イカイカ、いかが。
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その時、レストラン部分が騒がしくなった。
「チワース。お届けモノでースヨ。」
レストランの搬入口から龍太郎君が首から箱を下げて飛び込んできた。
「もう、いきなりすり抜けて行くんだから。」
後ろから慌てて付いて来てるのはランド兄と父だ。
「ヨ!昨日ブリだね。オッカサン。」
「アラ、龍太郎君。それは?」
「イカを獲ってキタヨ!サバイテ!天ぷらニシテ!お造りにもシテ!
後でメリイも連れて来るからサ!」
「それは良いけど。あら、箱の中にびっしりね!」
「オイラが好きな剣先イカにスルメイカダヨ。
良く呼子のイカ専門店の水槽で泳いでいるヤツネ。」
「函館の朝市にもいるよ。イカ釣りをして捌いてもらうの。」
結構楽しいのよ、アレ。ひっかけて釣るんだよね。
そういえば最近イカが不漁だって言ってたな。
この世界じゃ、そんなに食べないからな。
イカは沢山いるんだろう。
「ソウナンダ。オレ、北海道行ったことネエシ。
行って見たかったなあ。」
「で、イカをいきなり獲りにいって来たのね?」
「コレカラ、王妃サンとアキ姫サンヲ呼ぼうヨ。アキ姫サン天ぷら、食べタイって言ってタヨネ。
王妃サンも刺身嫌いじゃナインダロ?
メリイはね、料理ガ出来タラ迎えに行くヨ。
妊婦はナマモノダメかな。残念だけど天ぷらダケダネ。」
ええええ。ここに?アキ姫さまと王妃様を呼ぶの?
かんべんしてよーー。
「あらあ、龍太郎ちゃん。立派なイカがたくさん。漁が上手なのねえ。」
母が覗き込む。
「エッヘン。オイラが本気出せばコンナモンダヨ。」
ああ、もう。とりあえず捌くか。
「そうだ。龍太郎君。餅米で白玉粉を作ったの。
梅ヶ枝餅みたいの作って見る?」
「ウワ、スゲエ。それによく餅米手にハイッタネ?」
「アンディさんがね、ダイシ商会から手に入れてくれたの。なんとかね、少しだけど。ウフフ、そこからは裏技よ。」
母がニヤリとする。
「 ? 」
「キューちゃんがね、増やしてくれたの。パクリと飲み込んで、ピカリとね?」
「すっげー!流石パイセン!」
本当だよ。早送りのフイルム見たいにあっという間に生米からこうべを垂れる稲穂かな、だよ。
種籾じゃなくても出来るもんなあ、流石に神獣。
「そうやって餅米をさらして砕いて乾燥したものがこちらになります。」
テレビの料理番組みたいにあらかじめ用意したものを見せる。
「本当はね、明日作って持っていこうと思ったんだけど。
今日アキ姫さまと王妃様がいらっしゃるなら丁度いいわ。」
明日のフロル王子様達の誕生日、誰が顔を出すのだろう。
怖い。
王妃様はともかくとして。千歳飴をカレーヌ様が何も知らずに届けたとして。
そこにアキ姫さまがいて鉢合わせだととても不味い。
というか、もうアキ姫さまはそちらに顔をしばらく出さないかも知れない。
カレーヌ様は悪くないけど、ちょっとだけ出禁になるかもしれない。
うわあ。ヤダヤダ。
「餡子は出来ました。」
「ありがとう、ラーラさん。明日用に仕込んでたのが間に合って良かった。」
寝かせる暇はないが仕方ない。
「イカの皮を剥くの?」
母が覗き込む。
「そう、そしてね、隠し包丁を入れるのよ。」
「アニサキス対策ダネ。」
流石龍太郎君、詳しい。
「学校の先生ガアニサキスで苦しんダコトアルンだよ。胃に二匹刺さるようにイタッテサ。」
「あら、龍太郎ちゃんの粉をかけるか、ウロコ水につければ?」
「うーん、ナーイスですねえ!オッカサン。」
長嶋さんのマネ?
とりあえずウロコ水に浸けて引き上げる。
ヨシ。
「目視シテモアニサキスハ無さそうだよ。」
お造りにしていく。
ゲソとかエンペラは取っておいて唐揚げだ。
この薄皮を剥ぐ時ね、古いイカだとなかなか剥げないのよ。
「オウ、模様が動イテイル。今この足を醤油につけたら、クルンと動く?」
「多分。」
少し味見をする龍太郎君だ。
「ホントだ。動くよ!」
私も唐津の店で足が動くイカを見て驚愕したものである。
小学生の時だったかなあ?
さあ、天ぷらだ、天つゆも用意して。大根おろしとおろし生姜もね。
味噌汁にサラダも付ける。
梅ヶ枝餅もどきは焼き始めた。フライパンで焼く。
「ジャア、メリイを呼んでクル。」
龍太郎君は飛び出して行った。
入れ替わりにアンちゃんが帰ってきた。
「ふう、一応片がついたよ。」
疲れている、物凄く疲れている。
詳しい話が聞きたいが、
「まもなく王妃様とアキ姫さまがここに来られるんだろう?」
「良く知ってるね?」
「ハンゾーが教えに来た。龍の字がイカを持ち込んでお食事会をしたいと言ったんだろ?
まあ、それで解散になったようなものさ。」
「へええ。」
「それでね、入国の所へリード様が王妃様をお迎えに行かれた。いそいそとね。
ははうえー!とお食事を取るんだって。
そのあとアキ姫さまをお迎えに学園の寮に行かれて合流すると。」
うわっ、追加しなきゃ。イカの皮を多めに剥いといて良かった。
後はポテトも揚げておこう。イモがお好きな王子様が来る。
「おほほほ!レイカ来たわよ!イカ刺身に天ぷらだって?」
「やあ、レイカさん。母上がお好きな日本酒も持参したよ。混ぜてくれるかな?」
「お招きありがとうございます。」
アキ姫さま。少し目が赤いです。
あー、レプトンさんのこと聞いたのねえ。
そこに龍太郎君がメリイさんを連れて来た。
「こんにちは。レイカさん。まあ!リード様に王妃様。アキ姫さまも!」
「おほほは。メリイさん。イカ刺し定食よっ!」
「リード様。ポテトフライもお出ししますよ。」
「最高だねっ、ビールあるかい?アンディ、付き合いたまえよ。」
「私で良ければ。」
いきなり和気藹々である。
「生のイカに抵抗があったら無理なさらないで、アキ姫さま。」
「いえ、コリコリして美味しいです。」
「ねえ、お酒がすすむでしょ。いやーなことは呑んで忘れなさい!ねっ、男は他にもいるわよっ!」
「ううう。王妃様。」
半泣きになってもその手は止まらないアキ姫さまだ。
「悲しくても食べものは、美味しいですわー!」
いいことである。
「アキ姫さま。こちらは梅ヶ枝餅を再現したものです。食後にどうぞ。」
「まああ、これが?」
「あら、懐かしいわ。私も好きだったわ。」
「王妃様。私もです。さだ○さしさんの歌で有名ですよね。」
「ソウダヨ。キミがひとつ食べたのはイイけど、僕が半分食べた残りはドコへ?ってヤツだろ。」
「捨て去るときには遠くへ放り投げたんでしょ。できるだけ。そして池のなかに落ちてコイが食べたんじゃない?」
王妃様。別の歌が混じっています。
「メリイ。オレが浄化したから刺身食べてイイんじゃ?コリコリして甘いよ。」
「うん。ご飯と食べると美味しい。」
(※妊婦のナマモノの摂取は別世界ということと、神獣のチェックの上行われております。)
「天ぷらの衣がサクサク!美味しいわ!」
「これは片栗粉と全卵で揚げてます。」
「リード、あなた刺身大丈夫なの?」
「ええ、母上。美味しいですよ。なあ、アンディ。」
「そうです。生臭くなくて美味しい。」
「ダロ?だろ?オイラが獲ってきたバッカリダモン。新鮮さア。」
「ねえ、龍太郎。どうやって取ったの?」
「掴み取りだよ!夜ネ、目から出した光で集めて。
ザバリとね!生きたまま運んでキタヨ!」
すげえ。1人イカ釣り漁船かあ。
「ネエ。アキ姫さま、イカの天ぷら食べタイって言ってタジャン。」
「まあ!龍太郎様!私の為に!」
「ン。ウチのレプトンサンが迷惑カケタだろ?」
頭を掻く龍太郎君だ。
「まあ、龍太郎君。」
王妃様が口を手でおおう。
「キミが気を使うことないよ。勝手に根回しした私が悪かったんだよ。」
「リードサン。」
そして、美しきリード様はアキ姫さまに向き直る。
「申し訳なかった。ご迷惑をかけた。」
「リード様が謝ることでも、ありませんわ。
ああ!このお酒も天ぷらも美味しい!おかわりくださいな!」
「はいはい!ただいま!」
ショコラさんが天ぷらを山盛り持ってくる。
「人が心に思ウコトは誰にも止められないもんナア。」
龍太郎君。それは居酒屋○治。
健さん好きだったんだねえ。
先日コスト○に行きましたらね、イカが安くなってたんです。夕方だったから
半額で。
お造りにして、後は揚げました。美味しかったです。
アニサキスは大学の同期の人が苦しんだと聞いたことがあります。教授に胃に二匹刺さってました!と、熱弁してました。
そしてさだまさしさんネタですね。レコード持ってました。




