六月二十日は娘達とミネルヴァちゃんのバースデーです。
雨がしとしと降っている六月の半ば、子供達は二歳になり、身内だけでさくっとコッソリお祝いをすることにした。
そこに、
「ふふふ。レイカ。バースデーケーキをお届けに来ましたよ。」
ビレイーヌちゃんを連れたカレーヌ様と、
「子供用のトランポリンよ。開発したの。遊んでね。」
エリーフラワー様がご家族みんなで顔を出してくださった。
「これね!うちでわたしも遊んでるよ。」
ミネルヴァちゃんが跳ねてみせる。
あらあ、じょうず。
「ウチの子はまだ小さいから様子を見て、保護者監視のもとで遊ばせていただきます。」
実はあれから麻の代わりにひまわりのタネを植えた。
まだ双葉だけどね、
「そーれえ。」
その上を飛び越えている娘たち。
すぐに無理になるだろうけど、(何しろ一メートルくらいになるからね。ひまわり。)
その代わりにこれがあればねえ。
「ありがとうございます、エリーフラワー様。」
実はミネルヴァちゃんも同じ誕生日なのだ。
「おめでとう、ミネルヴァちゃんも。5つになるのね。」
「うん、そうなの。夜、お祝いをするの。」
そこで真顔になって、
「本当はランちゃんやアスカちゃんといっしょに、おたんじょうかいをしたいんだけど、各家庭によってじじょうがあるから、ちかた(仕方)ないのですわ。」
はあっ。
ため息をつくミネルヴァちゃん。
夜、エドガー王子様たちとお食事会だと聞いてます。
「じゃあ、みんなでケーキを食べましょうね?小さめのケーキを用意したの。はい、ひとつずつ。」
カレーヌ様が微笑む。
「ぼく、ランちゃんのとなりがいい。」
自己主張をするサファイアくんだ。
「おほほ。ではわたちは両手に花でしゅわ。
右にアスカちゃん、左にビレイーヌちゃんね。」
「まあ。わたしたち、おはななの。」
「わあい。」
ご満悦になるビレイーヌちゃんとアスカ。
「凄え。齢五つにしてこの仕切り。流石エリーフラワー様のお子様ですね。」
アンちゃんが目をパチクリとする。
「そうだ。小さな才女のミネルヴァちゃんにはこれを。お誕生日おめでとう。」
アンちゃんが懐から箱を出す。
「あ、ありがとうございましゅ。」
「アンちゃん、あれは?」
「方位磁石だよ。特注でね。貴石をはめ込んである。青いところはラピスラズリのかけらを。赤いところは
ルビーだな。
懐中時計みたいな形でフタが付いてるのさ。」
箱から出したミネルヴァちゃんは大喜びだ!
「すてき!きれえです!これで人生という海原をこいでいけましゅ!」
「お、おお。喜んでもらって何よりだ。」
そこへ。
「アンディ殿。トランポリンの大人用、試作品をあちらに運んだでごわす。」
キュー。
エドワード様とキューちゃんが現れた。
キューちゃんがいれば雨の中も運べるね。
「あら、キューちゃん久しぶり。果物たべる?」
と母が言えば、
「ケーキもありますよ、コンドラ本舗のコーン様。」
カレーヌ様も微笑む。
キュー、コーーン。
キューちゃんは目を細めて二人からお供え?をもらっている。
キューちゃんの接待は二人に任せて、
アンちゃん達と隣りの忍びの集会所のトレーニングルームに置かれたトランポリンを見に行くことにした。
「うわ、子供用とはちがって本格的だ。これが王妃様考案のトランポリンなのか。」
アンちゃんが感心している。
早速乗って跳ねてるぞ!流石に運動神経と反射神経の固まりだ。
跳ねて宙返りして降りてきた。
すげえ。
「おほほほ。王妃様のイラストから作って見たの。こんな感じかしら。ねえ、レイカさん。」
「ええ、エリーフラワー様。良く再現されてると思いますよ。」
「これサーカスにも導入するようにしましょう。
空中ブランコの下に置くとかね。」
アンちゃんがシゲシゲと見つめている。
「学生にも良いでござるな!第二体育館に置いてみるでござる。」
ほう。体育館がいくつもあるのか。
ま、騎士コースも作るんだものね。
「そうだね、エドワード。体育館で思いっきりジャンプしたら体幹が鍛えられるよ。」
「おほほほ。アンディ様ならあっという間に空中ひねりとかも出来そうねっ。」
「ここじゃ天井が低いですからねえ。ま、これくらいしか飛んでみせられませんが。」
今度はバックで宙返りだ。決まってる。
着地の足もそろってる。ブレてないのは流石だな。
アンちゃんならトランポリンの選手や体操の選手になれたろうなあ。
「最近雨で筋トレが思うように出来なくって、マーズさんが沈んでましたけど。
コレがあれば喜ばれるでしょう。」
アンちゃんはにこやかに頷く。
「マーズさんも学校に出入り自由なの?」
「ここの支配者、ブルーウォーターの一族だからねえ。基本どこでも止められないよ。」
とアンちゃんが言えば、
「おほほほ。彼に来ていただければ動物やUMAが護衛に潜んでくれますの。かえって安全ですわ。」
エリーフラワー様が微笑む。
あれか。コンビニとかに警察官立ち寄り所って書いてあるようなものか。
その後私たちもレストランに戻ってお茶をした。
「そういえばサンド兄さんところの双子もそろそろ産まれるよね?」
「そうね、産まれたらミルドルを連れて顔を出すわ。」
母がコーヒーを飲みながら頷く。
「そうだわ、アンディさん。お祝いに絹織物送って下さったそうで。ありがとうございます。
とても高級品でサンドも驚いていましたわ。
早速、ベビー服を仕立てるそうなの。」
「いいえ、お義母さん。ソレイユ産のシルクとはいきませんけど。」
そこでニヤリと笑って、
「今、マーズさんがウェディングドレス用の最高のシルクを全力で手に入れようとしてますからね。
他の人間には入手出来ません。」
なるほど。
「ブルーウォーター一族が本気になってモスマンに交渉してるという話です。」
シンゴくんも付け加える。
ソレは凄いなあ。サマンサちゃん愛されてるな。
横目で彼女を見ると頬が薄く桃色になって、水蜜桃のようである。
とても美しい花嫁になるだろう。




