あなたがわたしにくれたもの。いえ、くれる予定のもの。
さて、サマンサちゃんはうちの遠縁である。
戦で身内を亡くしたからウチの父母が親代わりというか、保護者の位置である。
なので、
「新居の改築が完成しました。どうぞ。」
と、マーズさんに内覧に呼ばれるわけである。
「ねえ、お嫁入り道具は何を持たせればいいかしら。おウチをみたら、家具を今度買いに行きましょうね?」
と母が言えば、
「ああ、請求書は私にまわしてください。」
と、アンちゃんが気をまわす。
父と母は引退してこちらで手伝いをしてアンちゃんからお給金をいただいているのである。
「しかし、それでは。」
遠慮する父。
「お父さん、私が出すわよ。温泉饅頭やカップ麺の売り上げや、松子ちゃんグッズ、子供の水遊びグッズの売り上げも貰ってるから。」
「あ、えーと、そうか?」ホッとする父。
「いえいえ。」
マーズさんが、顔の前で手を振る。
「身ひとつで来てくださいよ。こちらで用意しますから。」
「しかし、それでは。」
何となく様式美の押し問答が続く。
ああ、ここで
「どうぞ、どうぞ!」
とダチョウ倶楽○の往年のギャグで締めくくりたい。
「あ、うん。じゃあ新居のものはみんなマーズさん持ちで、サマンサちゃんの服飾品やら化粧品とかさ、そう言う普段使いのものをこちらが買うってことで。
鍋とかフライパンとかね。
あとはなんか新居に飾るものを贈ればいいと思う。
ね、お祝いになんか欲しいものある?
遠慮せずに言ってね?」
はい、まとめに入ります。手鍋下げても、って言い回しもあったなあ。
「ええ、良いんですか?では私はシャケを咥えた熊さんの木像が欲しいです!エリーフラワー研究所の玄関にあるやつ。
レイカさんなら手配出来ますよね?」
「ぶっとびー!!」
平野○ラになる私。
「……失礼、ホホホ。何故あんなもの、いえ、王妃様好みのものを。」
「熊さんが強そうでステキです。」
目を輝かせるサマンサちゃん。
「ほほう!ほうほうー!」
「レイカちゃん、フクロウになってるけど。」
「あ、うん。ドラゴンボー○を持った龍太郎君の方が良くない?」
「あ、それも欲しいです。私、木彫りの物が好きなんですよ。」
「ああ、こないだ動物園のお土産コーナーで、一刀彫りのワシを見てタワね。」
あれか。太宰府のウソに似ていると思ったやつね。
山形にも似た奴があるなあ。お鷹ポッポとかいう。
そういうのが好きなのか。
「え、そうなの?それじゃ熊さんをキミの護衛につけましょうか。
首にリングの模様があるやつ。」
にこやかに微笑むマーズさん。
わあ。リン○マかい。
「それってセバスを食った奴じゃあないでしょうねえ?」
アンちゃんが苦笑する。
「あ、違います。私が小熊の時から育てたんですよ。
親が育児放棄しましてね。」
「ああ、あの子。マーズさんの後をヨチヨチと歩いてついて行ってたなあ。動物園で。ぬいぐるみみたいだったよ。もうデカいけどネ。」
アンちゃんが微笑む。
それってまるでピースちゃんみたいじゃないか。
想像しただけで激可愛いぞ!
「名前は、クマすけと言います。今度ご紹介しますね。」
新井○子さんのぬいぐるみみたいだなあ。
さてさて。
「こほん。では今度王妃様にどこで入手したか伺って見ますわ。職人をご紹介してくださるように。」
「ねえ、能面は要らない?セットでお付けしますワ。」
アンちゃん、バリューセットじゃないんだから。
おふざけも、いいかげんに。
「あー、チョットアレは怖いかも。」
「ハハハ。ウチには護衛が潜む覗き穴は要りませんよ。
スネちゃま達が潜んでくれますからね。」
それで私は王妃様にお手紙を書いたのだった。
アンちゃんがニヤリと笑って届けてくれたよ。
こう言うときに王家の影が、夫だと便利だよね。
王妃様が面会を快諾してくださったので、アンちゃんと会いに行く。
王妃様の私室に通される。懐かしいなあ。
ここで料理を作ったりしたもんだ。
おやあ。壁に能面が飾ってあるぞ。
バシバシ視線を感じるぞ!誰が潜んでるのかな?
「レイカから来てくれるなんて嬉しいわ。もうすっかり元気そうね。」
「お会いしていただき光栄でございます。コンドラ本舗のお菓子をお持ちいたしました。」
「やあ、アンディも元気そうだな。」
「アラン様♡も」
何故かアラン様も同席されていた。
そこで毒味付きのティータイム。
あら、ヤマシロくんにロイドくんじゃないの。
二人に軽く会釈された。
そして、例の件を切り出された。
「ほほほ。木彫りのクマと龍太郎君の置物が欲しいのね。職人を紹介するわ。」
「母上。ネモ公の弟君の結婚祝いでしょう。こちらから贈る事にしては?」
「ああら、ダメよ。贈り物は別に選びたいわ。マーズだって私の元侍従。スペッシャルなお祝いを用意したいわよ。」
スペシャルをわざわざスペッシャルと、強めにおっしゃる王妃様。
気合いが入りすぎていて怖いですぅ。
とりあえず木彫りの職人を紹介してもらう事にした。
「もう、隣りの部屋に控えていてよ。」
「アンディ私が紹介しよう。レイカさんは母上のお相手を頼む。
アンディ、その後一杯どうだ?ゆっくりしていけるんだろ?」
「ハイ♡アラン様。」
相変わらず仲良しである。
アンちゃんは王太子アラン様に連れられて退席した。
「ほほほ。この後アンディはアランのお酒に付き合って、泊まりになると思うわよ。」
「アッハイ。」
「レイカさん、帰りは俺らがお送りしますんで。」
ヤマシロ君が頭を下げる。
「あのね、アランはね、アンディの子がリードの子と婚約しそうだから寂しいのよ。」
「いやいやいや、まだまだ決まっておりませんよ。」
もう。微妙な兄弟関係に巻き込まないでよっ。
「そうねえ、エリーフラワーのサファイア君の方が良いと思うけど。」
「どっちかというと、私もそう思います。」
政治的に面倒くさいのは嫌。
「だけど、リードやヴィヴィアンナの子供が、本気を出して口説いてきたら、落ちない子っているかしら?」
それはそう思う。
「さて、マーズへの結婚祝いは何にしようかしら♡」
……常識の範囲内でお願い致します。
ジッタジン・リンだっけ?の「プレゼント」って歌ありましたよね。
あっジッタリン・ジンでしたね。
ご指摘ありがとうございます。




