渦中にいると気がつかないものなのか。
誤字報告ありがとうございました
次の日。レプトンさんが尋ねて来た。
「レイカさん。もし今日お暇が、ございましたら、リード様のお家でお子様達を遊ばせませんか?との事です。」
いきなりだなあ。
「はい?それは構いませんが?」
「ええと、あんまりヴィヴィアンナ様は外出できませんが、親友のレイカさんがお子さん連れで遊びに来られる、というのはアリなんです。」
奥歯にモノを挟みまくるレプトンさん。
まだご懐妊のことは言えないんです、察してね。何ですね。
「是非行きます!」
ヴィヴィアンナ様に会えるのは嬉しいよ。
「おともします。わざわざレプトンさんが公宮から仕事の合間に来てくれたんだ。是非お邪魔します。」
影の様にアンちゃんが忍び寄ってきた。
ランとアスカを連れて訪問する。
「レイカさんとお子様達、アンディ様をお連れしました。」
レプトンさんが奥へ連れて行ってくれる。
グルルッ。
あら、ホワイトタイガーの虎子ちゃんじゃないの。
ドアの前で護衛してるのね、えらーい。
「まあ久しぶりね♡」
ビッグキャットにうっとりのアンちゃんだ。
うるさいのが来たなみたいな顔でのそりと、どいてくれる。
「どうじょ、どうぞ!」
ドアを開けてくれるのは、フロル王子様だ。
「ランちゃん!」
ランを見るとぱあっと笑顔になられる。
うわあ。相変わらず可愛い。
「ははうえー!ランちゃんがきたよ。」
「うわあ。今のははうえー!という言い方リード様そっくりだな。」
アンちゃんが顔を強張らせる。
ええ、私もそう思う。
きっと立派なマザコンにおなりになるであろう。
中からははうえー!ことヴィヴィアンナ様が姿を現された。
「どうぞ、お入り下さいな。」
広い応接室に誘われる。
あら、そこにいたのは?
「アキ姫様。お久しぶりです。」
「レイカさん、その後体調はいかがですか?あの時倒れられて。びっくりしました。」
心配そうな顔をなさるアキ姫様だ。
「なんかすみません、ご迷惑とご心配をおかけしました。」
とりあえず頭を下げる。
しかし何故こちらに?
「アアシュラ様からのお見舞いを持って来てくださったのです。」
ああ。なるほど。ツワリでもこれなら飲めるとかかあ。
並べられた各種ジュースの瓶を見る。
「レプトンさん、これからリード様の所へ戻るのでしょう?
途中アキ姫様を学園にお送りして。
アキ姫様、今日はありがとうございました。」
花のように微笑まれるヴィヴィアンナ様だ。
「は、はい♡」
アキ姫様も彼女の熱烈なファンだからな。
アンちゃんが何か言いたげな目で見ている。
二人が出ていったらヴィヴィアンナ様は肩からチカラを抜いた。
「ふうっ、私が出来るのはここまでです。」
「アアシュラ様から頼まれたのですか?レプトンさんとアキ姫様の仲を取りもてと?」
「ふふ。アアシュラ様はリード様の側近のレプトンさんが独身だと聞いて、目をつけられたのですわ。」
えっ。
「それは。せっかく王妃様とリード様が女官達を選ぶ前におっしゃってくだされば良かったですな。」
私もそう思う。レプトンさんモテモテ?
「アアシュラ様はそんな事はご存じありませんからね。ただ、無理矢理縁談を持ち込めば断れませんでしょう?」
そうだよね、大国の姫だ。
「とりあえず交流を持たせて相性をみたいとのお考えです。
それで今日は急にですが会わせて見ました。」
なるほど。知らぬはレプトンさんばかりなり。
「あの三人の女官との交流はどうなんですか?」
アンちゃん、まるでお雛様の三人官女みたいな言い方だ。
「うーん、実は彼女たちはその気のようですよ。
何といってもレプトンさんは妹さんがいるからか、自然体で女性に優しい。見かけも良いですからね。
リード様も彼を頼りにしていますし。」
私達の前にミックスジュースが運ばれてくる。
「マナカ国産です。美味しいですよ。」
あら、本当。昔デパートで良く飲んだわ。
ああ、懐かしいお子様ランチにクリームソーダよ。
舌鼓を打つ私。
子供達にも振る舞われている。
ランやアスカも、ニコニコしてるよ。
「でも、レプトンさんはその気は無いんですね?」
アンちゃんもジュースを飲みながら問いかける。
「ええ、あの三人には仕事仲間として接しています。
だけど彼女達からの申し出で、食事を一緒にしたりしてるようですよ。」
なるほど。
「問題はレプトンさんはカレーヌ様をあきらめてない事ですな。」
「そうですね。私としてもカレーヌ様もお友達ですから、彼女をレプトンさんが選ぶのでしたら、幾らでもアアシュラ様に頭を下げますわ。」
まあ、そんな。ヴィヴィアンナ様にご負担が。
「でもね、カレーヌ様にその気は無いですよね。」
私の言葉に、
「ですわね、そのうちレプトンさんには正式に縁談の打診があるでしょう。」
頷くヴィヴィアンナ様。
ん?大事な事を忘れてないか?
「アキ姫様のお気持ちは?」
それが一番大事。
「アアシュラ様が話を振ってみたら嫌では無かった様です。」
ヴィヴィアンナ様はにこやかに微笑んで、そして真顔になられた。
「あの方は大国の姫。いずれどこか国益があるところに嫁がされたはずです。
その覚悟はずっとおありでした。ブルーウォーターでの音楽教師は嫁ぐまでのせめてもの息抜きに、とアアシュラ様はお考えでした。」
「なるほど。」
「だけどもここは平和な国。アアシュラ様は次女のアキ姫様をとても可愛がっておられる。
こちらにご縁があればとお考えになったようなのです。」
アンちゃんが頷く。
「水面下でマーズ様に打診があったのを聞いております。でもその時にはラーラやサマンサに夢中でしたからね。
ネモさんはマーズさん本人に伝えることはしなかった。」
ええ、と美しい眉を寄せてヴィヴィアンナ様は続ける。
「ネモ様はあのように人智を超えた力を持つお方。
アアシュラ様もゴリ押しは出来ませんでしたよ。」
なるほどなあ。目のはしで遊ぶ子供達を見ながら考えこむ私。
「それでこれからもレプトンさんを使ってこちらにお呼びします。子供達の交流にね?
何しろツワリで動けない私なのですから。」
ヴィヴィアンナ様の言葉に、
「なるほどねえ。偶然そこにアキ姫様がいらっしゃる訳ですかあ。」
とアンちゃんが笑う。
「ねえ、レイカちゃん。」
「何?」
「キミもアキ姫様もヴィヴィアンナ様が大好きでしょう?
呼ばれたらすぐ来ちゃうよねえ?」
「ウン。」
キッパリとお答えする私。
「ハハハハハハ!」
アンちゃんは高笑いだ。
「ごめんなさいね、レイカさん。二人の相性を見極めるまではね?
巻き込まれて下さいな。
アアシュラ様への言い訳にもなりますし。」
手をそっと握られた。
ドキリ。胸が高鳴る。
「アッハイ。私はただ子供達を遊ばせにきた。それでいいんですよね?」
「ええ。」
帰り際、
「ヴィヴィアンナ様も大変だな。身重なのにさ。」
アンちゃんがポツリと言う。
「うん。」
「でもね、あとはランとフロル王子様との交流を深める意図もおありだよ。
気がついてなかったでしょ。」
「ええっ!」
アンちゃんは真面目な顔をして、
「あーあ、ランはフロル王子か、サファイア君のどっちを選ぶのかな。
ほかに選択肢はもう無いのかなア。」
とポツンとつぶやいた。
そして、
「ま、どっちにしろ良縁には違いないがね。」
軽くため息をついて続けるのだった。




