赤信号になったら言う」

赤信号で話を聞いた龍太郎はハンドルの上に顔を伏せ、信号が変わっても顔が上げられずに、後ろからクラクションを鳴らされた。

「いいじゃん。俺、あの人、気に入った」

まあね。あたしだって、気には入ってるのよ。ちょっと押され気味だけどね。

ええっと。何故弟が身体の大きな人に敵対心を抱くのか、理由のわからない方は、「しあわせになりたい」というお話の、一番最初のページをご確認くださいませ。


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