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肩越しの青空  作者: 蒲公英
ことの発端
2/73

その2

「送ろうか?」

「あたし、車なんだけど」

「俺、歩き」

どういう手段で送ろうとしたやら、判断に迷うところだ。

30センチ上から降ってくる声は、やたらめったら暢気で、世間話の続きみたいに聞こえる。

ロビーから出て駐車場を突っ切るとこ、あたしの斜め後ろを歩く嵩高い奴は、車までのこのことついて来るらしい。

「何?送らないわよ」

「発車するまで、お見送り」

開錠してシートベルトをつけると、原口先輩はにっこりと手を振った。

笑うと眼の縁に皺がたくさんできる、人の良さそうな顔。


「電話するから、待っててね」

「知らないくせに」

「高校の時の名簿、捨ててないもん。実家にいるんでしょ?」

ああ、今ほど個人情報云々がうるさくなかった時代、部員名簿には住所と電話番号がしっかり記載されていた。

何を考えているやら、深く考えようとすると頭がガンガンしてくる気がして、あたしはサイドブレーキを外した。

いいや、明日にしとこ。


家に帰って、とって置いたかどうか謎の、高校時代の名簿を見つけた。

原口昭文、3年3組。あれ、副部長だっけ?

家は・・・あれ?市内じゃないや。歩きって言ってたけど、駅までなのかな、それとも一人で住んでるとか。

高校時代に同じ部活だった美月に、とりあえずメール。

>久しぶり。ねえ、いきなりだけど原口先輩って覚えてる?

間髪置かずに戻ってくるところが、暇な証拠だな。

>おっきい人だよね。あんまり覚えてない。

そこからメールがいくつか続いて、日曜にでも会おうかって話になる。

地元の友達って、これができるから楽。


電話するって言ったくせに、原口先輩と次に会ったのは、ジムでマシントレーニングしてる時だった。

チェストプレスしてる時に声を掛けられても、困るんですけど。

しかも、あたしは話なんてないんですけど。

「サーキット終わったら、ラウンジでお茶しよう。待ってるから」

「あたし、お風呂も入るんだけど」

「じゃ、その後でいいや。ロビーにいるから」

無視して帰ってやろうかと思ったけど、ロビーを通らないとフロントにロッカーの鍵が返せない。

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