空飛ぶ食欲魔人なのかな。
誤字報告ありがとうございます。人名間違いはマズイけど時々やっちゃいます。
というわけで、メリイさんのご都合を聞いてお邪魔した。
「カレーヌ様!レイカさん!ようこそ!」
呼び鈴を押したとたん、現れたのはレプトンさんじゃあーりませんか。
溢れんばかりの笑顔である。
「若旦那様。ご案内は私が。」
ほら。ジージが困ってる。
「そうですわよ。レプトンさん。今日はお休みなんですの?
私達はメリイさんに会いに来たの。今日はメリイさんはお休みを取ったとおっしゃるけど、レプトンさんはお仕事の日では?」
カレーヌ様が半眼でレプトンさんをジロリと見る。
「休み時間に抜けてきました!」
「あら、そう。ではそろそろお戻りになったら?」
ツンとするカレーヌ様。
「……ああッ!…その、塩対応たまりません!」
目を潤ませて身をよじるレプトンさんだ。
……レプトンさんってこんな人だったっけ?
バサバサバサ。
「ナニゴチャゴチャやってんノ?
レイカサン、カレーヌサン、ヨウコソ。
メリイが待ってルヨ。」
そこにひょいと顔を出すのは龍太郎君だ。
「まあ!龍太郎君。コンドラ本舗のお菓子を沢山持って来ましたよ。皆様でどうぞ。
さ、ハミルトン。」
「はい〜カレーヌ様。」
馬車からハミルトンが荷物を下ろす。
私の護衛にはショコラさんがついてきていて、荷下ろしを手伝っている。
「ウワア。お菓子ガイッパイ。ネエネエ!ジャ○ィもどきある?」
「ここに〜ドラゴン様〜。」
「ヤッタ!」
クルクル回る龍太郎君。
「気分ガ良いカラ、レプトンサン、乗っけてヤルヨ。
お仕事に戻りナヨ!送るカラ!」
「そんなあー龍太郎君ー!」
「そそそ。お仕事大事よ。行ってらっしゃい♪」
「あ。なんか行ってらっしゃいって言われるのも、イイかも。」
ポッ。
頬を赤らめるレプトンさん。
……乙女か?
「サ!行クヨ!」
龍太郎君に乗せられて強制退場だ。
「お付きの方はこちらへ。
お嬢様方は応接室へ。」
ジージに導かれる私達。
「まあ。お嬢様方って言われるのも久しぶりで良いわねえ。」
ご機嫌のカレーヌ様だ。
「姉さん。先日はどうも。ご馳走様でした。」
「あら、オ・ギンさん。」
「今日はミッドランド氏とマリー夫人はお仕事です。」
ゲン・ノジョーさんも出てきた。
「あら、ウフフ。そうね、私がサードさんをこっぴどく振ったから気まずいかもって?」
忍び笑いをするカレーヌ様だ。
「やあ、お待ちしてました。レイカさん、カレーヌ様。」
ハイド君がドアを開けてくれる。
中にはお茶とお菓子が用意されていた。
「お招きありがとうございます。メリイさん、久しぶり。」
「本当。おめでとう。良かったわね。女の子なんですって?ビレイーヌと仲良くしてあげてね。」
「こちらこそ宜しくお願いしますわ。」
なごやかにお茶会は進む。
「ねえ、お祝いに何かビッグなお菓子を作って届けるわ。」
「あらいいじゃない。龍太郎君喜びそう。
ね、ね、バケツプリンなんかどう?流行ったのよ。」
「え、そうなんですか?マンガとかでは聞いたことが。巨大プリン。
ゼリーとかも、、少年ア○ベという漫画でプールいっぱいのゼリー?かなんかあったような?
プリンはどうかしら。」
「そういえば私、小説のあしながおじさんでプール一杯のレモンゼリーの中で人が溺れるか?とかなんか読んだ気がするわ。」
私の記憶にも浮かんでくる。
「 ? ゼリーのプールは例え話として、そんな大きなプリンが出来るの?焼くの?蒸すの?」
きょとんとするカレーヌ様。
「カレーヌ様。そう言う本格的な物ではなくて、寒天やゼラチンで固まるのです。焼いたりしないのですよ。プリン液を冷やして固まるのです。」
プッチン○リン系統なんだよ。
マー○ウみたいのと違うのね。
「なるほど?そう言うお菓子があるのね?
開発するのも楽しいかも。でもまだ原理がよくわからないから、今回はとりあえずパイとかケーキとかで。
ロールケーキを何本か繋げるとかね?」
そうか。ここの世界はゼリーはまだゼラチンのみか。
寒天というか海藻抽出物使ってないか。プリンに応用も出来ないか。
では巨大プリンは自重で潰れるな。
じゃあ焼き菓子だね。
「大きな型をつくってアップルパイなんかいいですよね。」
「面白そうです。大きな釜をつくったら巨大ピザも出来ますよね。龍太郎も喜ぶでしょう。」
「ふふふ。巨大なパイを記念日の贈り物に。ってフレーズもいいわね。ビジネスチャンスに繋がりそう。
結婚式で用意して切って、みんなに配るのもいいわね。
ケーキだと痛みやすいけど。パイなら余ったらお待ち帰りも簡単だわね。」
あら。カレーヌ様の顔が商人のそれに。
「そういえば巨大な月餅を横浜で見た事ありますわ。」
「そうね、メリイさん、巨大なシュウマイもなかった?」
「ありました!切ったら中にミニシュウマイが入ってる奴でしょ。TVで見ましたわ!結婚式のお祝いでしたわ。」
そう言って巨大な食べ物についてワイワイ言ってる私たちを横でハイドくんがにこやかな顔で見ていた。
おや、メモを取っている。
「色々参考にしますよ。メリイはりんごが好きだからアップルパイがいいですね。」
カレーヌ様がニヤリと笑う。
「あら、ご馳走様。仲が良くていいわね。ふふふ。
でも巨大パイはそのうちお届けするわ。
大きめのオーブンで焼いて見る。」
そこへ龍太郎君が、飛んできた。
「タダイマ!ネエ、お菓子食べてイイ?」
「あら、龍太郎君。お帰りなさい。もちろんよ。コンドラ本舗のドラゴン様。」
カレーヌ様が手招きをする。
そこには箱から出されたお菓子がズラリと並んでいる。
「オヤ。コレハ、ポテチ。」
「お好きなのですって?ポテトチップス。
こっちは青のり振ってみたのよ。レイカにそう言う味があると聞いて。」
「ワアイ。のり塩味だ!ミルフィーユ喰いダ!」
ガサリ。
バク。ザクリ。
ポテチを10枚ほど重ねて一気に口にいれて噛み砕く。
これがミルフィーユ喰いかあ。
「ウメエッ。重ねて食べるとカクベツ!
噛み締めると味がジュワッと広ガッテ!
ウン。もう一回!」
「龍太郎、お行儀わるいわよ!」
「うふふふふ。豪快でイイじゃないの。
沢山食べてもらうと作りがいがあるわ。」
「カレーヌサン!今度コレ箱でモッテキテ!大人買いシチャウモンネ。」
青のりを歯につけてニヤリと笑う龍太郎君。
「あらぁ。お買い上げありがとうございます。」
「ウン。先払いシトクヨ。」
龍太郎君がまた首の後ろから金貨を出す。
「ハイ。多分ね?三千年前のダヨ。」
カレーヌ様が恐る恐る受け取る。
「…これは!伝説の失われた大陸の金貨!
それになんだかほのかに光ってるわ。」
バクバク。ザクザク。
食べ続ける龍太郎君。
「ウン。俺の加護が付いてるから。」
「加護が?
…例えばだけど落石から身を守るとかできますか?」
「ソウダネ。それくらいなら。あとね不審者なんかはハジキ飛ばしチャウヨ。」
カレーヌ様の目は真剣だ。
「ビレイーヌにつけさせます。肌身離さずに。
あの子のお守りにしますわ。
落石がまたあっても大丈夫と思うと安心なの。」
カレーヌ様の顔は母の慈愛に満ちていた。
「龍太郎君。いえ、神龍様。ありがとうございます。」
「カレーヌサンも、いいオッカサンなんだネ。」
龍太郎君がメリイさんの肩に止まってしみじみと言う。
「こんな素晴らしい金貨、ポテチ一箱ではいただき過ぎですわ。もっとお届けしますわ。」
「え!アリガトウ!オレ、沢山食うからネッ。
ネエネエ!一度一年分のお菓子ッテもらってミタカッタンダ!
いい?」
カレーヌ様はフンワリと微笑んだ。
「ウフフ。じゃあ毎月一箱ずつ、一年間お届けしますわよ。一箱24袋入りなんですよ。」
なるほど。一度に沢山食べちゃ身体に悪いからね。
「ワアイ!ヤッタヤッタ!」
羽を広げたり閉じたりする龍太郎君。
「パッケージに思わず空飛ぶ美味しさ!って書いていいかしら?」
「イイヨー!」
なるほどねえ。
流石に商売のコツを押さえてはりますなあ。
そして後日。
「ドラゴンもびっくり!思わず空飛ぶ美味しさ!」
のキャッチコピーと一緒に、可愛くキャラ化した龍太郎君が描かれた新パッケージで売り出された。
とってもヒットしたそうである。
リード様なんか元々ポテトフライとかお好きだから、
「へえ!のり塩味もあるんだね。美味しいね。これ。」
早速お気に入りでめちゃくちゃリピされているとか。
お太りにならないと良いのだが。
「フフ。そのうち美貌の王子様もお気に入り!と広告が打てるわね。」
こないだウチに来たカレーヌ様がく、く、くと悪い顔で笑っていた。
それから巨大アップルパイも届けられたそうである。
「ヤッター!オレここからここまで食べルネ!」
龍太郎君がとても喜んだそうだ。
メリイさんのおめでたのお祝いなんだけどな。
ま、いいか。
タイトルは川原泉さんの作品からですね。




