表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
肩越しの青空  作者: 蒲公英
不本意なんだけどね
31/73

その2

先輩の大きいシャツだけ着ることにして、もぞもぞと自分のシャツを脱ぐ。

コンロの用意をしてクーラーボックスを開けている先輩の背中には、汗が流れてる。

切り揃えて、焼くばかりになっている野菜。本当にマメな人だ。

「先輩って、実家にいるときから台所に立つ人だった?」

弟は料理なんて滅多にしなかったので、そんな男の人はいるのかと疑問に思っただけだ。

「いや、一人で住み始めてから。料理の上手な子に教えてもらって」

言いかけてから、しまったって顔をしたので、理解してしまう。

ああ、前の彼女が料理上手だったわけね。


「ミシンの使い方も教えてもらったわけ?」

「いや、小学校の時に家庭科で使っただろ?」

興味津々風に顔を見ちゃうけど、実は面白くない。

この前は先輩の作ったお弁当を食べて、今は切り揃えてもらった野菜に火が通るのを待ってる。

お料理上手でミシンの使い方を教えられる女の子と、見た目だけ女の子らしいのに、中身はがらっぱちのあたし。

女としての格上は、絶対に前者だ。

「肉、焼けてきたぞ。タレと塩、どっちで食う?」

「塩。ビール、出して」

コンロの前でトングを使いながら、腕を伸ばしてクーラーボックスを開け、「手がかかるな」と先輩は笑った。


ビールを受け取ろうと腰を屈めたら、ニヤッとした顔が向いた。

「何かのサービスか、それ」

「何?」

「淡いピンクは可愛いけどな、臍まで見えたぞ」

忘れてた。大きいTシャツって、襟ぐりも大きいのだ。

「それは次の楽しみだから、今日のところはしまっとけ」

「次はないっ!」

「そんなわけ、ないだろ。聖者じゃあるまいし」

そう、だよね。あたしも、ないとは思ってないもん。


あたしの外見じゃなくて、性格が気に入ったという。

本当に?どんな風に?

少なくとも、あたしは先輩の人の良さそうな笑い方とか、あたしが焦らないように急かさないでいてくれる気の遣い方は、とっても良いと思ってるんだよ。

頼り甲斐のありそうな太い腕も、不本意ながら気に入ってるんだけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ