夏の夜は色々あって、ふけていく。ほうら、ほらほら。
そうか。もしかしてこの子が例の学年首位で、ミルドルに突っかかってくる子かあ。
「あらら。フフ。やはり仲悪いの?でもまあ、レイカは出来た人だから気にしないわよ。」
「べ、別に仲が悪いわけでは。」
顔色を悪くして気まずそうだ。
「いつもコイツが一方的に突っかかって行ってるんです。レイカ様。」
「ザック!アンタも来てたの!」
「俺もオマエと同じ。稼がなくちゃいけないから。」
「…そうなの?」
「ここは学園の生徒だらけだよ。俺らは歌で動員されたけどな。」
リッキー達も来た。
「あらあら。お友達だらけなのね?
ふうん、ミルドル君の友達かあ。私は【コンドラ本舗】のカレーヌ。ウチのお菓子も宜しくね。」
「は、はい。」
「あの有名な!」
ふわりと微笑むカレーヌ様。
花の笑顔に赤くなる少年達。
…はは。この子たちは年上が好きだったな。
エメリンファンだものねえ。
バサバサバサ!
龍太郎君が私の肩に降りて来た。
「ヤア、カレーヌサン。今日も美人ダネ!ネ!ポテチある?」
「まあ、龍太郎様。もちろんですわよ。」
カレーヌ様が台の上のポテチを、ハミルトンさんから受け取って渡す。
「ンフフフ。空飛ぶオイシサ!ダモンネ。」
「ド、ドラゴン様!?」
固まるケイトちゃん。
「オヤ?新顔。」
カレーヌ様から渡されたポテチの袋を、細めた炎で器用に破って食べ始めた龍太郎君だ。
視線を彼女に止めてシゲシゲと見ている。
「ウチのバイトさんよ。ケイトちゃんと言うの。」
「ヘエエ。宜しく。昭和のアイドルみたいな子ダナ。
愛と誠の漫画も思い出スネ、早乙○愛のヘアスタイルのカワイコチャンじゃん。
うん、昭和テイストデイイネ。」
カワイコちゃんと言う言い方も古いよな。
褒めてるんだよね?
(セクハラにはならないか?神獣だものねえ。)
「尊き神獣様。お、お会い出来て光栄でございます。」
ケイトちゃんは震えてる。至近距離の龍太郎君は怖いかもねえ。
息がかかるくらい側にいるもん。
(岩○宏美のロマンスの歌詞みたいに。)
そこへ。
「あら、龍太郎ちゃん。相変わらず可愛いわねえ。」
底抜けに明るい声がした。
ウチの母がショコラさんと一緒に、子供達を連れて現れた。
「かわいー」「かこいい。」
ランとアスカもニコニコしている。
「オッカサン!それにランチャンとアスカチャン。」
おお龍太郎君に、ぱあっと満面の笑みが浮かぶ。飛びつく様に寄っていく。
「会イタカッタヨ!」
「あら、私もよ。ちょくちょく遊びにいらっしゃいよ。」
「ウン。」
母に頭を掻いてもらってご機嫌の龍太郎君だ。
だけどその手はポテチの袋を離さない。流石だね。
「…いつみても、すげえ。」
「ミルドルのおばあちゃんって最強?」
「ああ。」
感心する少年達。更に固まるケイトちゃん。
そこにハイド君が走ってくる。
「もう。龍ちゃん。勝手に飛んで行くんだから。
カレーヌ様、すみません。お代をお支払いしますよ。」
「やだ、とんでもないわ。お供えさせて下さいな。ねっ、龍太郎様。」
「ウン、ゴチになるよ。バリボリ。ウメエッ。ウンウン、この味。タマンネエナッ。」
全くちゃっかりしてるなあ。
「ゴクン。そんなに美味いのか。」
あら、みんなの視線を釘付けだ。
「神獣様!うちのたこ焼きをどうぞ!」
「りんごアメはどうですか?」
「やっぱりここはステーキ串でしょう!」
あちこちから声がかかる。
宣伝になるもんなあ。
「ウワア。懐かしいリンゴアメだ!
ハイド、アレコレ買って、メリイへのお土産にシヨウゼ!キット喜ブヨ!」
「もお。龍ちゃんにはかなわないなあ。」
「ああ、レイカさん。ここにいたでござるな!
エリーフラワーと王妃様がそろそろ来てほしいそうでごわす。」
エドワード様が小走りでやって来た。
おや?後ろにいるのはミルドルだ。
見習い騎士の格好をしてるぞ。似合うな。
やはり若い時のランド兄に似てるなあ。
「あ、はーい、行きます。ミルドル今日は何してるの?一緒に歌うんじゃないの?」
「おお、ミルドルにはな、騎士の見習いとして一緒に警備してもらってるでごわす。
何、ボランティアですがな!」
「うわっ、俺もやりたかった。でもタダじゃなあ。」
ザックが呟く。
「こう見えてもミルドルは見込みがあるでござるよ。」
そうなのか。
「ウン、俺らの中では群を抜いてるんだ。いつもエドワード様との模擬試合の相手に選ばれてる。」
「ザック、キミもなかなか筋が良いでござる!すぐに追いつくと思うでごわすぞ。
おお、他にも学園の子供達が沢山いるですな!
みんなまだ一年生なのだからこれからでござるよ。」
エドワード様が少年達を見る目は優しい。
「はい!エドワード様。」
「頑張ります。」
「ミルドル、本当にランドみたい。」
母がポツリという。
「うむ。ランド君は以前第三騎士団でごわしたな。」
「おばあちゃん、どう?似合う。」
「…ええ。」
母は複雑そうだ。騎士になるより領地を継いで欲しいんだものね。
でもね、ランド兄も今やネコカフェとレストランの事務員。そしてメアリアンさんの占い師としてのマネージャー兼護衛だ。世の中どうなるかわからんね。
タイトルネタはピンクレディーの
「モンスター」の歌詞からですね。




