その1
梅雨があけて、本格的に夏仕様のお天道様が威張っている。
「森林公園のプールにでも行く?」
「日焼けするから、やだ」
「夏は日焼けするもんだろ」
「それは10代まで!」
日傘を広げながら、ファミリーレストランの駐車場を歩く。
「じゃ、デイキャンプ。川で少し水遊びして、バーベキュー」
紫外線量から言えば、どっちこっち言えないと思うけど、ちょっと心惹かれるプランだ。
「水着にならなくて、いい?」
「いいけど、着替えは何枚か持ってるほうがいいよ」
そんなわけで、簡易バーベキューセット(先輩が、ガスの小さいセットを持っているという)と、肉・野菜入りのクーラーボックスを車に積み込み、場所取りのために朝6時に出発する。
場所自体は近いので、駐車場に入ったのは8時少し前、管理人さんが出勤してきたのと同時に入場する。
「眠・・・」
木陰にレジャーシートを敷いて川の音を聞いていたら、やけにのんびりした気分になった。
「朝早かったもんな。今日は頭を空っぽにする日にしよう。眠いんなら、寝てもいいし」
デイキャンプ場はまだ、人がまばらだ。
これから何時間かで、人が溢れるんだけど。
午前中の涼しい日陰で気持ち良くウトウトする。
汗だらけで起きて川の水に足を浸すと、なんかとってもリゾート気分。
気が付くと、まわりにたくさんのビニールシートや日よけのタープがある。
お財布も携帯もいらない場所、身一つって気楽だ。
ひょいっと身体を掬われて、水の中に投げ出されそうな予感に怯えて、先輩の首にしがみつく。
「力が強いからって、一方的に他人を水の中に投げ込むのは、反則っ!」
しがみついた先から、笑い声が漏れる。
「やめてーって叫ぶんじゃないんだ?怖がりながら、文句を言う」
足から水の中に降ろされて、膝下くらいの水深に安心したところで、肩を突かれた。
ばしゃんと派手な水飛沫を上げて、転ぶ。
「卑怯者っ!安心させといて水浸しにするっ!」
大笑いしながら手を差し出した先輩に、盛大に水を掛けてやる。
どうせびしょ濡れなんだから、構うことはない。
「悪い、シャツの色が薄かったな」
先輩が自分の着ていたオリーブ色のシャツを脱いで、あたしの頭に無理矢理通した。
あたしの薄い空色のシャツが、水に透けて下着の色が――
「このっ!」
あたしにはワンピースサイズの熊のシャツ。
「とりあえず、帰りに着替えるまで、それ着とけ。まだ水遊びするし」
「先輩は?」
「何枚も持って来てるし、ドカタ焼けの解消しないと」
背中にまでついた筋肉と厚い胸から、思わず目を逸らした。