仲良きことは美しい。
さて、これからどうするのか。
「今から母上に報告に行く。アンディ、付き合え。」
「ハイ、アラン様♡その後一杯やりましょうネ。」
アラン様は立ち去りかけたが、
「……それから、リード。」
向き直ってリード様に声をかけられた。
「何ですか?兄上。」
あら?アラン様が少し赤くなっている?
「……お、おまえが私を守ってくれるとは、思わなかった。あの緑色の光に包まれて安心したんだ。」
リード様は目を丸くして、大輪の花の様な笑みを浮かべられた。
「何をおっしゃいますか、兄上。当たり前じゃないですか。」
「……そうか、当たり前か。」
「ええ。」
美貌の王子様の笑みはまったく屈託がなかった。
「私には、出来なかったかもしれない。」
「アラン様。」
アンちゃんが眉尻を下げる。
「当然ですよ、兄上は王になる御方なんだ。かけがえのない人なんですよ。」
「……かなわないな、お前には。」
軽くため息をつくアラン様。
大人の男の色気が駄々漏れである。
「お前の子供になら、アンディの子供を任せられるよな。
私が名づけ親なんだ。知ってるだろう?よろしくな。」
はい?何ですと!
「ええ!ありがとう兄上!」
ぱあっと明るい顔になるリード様。
コラ。勝手に話を進めるなっ。
顔が引き攣る私。
あら?みんなして私を見てるよ。
「レイカさんはどう思う?」
アラン様、それ、聞く?
やべえ。アンちゃんはきっとアラン様には逆らえないぞ。
コラア!目をそらすなよ、アンちゃん!
「ほほほ、それは。本人に任せることにしてますの。」
仕方ない、釘を刺すか。
勇気を振り絞る。
「けれども先程王妃様はエリーフラワー様のお子様の方が良いかも…と。
(その後、フロル王子様の美貌にコロリといくかも、と言う話になったのはカット。)
王子様のお相手は荷が重いことも、ございますので、その辺のことをご心配をなさって下さってるのか、と。」
ヨシヨシヨシ!言い切ったぞ。怖かったけどな!
「「母上が?そうか。」」
流石にマザコンの二人だ。
あっさり納得したなあ。
「まだまだ子供だからな、いや、こちらも先走り過ぎた。すまないね、レイカさん。」
「そんな。」
王太子様に謝られると寿命が縮みますよっ。
「そうだね。ま、ウチの子は私やヴィーに似て美しいからね。きっと、恋に落ちてくれると思うよ。」
リード様、相変わらずナルシストな発言ですが、その通りかも知れません。
「うん、じゃあ行こうか、アンディ。」
「はっ。」
そしてアンちゃんと一緒にさっきの馬車で戻っていかれた。
バサバサ!
おや、龍太郎君がサードさんの前に降りて来た。
「ネエ、サードサン。メリイのトコロに行くンダロ?
ホナ、いきまひょ、いきまひょ。」
なんで、なんちゃって京都弁を使ってるんだ、龍太郎君。
でももう、元の龍太郎君だな。
(平仮名も使ってるし。)
サードさんを乗せて龍太郎君が飛び立とうとする。
「アッソウダ。リードサンも送ろうカ?俺に乗ってミル?」
「えええっ。良いのかい。龍太郎君。嬉しいよ。」
……そして、リード様とサードさんは、タンデムで帰る事になった。
「わ、私が後ろに乗りますから。」
「そうかい?すまないね?」
「リードサン。俺の首ネッコにつかまって。サードサンはホラ、ココノウロコを立てたから、ココに足を乗せテ、ココノウロコを掴ンで、ソウ。」
「こ、こうかい?」
「フフ、私の背中につかまってもいいよ。サードくん。」
「いいえええ!滅相もありません。」
顔色を青くしたサードさんを乗せて龍太郎君は飛んでいった。
「これは!爽快だねえ!」
リード様の楽しげな声が聞こえてくる。
流石だな、あの人。何でも楽しめるんだよな。
前向きで宜しい。
ネモさんが私を見て微笑む。
「じゃあレイカさん。お送りしますよ。おいで!ミノちゃああん!」
ネモさんが呼ぶと、とたんに人力?車を引いたミノちゃんが現れた。
「アネダン、ごにぢわ、だす。」
「ええ、こんにちは。ミノちゃん。宜しくね。」
「護衛に私が付き添いますよ。ハイヨー!」
ネモさんが白馬のアオに乗ってやってきた。
あれ?行きはキューちゃんに乗ってきたよね?
アオちゃんはどこから?
「呼んだら来ました。キューちゃんは忙しそうですから。ハハハ。」
……そうっすか。
横を走って付いてきてるのはヤマシロ君とリーリエさんだ。すげえ。
ピュンピュンと飛ぶように駆けてるよ。
「彼らは鍛えてますねえ。」
感心するネモさん。
ええ、ナ○トのアニメを見てるようです。
そうこうしてるうちに帰宅した。
「では姉さん。私は息子に会って来ます。」
「ええ、リーリエさんありがとう。ヤマシロ君、シンゴ君に会って行く?」
「あ、そうですね。色々と報告しますよ。」
「ネモさんもありがとうございました。」
「いいえ、レイカさん。ウチのマーズがお世話になってるじゃないですか。
これからも愚弟を宜しくお願いしますね。」
「アッハイ。」
そこで真顔になるネモさん。
「先程ね、リード様とアラン様が仲良くなさっていて安心しました。」
「そうですね。」
あの二人の微妙な関係が少しは改善されてると良いのだが。
ランとの縁談はともかくとして。
「……どこも兄弟仲良く、と行きたいですよね。」
そしてネモさんはアオに乗って去っていった。
ああ、なんか疲れる一日だったなあ。
「レイカ義母さん、お疲れ様でした。」
ラーラさんが声をかけてくれる。
「うん。」
横目で見るとシンゴ君とヤマシロ君が難しい顔をして話している。
報連相は大事だよね。
色々なことがあった。ホントに。
ただ木彫りの職人の話をしに行っただけなのに。
精魂尽き果てて、泥の様に眠った私だった。
武者小路実篤ですね。




