なるようになるのは、ケセラセラか。
五月晴れの日。
子供達を連れてお散歩に行った。時々ベビーカー。
時々歩き。
サマンサちゃんと一緒にカレーヌ様のところへ行くのだ。
ビレイーヌちゃんとも遊ばせたいしね。
護衛はショコラさんだ。
「おはようございます。カレーヌ様。ぺーターさん。」
「ようこそ。中へどうぞ。」
にこやかに迎えてくれるペー爺。
相変わらずダンディである。
「レイカー!おひさ。会えて嬉しいわ!
やだー!二人とも大きくなっちゃって!」
カレーヌ様、お元気そうでなにより。
そこにリンさんとルイさんも来た。
「奥でビレイーヌちゃんが、待ってますよ。」
「プリンがいいかな?ゼリーもありますよ。」
「うわあいいっ。」
駆け出す娘たち。
「ほら、走ったらダメよ、危ないでしょ。」
「元気良くていいわね。さ、レイカもサマンサさんもショコラさんも、奥へどうぞ。」
カフェ部分には「貸切」の札がもうかけられている。
すみませんねえ。
ドアを開ける。
「やあ、サマンサさん。レイカさん。ショコラさん。」
何故、マーズさんがここに。
「皆さんがこちらにいらっしゃると聞いたので。うちのアイスクリームを差し入れに。ひと足先に着いたばかりですよ。
あと、カレーヌ様。
出来たてのバターと生クリームですよ。いつも御贔屓くださってますから、こちらはサービスです。」
「ま!こんなに。ありがとうございます。
うふふ、サマンサ様さまね!大儲け。
御礼と言ってはなんだけど二人でお茶したらいかが?子供たちはウチのペー爺とショコラさんが見てくれるわよ。」
ホクホク顔のカレーヌ様だ。箱一杯の生クリームとバターを受けとる。
「どーも〜冷蔵庫にしまいます〜。」
ハミルトンさんが抱えて行った。
「え、良いんですか。レイカさん。」
「うん、あちらのテーブルで二人でお茶したら?」
「さあ!サマンサさん。こちらへ。」
マーズさんが目をきらめかせてサマンサちゃんの手を取る。
瞳が愛で溢れてる。好き好き光線が出そうである
「ふふふ。若いっていいわねえ。」
二人を横目で見ながらアイスを食べるカレーヌ様。
貴女も若いでしょ。
「そういえばお母様は?」
「今日はね、ネモ様の御母堂のアリサ様とお芝居を見に行ってるのよ。
元々顔見知りだったし。仲良くしてくださってるみたい。」
へええ。意外な組み合わせだ。
でも年齢も近いしね。新しい場所でお友達が出来たんなら良い事だ。
「……なんかねえ。色んな巡り合わせを感じるわ。」
「 ? 」
「だってさ。私もレイカもあのセバスとの縁談話が持ち上がったわけじゃん。
アイツはクズだけど、アリサさんはそうじゃないでしょ。
サマンサさんじゃなくて私らがアリサさんの義娘になってたかも知れないわよね。」
「…うわ。その発想はなかったわ。」
「…ま、なんでもなるようになるのよ。最近そう思うの。」
二人でジャスミンティーを飲む。
「こないだなんかさ、出かけようとしたら靴ひもが切れたのよ。」
「えっ。」
それは何か良くないことが、というフラグとして有名なやつ。
「アニメの、アタッ○No. 1でツト○くんが死んだときの?」
「なによ、ア○ックNo.1とかツ○ムくんとか?」
「ごめん、王妃様しかわからないかも。」
「あ、そっち系か。ま、とにかく靴ひもが切れたけど、出かける前で良かった!お出かけ中だと大変じゃん。」
「それもそうね。」
その前向きな発想、いいね。
「で、先日そこの崖から落石があったでしょ。」
「うん。」
「紐が切れてお出かけが遅れてないと巻き込まれていたかも知れないの。」
「ええ!?」
それはびっくりだ。
「それでそのあたり一体の崖の調査も行われて、補強工事も行われたし。ま。結果オーライだわね。」
カップを持つ手も優雅にカレーヌ様は微笑む。
「リード様のお妃候補から外れて、馬鹿亭主と結婚して離婚。
色々あったけど、工房は大きくなったし。お母様と暮らせるし。今は良かったわ。」
なるほど。禍福は糾える縄の如しって奴か。
「さいおーが、ひのえうま、、。」
「?馬がどうしたの?」
また口から出てたか。
「その時はね、なんでこんな事が。私って不幸!なんて思っていてもね。それがこの結果に繋がって良かったのだと言う事もあるよねってこと。」
「わかる気がするわ。こないだ出先で、素敵な服があって買おうとしたんだけど手持ちがなくて諦めて、
家に帰ってクローゼット漁ってたら、去年似たようなもの買ってたじゃん!まだタグ付きのまんまで未使用でね。
買わなくて良かったー!って事あったのよ!」
「え。レイカ貴女それ、色々大丈夫?
まだ20代でしょうに。ボケてんの?
ねえ、一昨日の夕食思いだせる?」
カレーヌ様が眉をひそめる。
本気で心配されちゃった私だよ。
「も、もちろんよ。ええと魚のムニエルに粉吹き芋。
コールスローサラダにかき卵汁よっ。」
どっかの調理実習みたいな献立だったな。
話を変えよう。
「そうだ、こないだ王妃様達にお出ししたレモンゼリーを作って持ってきたの。好評だったから。」
「ありがとう!お持たせだけどいただいちゃう!
あら、ほろ苦くていいわ。夏みかん系ね。」
「エメリン先生とアキ姫様の顔合わせでね。エリーフラワー様とヴィヴィアンナ様もいらしたの。」
「まあ。凄いメンバーねえ。混ざりたいような、怖いような。
ねえ。少しはエメリンさん落ち着いたの?
レプトンさんとのアレコレは聞いているのよ。」
「落ち着いたというか。もうレプトンさんには物理的にも近づけないわよ。」
「ああ、メリイさんのところに住んでるのよね。レプトンさん。
そうそう!メリイさんおめでたなんですって?
お祝いのお菓子を贈ろうかしら。」
「いいわね、カレーヌ様。きっと喜ぶわ。」
「ね、今度二人でお邪魔しましょうよ。」
カレーヌ様はこぼれるような笑顔を見せた。
ひまわりの花のようだな。と思ったのである。
ペギー葉山さんですね。ケセラセラ。




