ソーレーソレソレ、お祭りだあっ。ってね。
さて、お盆当日だ。準備は進む。
いきなり会場に青い光が満ちた。
キューウウウウ。
キューちゃんがいきなり現れた。
そして光を放つ。
満面の笑みのエドワード様だ。警備の為に来られたのね。
「ありがとう、キューちゃん、偉いなあ。」
キュウウウウン。
子犬くらいの大きさになってエドワード様に身体を擦り付ける。
「うん、そうか。毒消しでござるか。食中毒にならないようにでごわすか。キューちゃんはいい子でごさる。」
パタパタパタ。
尻尾を振ってるぞ。
そしてそのまま見回りをするのか、いなくなった。
「え、エドワード様。神獣様が子犬のように。」
驚く学園の生徒達。
「ふふふ。キューちゃんはエドワード様が大好きなんだよ。」
「マーズ様!」
あら、マーズさんもいつの間に。
横にちゃっかりサマンサちゃんを連れてるぞ。
「キューちゃんがここの人たちの悪いものを吸い取って、後で花火にして打ち上げてくれるそうだよ。」
「マーズ様は白狐様のお言葉がお判りになるのですか。」
目を丸くする少年達。合唱団のみんなだな。
マーズさんを慕ってるのがわかる。
「ああ、まあね。」
そこで私に会釈するマーズさん。
「こんにちは、レイカさん、サマンサさんをお借りしますね。会場にスネちゃまを潜ませてきますから。
警備のために。」
薄荷色の瞳を煌めかせてマーズさんは奥に消えた。
うん、警備云々は口実っぽいな。
デートか?デートだな。
サマンサちゃん、今日忙しいのはわかってるけど、午後からお休みしたいって言ってたもんな。
「お、俺ら凄い人達に囲まれてたんだな。」
「本当…」
学園の生徒達は、屋台に歌にと動員されている。
みんなが目を丸くしてキューちゃんを見つめている。
バサバサバサバサ!
「ワンバンコ♡」
懐かしいフレーズを言いながら龍太郎君の登場だ。
こんばんは、には少し早くないかい?
「あっ!二大神獣の揃い踏みだっ!」
恐れ慄く子供達。忍びや騎士団は慣れている。
「オウ、オマエら。ちゃんと歌って踊レルか?」
「は、はい!」
リッキーにドンは固まりながらも良いお返事だ。
「ネエネエ、レイカさん。オッカサンはコナイノ?」
「あとでランやアスカを連れてくるみたいだよ。」
「ヤッタ♡」
相変わらず母が好きな龍太郎君だ。
「じゃア、待ってるアイダに屋台を食い尽クシチャウヨ。」
「…ほどほどにね。」
龍太郎君はハイド君の肩に乗った。
「ハイド。一緒に回ロウゼ、パトロールもシテヤルヨ。その代わり屋台の払いは頼むネ?」
「わかったよ、龍ちゃん。」
…龍太郎君からお代をとれる人がいるかなぁ。
その時、ざわめきを感じて振り返って見ると、
「ほほほほ。準備は整ったようじゃの。」
王妃様がエリーフラワー様とおいでになった。
みんなさあっ、と道をあける。頭を下げる。
「おほほ。良い良い。お忍びじゃ。」
え、その格好は。
「王妃様、浴衣ですね!まあ、素敵な朝顔の柄ですね。
とってもお似合い。」
「おほほほ、そうなのよ、レイカ。ほらダイシ商会が和服のサンプルを持ってきたことがあったでしょ。
だからね、取り急ぎつくらせたの!木綿で。」
ホラ、籠バックもあるのよん。」
悦に入ってらっしゃる王妃様だ。
「ほほほ。うちの縫製部がお役に立ちましてよ!」
あらま、エリーフラワー様もお揃いで。
彼女も朝顔の柄だ。王妃様は赤紫、エリーフラワー様は青紫で色違いだよ。
「そうか。王妃様。着付けもお出来になれるんですものねえ。」
阿部マルガリータ先生は着道楽で有名だったのだ。
婦人雑誌で美しい和服姿を特集されてるのを何回も見た。
「だけどねえ、流石に草履は無理でサンダルなの。」
あー、それはそうか。
何だか王妃様のパワーにあてられたのか、頭がぐらりとした私だよ。
「流石、お似合いです!母上!」
「あら、リード。」
美貌の王子様が輝くオーラを纏って現れた。
周りの視線を釘付けである。
「アンディ。今日の予定は?」
「はっ。今日の予定は夕方5時をめどに出店がオープン。まあ、これは準備が出来次第営業です。
七時から盆踊り大会となっております。8時からキューちゃんによる花火の打ち上げ。
そちらのショッピングセンターの中に皆様の休憩所をご用意しておりますから、しばらくそちらでお過ごし下さいませ。」
ちなみに今は四時半だ。
「あら、そう。レイカ。後で貴女もいらっしゃいな。」
「そうよ、レイカさん。私とお喋りしましょう。おほほ。」
王妃様とエリーフラワー様のお誘いに頭を下げる私。
「ありがとうございます、もう少し屋台の様子を見てからいきますね。」
「おほほ。待っていてよ。」
ゴージャスな一団はアンちゃんの先導で去って行った。
さて、屋台の料理をチェックしなくては。
「あ、あのう。レイカ様。」
「ん?」
顔を強張らせたドンやリッキーやザック達。
「ウチのエリーフラワー・ゴージャス理事長と仲良しなんですか?」
「ええ。昔からね。家族ぐるみのお付き合いよ。」
「そ、それより!王妃様とあんなに気安く。」
少年達は震えている。
「ああ、昔王妃様の侍女をしていたの。グランディの王宮でね。」
「 ! 」
「それに転生仲間だし。」
「えっ。」
そこに来たのはシンゴ君だ。
「レイカ義母さんは王妃様のお気に入りだ。王妃様が身内以外でお優しいのはレイカさんだけだぞ。
御実家のモルドールに喧嘩を誰も売らないのは、そう言うことさ。」
「あらシンゴ君。王妃様はお心が広いだけだから。
それにエリーフラワー様にも一目置いてらっしゃるわよ。」
「あの方は別格です。エリーフラワー様に文句を言えるものはなかなかおりませんよ。ブルーウォーターにも、グランディにも。」
「ええ、ウチの理事長強すぎ…」
固まる子供達をよそに、屋台や出店を見回ってチェックをする私。
「姉さん。どうもです。食べて見て下さい。」
「レイカ様。サイコロゲームのサイコロってこんな感じですか?」
うん、なかなかみんな良い感じです。
おや、この出店は。
「やっほー!レイカ久しぶり。」
「あら、カレーヌ様。ビレイーヌちゃんも。」
ペー爺とハミルトンさんを連れたカレーヌ様だ。
カレーヌ様ご自慢のお菓子が並んでいます。
「出店のスペースの一角でウチのお菓子も売らせて貰うの。
売子はバイトを雇ったんだけどさ、学園の生徒って言うじゃない?」
カレーヌ様の後ろからツヤツヤした黒髪ストレートの女の子が現れた。
あー昔ならお姫様カットと言ったやつだな。
目も黒いな。その髪型似合ってる。
「浅○めぐみか小松菜○みたいねえ。」
「ん?この子はケイトというのよ。知ってるの?」
「あ、ごめん知らない。可愛い子じゃない。」
「ふふふん。ウチの看板娘よ。さ、ケイト。
私の親友のレイカ・ハイバルクよ。ご挨拶して?」
「は、はい。いつも噂はうかがっております。お会い出来て光栄でございます。」
「夏休みになってから時々単発のバイトとして雇ってるの。なかなかしっかりしてるのよ。」
「はい、学費や生活費の足しにしたく思いまして。奨学金で通っておりますから。」
「ねえ、レイカの甥っ子と同い年じゃないの?」
「ああ、そうかもね。ウチの甥っ子、ミルドル・モルドールと言うの。知ってるかしら?」
「え!あ、はい。ミルドルの叔母さまなのですか…。」
みるみる強張る表情。
あら、もしかして。
「やあだ。もしかして仲が悪いのお?」
また忖度無しにバッサリ聞くなあ。カレーヌ様!
タイトルは美空ひばりさんの歌からですね。




