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肩越しの青空  作者: 蒲公英
不本意なんだけどね
34/73

その5

「昼メシ、済んだ?」

「寝坊したから、朝昼兼用。先輩はまだだった?」

「食ってけよ、作ってやるから」

料理上手な子に教えてもらって、上達した料理ね。

「いいよ、先輩の手料理食べてばっかりだし」

「俺一人で食べるのが、気がひけるだけだ」


「じゃ、あたしが作る。キッチン貸して」

これはあたしの意思の言葉なんだろうか?

自慢じゃないけど、レパートリーは少ない。

弟と住んでた時なんて、夕食の内容で喧嘩したこともあった。

でも、口から出た言葉は取り消せない。


幸いなことにパスタがあったので、持ち込んだトマトをザクザクと切る。

「何ができるの?」

「冷たいトマトパスタ。その袋のトウモロコシは茹でたばっかりだから、それも食べて」

すっごく手軽なメニュー。

一品以上作ると、ボロが出るかも。

何に対抗しようっていうんだろ、あたし。

女の子らしいことができるって見せてみたいわけ?この熊に。

ニンニクをみじん切りしながら、自分に対して腹が立ってくる。

自分を底上げして価値を高く見せようなんて、卑しい行為だ。


オリーブオイルは無いらしい。

洗濯物を干していたらしい先輩が、「何かしようか?」と声を掛けてくる。

「大したことしないから、何にもない。お鍋、どこ?」

「吊戸棚の上・・・届かないよな?」

「見ればわかること、いちいち確認しないで」

はいはい、と先輩が鍋を降ろす。

炒めたニンニクとトウガラシに切ったトマト投入で、味付けしたらおしまい。

「ブラックペッパー、ない」

「何それ?普通の胡椒しかないけど」

普通にあると思っていたあたしが、間違っていたろうか。いいや、胡椒で。

出来上がったものを冷蔵庫に入れ、お湯を沸かしはじめる。

その間に、バジルもみじん切り。


「それにしても、メシ作るの決まってたみたいに、自分が持ってきたもので作ってるよな」

「そんなわけ、ないでしょ!帰るつもりだったのにっ!」

「そんなに強い否定の仕方、すんなよ。想像して嬉しくなっちゃっただけなんだから」

嬉しくなっちゃうってことは、先輩はあたしが料理したり洗濯したりすることを、期待してるってことかしらん。

「あたし、女らしくないよ、先輩」

「知ってる」

きっぱり言い切られると、それはそれでムカつく!

パスタを放射状に湯に投入しながら、あたしはぶすったれた顔をしていた。

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