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肩越しの青空  作者: 蒲公英
不本意なんだけどね
36/73

その7

「デートがダブルブッキングで、待ち合わせ場所に男を連れてったんだって?」

また、ロッカールームで橋本さんが言う。

「そーんなこと、しません。柏倉のヤツ、そんなこと言ったの?」

「ゴリラみたいな男に威嚇されたって言ってたけど」

ゴリラですって?失礼な。威嚇なんてしないわよ、常識人なんだから。

「つまんねー男!お断りして正解だったわ」

「出た!篠田の切り捨て御免」

そういうこと言われると、頻繁に切り捨ててるみたいじゃない。


「篠田さんが入社したばっかりの頃、男の子たちがしばらく夢見ちゃってたもんねえ。まさか大酒呑みの毒舌だなんて、誰も想像しなかったよねえ」

「なんか、すっごい言われようだね。でも、会社関係で誘われても、トラブったことはないと思うんだけど」

全部3回以内で見極めしてる筈だし、それなりにオトナ同士の話だし。

「柏倉氏、ずいぶんご立腹だったよ。なんで?結構優良物件じゃない?」

「家持で高学歴で?でも、バカじゃない。そうやって、プライベートをダダ漏れにするヤツなんて、いらない。優良物件なら、橋本さんが拾えば?」

「私、再来月結婚するんだけど」

橋本さんにまでそんなことを言ってるんじゃ、入社研修が一緒だった子会社の同期たちも、きっと知ってるんだろうなあ。

頭、痛い。もう、会社関係の男の誘いには、乗らないことにしよう。

狭まる選択範囲。


「で、そのゴリラみたいな男っていうのは、なんなの?」

「高校の先輩。たまたま駅で会っただけ」

嘘じゃないもん。今現在、ちょっと微妙な感じではあるけどね。

「あ、それって原口先生?ゴリラっていうより、もっと動のイメージだよね」

パートさんが入ってきて、話を逸らしてくれたので、解放される。

柏倉のヤツ、覚えとけ。

次のシステム開発で子会社の意見を求められたら、不具合の部分だけを大書きして送りつけてやる。

あたしの勤め先は試薬(簡単なところでは硫酸とかアンモニアとかね)の卸売だから、危険物は身近にあるんだけど、まさか柏倉が危険物だなんて、気がつかなかった。


って話を、スポーツクラブのラウンジで先輩にごちゃごちゃと愚痴った。

社内でこれ以上の恥を晒すのはごめんだし、週末に会う予定の友達とは、共通の友達の出産祝いを買う予定で、そんな時にこんな愚痴をこぼすのもおかしいし、でも誰かにぶちまけたい。

「だから、その前にとっとと俺に返事すれば」

「あんな突拍子もない話より、そっちのほうがリアルでしょ?」

「突拍子がないと思ってるのは、静音だけだ。俺はあの日、ジムでトレーニングしてる時に、おまえを紹介してくれって話しかけられたんだ」

「え?ここの会員に?」

「俺と話してる小柄な子を紹介しろって。俺自身が名前も知らないヤツだぞ。あれは俺の女だって断っといた」

はい?ここでも、そんな話になってたんですか?

・・・あたし、居場所ないじゃない。


それでも先輩に腹を立てないのは、あたしが先輩に好意を抱いているからだ。

そう気がついたのは、柏倉に対する怒りが冷めてからだった。

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