恋に落ちて?
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「ところで、サード君。もうしばらくこちらにいるのかい?」
リード様がお尋ねになった。
あの騒動が月曜日だったから今日の日曜日でもう一週間だな。
「はい、つい居心地が良くて。」
「なるほどねえ。ウチの従姉妹姫がご迷惑をおかけしたね。」
軽くため息をつくリード様。
心身共に疲れたところに、愛する母や妹や、ついでに弟に囲まれてホッとしていたのだろう。
「いえ、そんな。」
アンちゃんが薄く口角を上げている。
エリーフラワー様とヴィヴィアンナ様がそっと目線を合わせてる。
なるほど。リード様はサードさんがいると、レプトンさんとアキ姫さまとの縁談を進めにくいと思ってらっしゃるのだな。
「では、リーリエいるか?」
「は、御前に。」
すっとセクシーなクノイチが出てきた。
いたのかあ。
今日は侍女の格好だぞ。
「キミ、先にあちらに帰りたまえ。サード君。女性チームの仕事の手配をリーリエに伝えておいたらどうだい?」
「ああ、そうですね。一応臨時の休みという事にしておりました。」
「サード様。残りの三人の女性はあのルルゥにいじめられて、退職届を書く所まで追い詰められていたのですよ。」
「えっ。」
リーリエさんの言葉に驚くサードさん。
「一応私が預かっております。」
豊かな胸元からすっ、と書類を三通出すリーリエさん。そんなとこに隠しポケットが?
巨乳で温められてホカホカになってる退職届。微妙である。
それを受けとるサードさんの顔は赤い。
「秀吉が信長のゾウリをアッタメテいたようモンかな?」
「龍太郎、ちょっと違う。」
「で、でも、ルルゥ姫がいなくなったから戻って来てくれるよな?」
無言で頭をかしげるリーリエさん。
「ご自身で御説得なさいませ。」
「アニキ、とりあえず戻ったら?」
「そうよ、サード兄さん。」
私もそう思う。
「え、レプトンにメリイ?」
「だって、仕事だろ?あまり放り出すと良くないよ。
また、ちょくちょく来ればいいじゃないか。」
「あ、うん。そうだな。」
ちょっと可哀想な気がするが。サードさんはさっきからアキ姫さまを見ているんだよねえ。ずっと。
面倒な予感がするよ。
「さて、レプトンくぅん?アキ姫さまは寮に戻られるそうだ。キミ、送り届けてあげたまえ。」
「はっ。」
「えっ。」
サードさんは弾かれたように立ち尽くす。
「明日も学校の仕事があるのに、引き留めてしまったね。」
リード様がドアを開けて促す。
「アキ姫さま。今度ウチにいらして下さいね。お餅を作ってご馳走しますわ。あんこをいれてね?」
見送る私。
「ありがとうございます。」
アキ姫さまは顔いっぱいの笑顔で笑った。
彼女の笑顔はほっこりするなあ。素朴で。
邪気がなくて。
それを見ているレプトンさんの顔もほころぶ。
良い感じじゃないか。
ん?サードさんも赤くなってるぞ。
二人が去って何とも言えない雰囲気が流れる。
「あの?もしかしてアキ姫さまと、レプトンは?」
「ふっ。」
リード様は目を閉じて口元だけで笑われた。
そして目を開けて、上目遣いでじっとサードさんを見つめられた。
指をおでこにあてながらね。
芝居がかってるけど、嫌になるほど絵になるお方だ。
「まあね。これはね。アアシュラ様からのご希望なのさ。
アキ姫さまをレプトン君に嫁がせたい、とね。」
「 ! 」
「ああ、やっぱりそうなんですね。」
「ダト思ったヨ。いいんじゃナイカ?」
「これから正式に私からレプトン君に話すつもりだったんだよ。」
「ふふふ。私も二人の交流を増やしていたのですわ。」
「リード様、ヴィヴィアンナ様。そうでしたか。」
おや、がっくりと肩を落とすサードさん。
「アアシュラ様はね、アキ姫さまを平和なここ、ブルーウォーターに嫁がせたいと、お思いなんだ。」
「ああ、はい。」
まあ、そんなに刺客が来ればねえ。
「うん、私がミッドランド家に話を持っていけば断れないだろう?なるべくそういうことはしたくなくってね。でもどうも、上手くいきそうじゃないか。」
「はあ。」
「サード兄さん?アキ姫さまが気にいったの?」
「彼女は人をホッとさせるよね。」
「まあ、そうだけど。」
「ルルゥ姫もそうだが、若い女性はグイグイと押してきて苦手でね。元々いるおばさま世代は大丈夫なんだが。」
「そういえば、ベテラン女性社員に可愛がってもらってましたね。」
アンちゃんが薄く笑う。
彼女らの余計なアドバイスで、カレーヌ様に面倒くさいアタックをしてたんだよねえ、この方。
「アキ姫さまは、なんか温かい感じがします。怖くない。」
「肝っ玉母さんっぽいですものね。」
エリーフラワー様も薄く笑う。
「ま、彼女の事は諦めたまえ。彼女はここで音楽教師をやっている。
わざわざ来てもらったんだ。
それに、ブルーウォーターに住むことは必須だ。
カレーヌの時みたいに仕事を辞めろ、グランディに来いなんて口が裂けても言えないんだよ。」
リード様の言葉は重い。
「…そうですね。」
サードさんの声には元気がなかった。
小林明子さんですね。「恋に落ちて falling love」




