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肩越しの青空  作者: 蒲公英
ことの発端
3/73

その3

眉だけ描いたすっぴんのあたしがロビーに降りた時、原口先輩は待ち合わせ用のソファで眠っていた。

待ってるとか言って寝るか、バカ。

そのまま帰ってもあたし的には問題ナイ。

でも灯りが消えるまで、ここで熊が寝ていたら、スタッフさんは困るんじゃないかしらん。

「・・・先輩、寝るんなら、お家に帰ってからの方が良いですよ」

ぼんやりと目を開けた先輩は、しばらく合わない焦点を無理にあたしの顔に合わせようとしてた。

「あれ?篠田?」

「あれ、じゃありません。寝ちゃうんなら、待ってるなんて言わないでください」

「ああ、ごめんごめん。恋人を迎える態度じゃなかったな」

「だから、誰が!」

やっぱり、放って帰れば良かった。


態勢を立て直すべく、ラウンジできっぱり否定することに決め,向かい合わせに座る。

「俺、バナナジュース。篠田は?」

「アイスティー。ドリンク代、持ってくれるんでしょうね」

「今に同じ財布になるんだから、どっちが払っても」

思わず、テーブルの下で足を蹴る。

平然とニヤニヤしてるのが、悔しい。

「幼稚園児に蹴られたって、大して痛くないだろうよ」

「失礼な。幼稚園児ってあたし?」

「体格差、それくらいあるんじゃない?体重、俺の半分くらいだろ」


トレーニングウエアの下の盛り上がった筋肉は、目の前に座るとすごい威圧感なのに、人の良さそうな表情と飄々とした喋り方が、それを帳消しにしてる。

「この際、きっぱり言いますけど」

「おっと。まさか条件を知る前にお断り、じゃないよね」

原口先輩はニヤニヤしたまま、テーブルの上で両手を開いてみせた。

「口を利くのも嫌な相手と、一緒にテーブルについたりしないよね。とりあえずお互いを知りましょ」

先に「結婚」を持ち出しといて、お互いを知りましょなんて、ふざけた話だ。

バカにされてんのか、こいつが真性のバカなのか。

「ってワケで、日曜日に出掛けよう。映画なら、アニメと実写どっち?」

「誰が行くって?」

「あれ、都合悪い?じゃ、土曜日の夕方からで」

・・・頭、痛。


「まさか、あたしに彼氏がいないとでも」

「いるの?」

いや、いないけどさ。いてもおかしくないでしょ、外見も、年齢も。

「言葉に詰まったところみると、やっぱりいないんじゃない。問題ナッシング」

「いないからって何も」

「ま、馬には乗ってみよってとこで、ひとつ」

この熊、意外に口が減らない。


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