恋したら誰だって。
そこへ。
「アンディ、アンディ。」
「ルリルリちゃんが来ましたよ。」
シンゴ君の肩に乗ってルリルリちゃんがやってきた。
「カレーヌのトコの、エサ食ベテタラ、若イ男ガキテ、半時間程イル。ジット立ッテル。キモイ。」
「あー、サードさんか。」
「ふう。朝の8時から来るなっつーの!逃げ切れて良かったわあ。」
伸びをするカレーヌ様。
ルリルリちゃん、そのエサってサードさんが置いてる奴だよね。
深草の少将はカヤの実を置いて、それからカヤの木が生えたという伝説があるけど。
「イツモ、各種ナッツ、タップリアル。オイシイ。」
普通毎日一粒ずつ置くんだが。それを百日参りの目安にするんだが。
また中途半端な知識か。
「もー、野鳥の餌付けは、家主の許可を得て欲しいわ。
あ、ルリルリちゃんは野鳥とは違うわよ。違うけど、あんな奴のエサなんか食べ無い方がいいわよ。」
「カレーヌ様、つまり今、ストーカーが入り口に立たずんでる?不審者がいるってことですよネ。」
アンちゃんが悪い顔で言う。
「そそそ。嫌んなっちゃうの。」
「ふーん、良くありませんな。
ホラ、ルリルリちゃん、ナッツだよ。
キューちゃんも食べるかい?ドライフルーツ入りだ。」
「アンディ。アリガト。」
キュー。
「さて、サードさんはご家族に回収してもらいましょうネエ。
キューちゃん?龍の字に連絡つくかしら。
呼び出せる?
サードさんがカレーヌ様に迷惑かけてるって。」
コゴーン。
キューちゃんが吠えた。
五分後。
「おはようございます。」
「ハイハイ、お呼びでヤンスか?」
龍太郎君がメリイさんと現れた。
「朝早く、出勤前にごめんなさいネ。エリーフラワー様にはこっちのせいで遅れるって連絡しとくわ。」
申し訳なさそうにするアンちゃん。
「メリイさあん。貴女の長兄なんとかしてえっ。
ストーカーよっ。ストーカー。
毎日思いつめた顔してプロポーズに来るけど、
もう、10日間になるのよっ!商売の邪魔だし。」
いきなり苦情を述べるカレーヌ様。
「ええっ!知りませんでした!」
「カレーヌサン。オイラが遠くへ捨ててコヨウカ?」
龍太郎君。ペットじゃないけど不法投棄はいけないと思うの。
「そこまでは。大事なメリイさんの家族で公爵家の跡取りでしょ。」
「申し訳ございません!カレーヌ様。
兄は今、結婚したくてたまらないみたいなんです。」
メリイさんが頭を下げる。
「メリイが結婚シテ、サビシクなったンダナ。家族はミンナ、ブルーウォーターにイルシ。」
「それであちこちから、縁談を持ち込まれているみたいで。
ダメ元でカレーヌ様にプロポーズしてるんでしょうか?気持ちを断ち切るために。」
「もおお。まいっちゃう。」
頭を抱えるカレーヌ様。ハニーブロンドの柔らかいカールした巻き毛が揺れている。
「カレーヌ様、お茶のお変わりは?龍太郎君やメリイさんは?」
「ありがとう、レイカ。コーヒーで。」
「では、私も。」
「俺ニモ。」
だって話が長くなりそうだもの。
「だいたいね。私は子持ちで未亡人だし。
あ、まだ死んでなかったか。…ククッ。」
うわあ。
「それに仕事忙しいし、やりがいあるし。
正直、結婚はこりごりなのよ。夫の世話なんてやってられるかって。
今日はね?すっぽかしてやったけど、明日引導を渡すわ。
ミッドランド家に滞在してるんでしょ、サードさんは。
明日そちらの家族の前できっぱり断らせてもらいます。と言うか、何回も断ってるのにさ!」
怒りのボルテージがあがるカレーヌ様。
「あのね、お百度参りっぽいことをやってるみたいなの。」
「ええっ!」
私の言葉に口を押さえて驚くメリイさん。
「真夜中にワラ人形打ッテるのカイ?」
龍太郎君、それ、違う。
丑の刻参りや。
「ワカッタ。今日は俺が回収シトクヨ。」
「フフフ。そうして?そうじゃなきゃ、そろそろ、チュパ子ちゃんに、吸わせちゃうかも〜!」
カレーヌ様の笑みが怖い。
「チュパカブラか!俺も、吸われタケド半端ナイゼ!確かに、カレーヌサンに最近懐いてルヨナ。」
龍太郎君の目が丸くなる。
「では、明日。ミッドランド家で会談で良いですか?
メリイさん、出来ればレプトンさんにも声をかけて。」
アンちゃんがまとめにはいる。
「はい。」
メリイさんの顔は強張っている。
「カレーヌ様。兄がすみません。怖かったでしょう。」
「ええ、そうなの。これで引いてくれないかしら。
ねえ、明日は、レイカとアンディも付いてきてね!」
「ええ。」「モチロンですヨ。」
「後は、立ち会い人としてエリーフラワー様を呼びましょう。
何しろ、ミッドランド家とは深いかかわりのあるお方。」
アンちゃんはニヤリと笑うのだった。
そしてこの後、サードさんは、
「ホラ、ココで出待ち、入待ちしなーい!
迷惑ダヨ!」
「わ、わわ、わっ!?」
龍太郎君に首根っこを掴まれて、空中高く持ち上げられたそうだ。
「マイド。お届けモノデース。ハンコかサイン下サイ。」
そして、ミッドランド家に送り届けられたとか。
(「ウーン。セリフは【忘れものを届けにきました。】の方が良カッタカナ。」
と龍太郎君はつぶやいていたそうだが、そのコピーがわかるのは、転生者だけだよ。)
サードさんがいなくなったから、カレーヌ様は夕方帰宅した。
「いいか、シンゴ、ハンゾー、一晩中交代で見張るんだぞ。」
「はっ。」
「あら、じゃあラーラさんは、ウチに泊まればいいわ。客間にね。」
「ええ、おばあさま。宜しくお願いします。」
シンゴ君とラーラさんは頭を下げた。
最近シンゴ君はアンちゃんの養子になったから、ウチの親は義理のおばあさんになるのだった。
家も隣り同士で、中で繋がっている。
寂しがりやのラーラさん。
うん、ウチの親とうまくやっているようで何よりだ。
タイトルは、恋始めまして。から。
竹内まりやさんが書いた歌だったんですね。