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肩越しの青空  作者: 蒲公英
比較してみたり
19/73

その4

「帰らなくちゃいけないの?」

ほら来た。きっぱりどうでも良くなっちゃったあたしは、即答する。

「明日仕事だし、柏倉さんとはそういうオツキアイじゃないでしょう?」

「そういうオツキアイのつもりだったんだけど」

「じゃ、見解の不一致ってことで」

手を振って歩き出そうとしたところで、肩を掴まれた。

引き際の悪い男、ますますマイナス。


「あのね、仕事上の繋がりもあるでしょう?ゴタゴタしたくないの、悪いけど」

「3回も会っといて、そりゃないんじゃない?親会社勤務で、マンション買ったばっかりなんて条件、いいだろ?」

ああ、またそれを持ち出すか。

スーツの趣味は普通、話題も薄くない、だけど後ろにあるプライドは薄っぺら。

「肩、放して。マンションの頭金は親に出してもらったって言ったわね。それが自慢になると思ったら、大間違い」

少し酔っている柏倉さんの顔つきが変わった。

「タダメシ食ってたんだから、一晩くらいいいだろ?」

安く見られたもんだ。


「今までの食事代、返却しましょうか?」

財布を出して、大急ぎで一万円札を柏倉(敬称なんて、もうつけない)のスーツのポケットに突っ込み、後ろを向いて走り出した。

追いかけては来ない、つまり納得して受け取ったんだ。

改札を抜けた時、あたしの息はきれていた。

ああ、怖かった、そう思ったら泣きたくなった。


あたし、食事代を払ってくれなんて、言ったことない。

あたしが財布を出すたびに、柏倉は「僕が誘ったんだから」と固辞していたのだ。

それが最終的には「奢ったんだからやらせろ」だあ?

あたしが彼に好意を持ったままなら、別に問題はなかったのかも知れないけれど、見えちゃったアラはクローズアップするばっかりだ。

同じくらいのタイミングで失望できると良いんだけれど。


原口先輩が同じ状況ならば、多分あんな風に怖い思いはしない。

彼なら、あたしがきっぱりお断りをすれば、無理強いするような言葉は言わない筈だし、自分の意思で女の子に食べさせたご飯の見返りなんて、口に出したりしない。

あたしを追い詰めて結論を出させようとしないで、あたしの表情を観察している人だもん。

そうか、あたしは先輩をそうやって、信頼してるわけだ。

・・・怒ってるかなあ。

怒らせるのが怖いのは、嫌われたくないからだってことくらい、自分でもわかってる。

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