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肩越しの青空  作者: 蒲公英
比較してみたり
16/73

その1

出社してロッカールームで靴からサンダルに履き替えたら、同僚の橋本さんに声をかけられた。

「システムの柏倉さんとつきあってるんだって?」

「つきあっては、いないと思う。2回だけ、ご飯食べに行った」

「2人ででしょ?それはつきあってるって言うんじゃない?」

男と2人でご飯食べただけで「つきあってる」なら、あたしは今まで何人の男と「つきあった」ことになるんだろう。

時々、こういう考え方の人もいるなあと思う。


「ってか、あたし、そんな話誰かにしたっけ?」

「柏倉さん本人から聞いたよ。昨日、私、本郷に出張だったじゃない」

本郷っていうのは親会社の場所の地名で、システムの細かい変更とか商品ルートの変更だとかで、時々内勤も研修に出かけて行く。

「近いうちにまた誘いますって伝言。おとなしい人だからって言ってたけど」

そう言いながら、橋本さんは笑っちゃってたけど。

「ずいぶん見た目で騙したねえ。つきあうんなら地を出さないと、後からびっくりだよ」

「いや、あたし、おとなしいし」


答えながら、全然関係ない同僚にプライベートを話す柏倉さんに、少し腹を立てた。

背広を着てるから人づきあいがスマートなわけじゃないっていうのは、重々わかっていることなんだけれど、社会人同士なんだから、世間話みたいに自分の行動を話したりするもんじゃない。

まして、これから進展しないかもしない間柄なのに。

子供っぽいのか間抜けなのか、それとも女と会うことに慣れていないのか、マイナス点であることに変わりはない。

ちょっといいな、なんて思ってたんだけどなあ。

彼が見てるあたしの猫の皮は、ずいぶん子供っぽい色合いらしい。


当の本人から、その晩メールが来た。

とりあえず、もう一度会っとくことにして、待ち合わせをする。

見極め3回はセオリー通りだもんね、ちょっと惜しい気もするし。

社会人の出会いの場所なんて、学生さんより限られてるんだから、機会は有効に使わなくちゃね。

とは言っても、目の色を変えて男を探してるつもりなんかないから、気が合う・合わないは冷静に。


平日の晩に池袋ってあたりが、あたしの警戒心なのだと柏倉さんは理解してるかな。

いざって時に「明日仕事だから」ってお断りしやすいように、なんだけど。

待ち合わせの人でいっぱいの『いっぱいテレビ』の前に立ったあたしは、わかりやすい女の子服で(それが一番似合うって理由だけど)雑踏の中に埋まっていた。

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