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肩越しの青空  作者: 蒲公英
熊には乗ってみよ
23/73

その3

石畳に座った先輩の横に、腰を下ろす。

ベンチはすぐそこにあるんだけど、場所を移そうなんて言い出すのも、変な感じ。

「考えてみれば不用心だな、篠田は。担いで繁みで押し倒すぞ」

「先輩は、そんなことしないでしょ?その程度には信用してるのよ」

後ろ手に手をついて空を見上げた先輩は、ちょっと子供っぽい表情。


「なんでいきなり結婚とかって言ったの?」

横だと顔を見せなくていいから、ちょっと聞いてみる。

「そこに至るまでのプロセスは、どうでもいいわけ?」

「答えなくちゃいけないか?」

珍しく、口籠る熊。

「それを聞かないと、あたしは意味が理解できない」


両手で自分の頭を掻き毟った先輩(短髪だから、ぐしゃぐしゃにはならない)は、こちらを見ないで口を開いた。

「手元に置いときたいと思ったんだ」

一瞬、意味が把握できずに考えてしまった。

あたしが口を開かないので、先輩は自棄になったように続けた。

「好きとか可愛いとかより先に、手元に置きたいと思ったんだよ」

手元に置くって、人形じゃあるまいし。


「何?手元に置くって、床の間にでも飾っといてくれるの?」

これは、ちょっとした照れ隠し。

「床の間のあるような家に住んでないから、床に入れとく」

間髪入れずに戻った返事は、結構なRコードだ。

「・・・そういうこと、考えてました?」

「考えられないような女と、結婚する気はない」


大きな身体に似合わない素早さで、熊はあたしを懐に抱えた。

「本当に不便だな、これ。顔の位置がぜんぜん合わない」

ぶつぶつ言いながら、無理矢理身体を折り曲げようとする先輩に、ちょっとだけ顎を持ち上げて、ご協力。

「つきあってください」なんて言葉よりも強烈な「手元に置いときたい」に、思いの外感動しちゃったっていうのは内緒だけど、キスくらいはしちゃいたい気分。

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