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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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すごく愛して、ながーく愛して。家族として友人として。

 その時、ヤー・シチさんとオー・ギンさんがドアを蹴破る勢いで入って来た。

「アンディ、今のはなんだ!何があった!」

「い、イイエ。ちょっとした恥ずかしい話を……と、言うかなんというか。」


赤くなって俯いて、「のの字」をエアーで書いてるアンちゃん。

側から見るとトンボを採ろうとする人のようだ。

実際トンボはアレで目を回すのかなあ?



「はあ?それよりレイカさん、気が付いたんだね。」

「はい、ご心配をおかけしました。」


「まったくよう!」


その時、開いているドアから、

金色の弾丸のように金髪を振り乱して入ってきたのは。

「カレーヌ様?」 


グイグイギュー!


チカラいっぱい抱きついてくる。

「く、苦しいっ。」

「あっ、俺でさえ我慢して抱きついてなかったのに。

カレーヌ様、レイカは高熱を出してたんですから!」


「うわあん、レイカ。私をこんなに心配させてっ。踊ってる貴女を横から見てて、気が気じゃなかったわ!

時々白眼を剥いて、一心不乱に無表情で踊ってると思ったら泣いてるし。

倒れるし!妙に金色のモヤに包まれてたし!」


カレーヌ様にも見えたのか。


「貴女に、何かあったら、どうしようかと。

うっうっ。私にはお友達が少ないのよ!

貴女が居なくなったらロンリネスな私なのよ!」


アンちゃん、オー・ギンさん。

困ったように顔を見合わせないで。

否定してあげて。

カレーヌ様が星屑ロンリネス(byタッチ)になってしまうわよ。



「レイカ!」

今度は母だ。

「大丈夫なの?もう?まったくこの子は!」

半泣きだ。


ああ、この人も私の母なんだ。

つい前世に引きずられてしまってたけども。

「貴女にも色んな事情があるのはわかってる。でもね?もっと私に頼りなさいよっ!」

自分の胸をドン、と叩く母。

「お母さん。いつも助けてもらってるじゃないの。家事とか育児とか。」


横に首を振る母。


「レイカ。貴女は五歳の時、前世の記憶を取り戻してから急に大人びてしまったわ。」


それは、そうだ。

その時から59歳の記憶と分別と共に生きてきた。

母はまだ二十代だったのだし。

お母さんと言うよりお姉さんという感じだった。

何しろ天真爛漫なキャラだし。


今でもきっと私は、王妃様と1番精神年齢が近い。


「貴女の母はこのわ、た、し!私なのよっ!

前世の幻の母には負けないわ!」


すとん。


何か胸に落ちた感じがした。


「お、お母さん?」

「そう!」

「お母さん…」

「レイカっ!」


ぎゅうぎゅうギュー!


「ああっ、御義母さん、そんなチカラまかせに。」

「ほら、アンディ出るわよ!二人にさせてあげましょう!

ふん。夫だからって威張るんじゃないわよっ。」

「か、カレーヌ様?それは?ええと?

私が夫なのは間違いないんですから?」


何、このマウント合戦。


「いいから!レイカのお母さんは、前世のレイカの母よりも今、ここにいる私に頼って、安心してって、言ってるの!母と言う存在の上書き中なのよ!」


「ワタシだって!前世の夫には負けないわああー!

上書き!上書きーい!

カレーヌ様っ、離して下さい〜!」

アンちゃんの悲鳴が遠ざかっていく。


いつのまにかオー・ギンさん達もいなかった。


泣きじゃくる母を見る。

そうか。私はこの人の娘なんだった。


お母さんごめん。池に落ちるまでの、何も知らない幼児の私には戻れないけど。

それまで貴女をただひとりの母だとして慕っていた。


だけどさっきから、ひょっこりと。

小さい頃の私がムクムクとこの身体に満ちてくるのを感じている。


う、ひっく。

何故。私は子供みたいに泣きじゃくりたいの?

ああ、口が勝手に動く。涙も出る。


「うわあん、おかあさああーん、こわかったの!となりのカスティンがわたしをつきおとして!

くるしかった!」


そうか、その死の恐怖で大人の私が顔を出したのか。


「大丈夫!だいじょうぶよ、レイカ。もうあの馬鹿タレはいないから、ねっ!」


「うん。ああーん。」


「やっと、怖いって言えたのね、だって貴女あの時、気がついたら、

『大丈夫です。だけどアイツには厳罰を望みます。とりあえず接近禁止で!

いくら好きな子をイジメたい幼児とはいえ、行き過ぎです。』って言ったんだもの。

『それに私は転生者です。』って。

びっくりしたわあ。」


それは、びっくりしたろう。



「そのうち王妃様が転生者って話が流れてきたから、半信半疑で。

ルリカだけはすぐに信じたみたいだけど。」

ルリカ姉か。ご先祖に転生者がいたと知っていた人だ。

みんなをコレ以上おどかさないように、前世の知識は出さないように努めたのだ。

それが解放されたのは王妃様との出会いとアンケートだ。

(読んでない人は「思いこんだら」を読んでね。)


「だんだん年齢と中身は釣り合ってきたみたいで良かったわね。お母さんも安心してきたの。」

「うん。」


そこで半刻ばかり母に抱きついて過ごした。


良いのだ。五歳の私と二十二歳の私が融合しようとしてるのだから。


そのあと父と娘たちに来てもらった。



「マミイイ。」

「おかしゃん。」

抱きついてくる娘たち。

ああ、いい匂いがする。

幼児特有の焼き菓子のような匂い。

(具合的には卵ボーロやカステラの様な匂いだ。)

胸の中があたたかくなる。


「ランちゃん!アスカちゃん!心配かけてごめんね、もうお母さん大丈夫だから。」

「そうね、レイカ。二日寝込んでたんだから。ゆっくりと身体を慣らしてね。スープはどう?」

ずっかり看病慣れしている母である。

あちこちの人の世話をしているからね。


所在なさげな父。

「お義父さん。」

アンちゃんが肩を叩いている。

「男親なんてそんなもんですよ。」

慰めているんだろうな。


「お父さんも子供達の世話ありがとうね。」

「あ、ああ。どうだ体調は。

会いたいって人が沢山いるが、まだお断りしていいんだよな?」

「うん。」

「カレーヌ様は強行突破してきましたけどネ。」

アンちゃんが苦笑する。 


本人は自覚ないかもしれないが、やはりアンちゃんはカレーヌ様に甘い。

そしてカレーヌ様はそれをわかっていて、隙をついて来たのだ。


バーン!扉が開く。


「そうですわよ!カレーヌ様だけ会うなんてズルい、ズルいですわあー!」


エリーフラワー様。お懐かしいセリフです。

昔グランディの王宮でもそう言って押しかけて来ませんでしたっけ。


「エリーフラワー様!?」


うん、アンちゃんは自覚してると思うが、エリーフラワー様には弱い。

そしてエリーフラワー様はそれをいつも最大限に利用しているのだ。


稀代の才女は私の手を取って目を潤ませた。

「ああ!気がついて良かったです!私にとって親友って呼べるのは貴女だけですもの!」


みんなが顔を見合わせる。そして頷く。

「そうですね。お友達は多くても親友と呼べるのはレイカさんだけでしょう。」


アンちゃん、言い切ったな。

タイトルは大原麗子さんのコマーシャルから。

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― 新着の感想 ―
少し、じゃなくてすごくなんですね。 肝っ玉母さんのお母様にしっかり甘えられてよかった。 子供に戻って泣くことができて。 それにしても、「夫としての上書き」がおかしい。 カレーヌ様の指摘がもっともなだけ…
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