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未来のミライ。それは誰にもわからない。

 次の日の朝。

「ね、ねえ。レイカ。すぐこっちに来て?アンディさんも。」

母から電話で呼び出しをくらった。

とても慌てていたので、すぐに行く。

今日は母と父は休みで温泉に行くはずであった。

「ショコラさん、サマンサちゃん、娘達を見ていてね?」

「はい、アネさん、行ってらっしゃいませ。」


…うん?そういえばラーラさんも来てないぞ。



取り急ぎ父母の家に着いたら、立派な馬車が停まっていた。

アンちゃんが真顔になる。

「ナルホドね。」


中に入った。ドギマギが迎えてくれて、応接室へ。


そこには、

「ごめんなさい、レイカさん。急に押しかけてしまって。

少し内緒でお話ししたかったので、こちらへお邪魔しちゃいました。」

美しき麗人が立ち上がって眉を下げる。

まわりに満ちる華やかなオーラ。


「―――――!」

サイレントに悲鳴をあげる私!

嘘っ。ヴィヴィアンナ様!?


「まあまあ!良いんですよ!ヴィヴィアンナ様!

レイカ、お忍びでお出ましになったの!」

興奮している母。確かに電話では話せないな。


それにしても!昨日に続いて今日もお会い出来るなんて!

うわあ、うわあ。ブラボー!マーベラス!エクセレント!アンビリーバブルっ!

…何だか訳がわからなくなった私。


母のほっぺは桃の花みたいにピンクになってる。

(そういや、昔さ、桃の花ってクリームあったよね?)

おや、ラーラさんも真っ赤になってコーヒーを入れてるわ。


「ま、まさか。ヴィヴィアンナ様がこちらにいらっしゃるとは。」

父は腰砕けだ。ドキマギも立ち尽くしている。


おや?猫みたいに顔を半分出してカーテンから覗いてるのはミルドルではないか。

「うわあ。俺は夢をみてるのかな。で、伝説の美貌のお妃様だ!うちに絵姿が沢山あるよう!」


「こほん。おはようございます。ヴィヴィアンナ様。」

流石にアンちゃんは冷静だ。

「今日はわざわざ昨日のレイカの忘れ物を届けて下さってありがとうございます。

さきほど護衛のピーター君から受け取りました。」


えっ?


アンちゃんが手に持っているのは、ヴィヴィアンナ様から友情の印にいただいた、ブルートパーズのペンダントだ。

いつも付けているはずで、今日も付けたはず?


あれ?ない?


ピーターさんがすっと影から現れた。

そして頷いている。


いたのね?


「まああ、ダメじゃないの!レイカ!大事なものを落として! 

それで貴重なものなのでわざわざ届けて下さったのね?」

母が恐縮している。

「うん、お義母さん、みんな、ナイショにしてね?

ヴィヴィアンナ様から友情の印にいただいたものを落とすなんて! 

しかも自ら届けて下さるなんて!

いや!まったく!見つけて下さってよかった!」

アンちゃんが両手を広げてやれやれのポーズだ。


「え!それは申し訳ない。」

青くなる父。


「ふふふ。でも久しぶりにレイカさんと話したかったですし。」

「そうですかあ!では人ばらいを。

ラーラ、仕事に行きなさい。シンゴは護衛に残ってたんだな。もう大丈夫だよ。オレとピーター君がいるからね。

二人とも出勤するように。

お義母さん、お義父さん。温泉に行ってらっしゃい。

ドギマギ、呼ぶまで来なくていいぞ。お茶も出てるからな。

ミルドル、オマエさんは勉強してろ。な?

高貴な人を覗くんじゃない。不敬だぞ。」


「「は、はいいいー!」」

アンちゃんの声で一同、蜘蛛の子を散らすように散った。


「あれ?ペンダント落としたっけ。」

ソファに座って首まわりを撫でさする。


ない?やはりそれが私のペンダント?


ふふふ。微笑むのはヴィヴィアンナ様だ。

「流石だね、アンディ。チェーンは切ったの?」

そして私の首をじっと見る麗人。

え?

「ハイ、まあ。ごめんねえ、レイカちゃん。切れたチェーンは修理するからね?

ピーター君も話をあわせてくれてありがとう。」

「ええ、見てましたよ。見事な腕ですな。奥方に傷をつけず、しかも気がつかないように切ったのですね?」


「うん?どう言うこと?」


「人払いをする為、私が押しかけてきたことを誤魔化すのにアンディがひと芝居打ったのですよ。」


えっ。それじゃアンちゃんの芝居で私はドジっ子にさせられたの?

憤慨しようとしたが、ヴィヴィアンナ様が私をじっと見つめているので怒りを引っ込めた。


いやん。見つめちゃいやー。私のハートはドキドキしちゃうのー。

ハ○ーフラッシュな気持ちになる私。


そして立ち上がって、私の前に来られた。


「レイカさん。お話したいことがあってきたの。

私は貴女をお友達と思ってます。

だから不義理や強制はしたくないのです。」

「えーと?何ですか?」


「それはまさか。フロル王子様とウチのランの事ですか?聞いておりますよ、昨日のことは。」

アンちゃんの顔が強張る。


「ええ?!」


ヴィヴィアンナ様の美しい顔に憂いの表情が。

「王妃様は、出来れば、仮にでいいから婚約させたいと。

昨日あれから、フロルが。

僕も婚約者が欲しい、ランちゃんが良いと、うるさくて。」


「ええええー!」

何と言うことでしょうか。昨日のエリーフラワー様とカレーヌ様の心配が大当たりだ!


「あ、あっと驚く、タメゴロー!!

…ゲバゲバ60分!」

口から勝手に出るフレーズ。


「レイカちゃん?気をしっかり!タメゴローって何?」

アンちゃんが私を揺さぶる。 


「…いえ!もちろんわかっています!

レイカさんがウチとの縁談を、望まないことは。

子供には自分で結婚相手を選んでほしい、ですよね。

こないだのラーラさんとシンゴ。ミッドランド夫妻。もちろん、レイカさん達だって。

……ふふ。自分で選んだ相手との結婚式はとても幸せそうでした。」


そして私の隣に腰を下ろされた。

何も言えない。ヴィヴィアンナ様は政略結婚だった人だ。

一応、リード様から選ばれたけれど、彼女自身が立候補した訳ではないのだ。


――だってその前はアラン様との結婚話もあったと聞く。


「ご心配なさらず。私はリード様で良かったと思っておりますよ。お互いを理解できるのはお互いだけだと思うのですから。

それにあの方は気性が真っ直ぐです。

嬉しいことは嬉しい。ツラいことはツラいと。ちゃんと言える人です。」

うん、美し過ぎる苦労を分かち合えるのはリード様しかおられない。


「ヴィヴィアンナ様。王妃様は、貴女様にレイカに打診してこいとおっしゃったのですか?」

アンちゃんの表情は硬い。


「いいえ、昨日は何も。だけどもそれを言い出される前に私は来たのです。

私は婚約をごり押ししたくないのです。レイカさん、私に忖度は不要ですよ。お子様が自分で選ぶと言う姿勢を、突き通して下さいね。」


肩の荷を下ろしたように笑うヴィヴィアンナ様。


「あー、そうですね。王妃様はそのうちヴィヴィアンナ様にレイカを落として来い、と言いそうですからね。」

アンちゃんが吐き捨てる。

「えええー。」

確かに。ヴィヴィアンナ様に泣き落としされたら?

…いやいやいや!ダメダメ!


「ヴィヴィアンナ様。私は前世の記憶があります。

だからお妃様になったらとても大変だと、わかっています。

どれだけの努力が必要なのか。語学力だって。

礼儀作法だって。精神力だって。それに家格だって。

ウチの娘にはホント、無理ですから。」


ミネルヴァちゃんは別格である。彼女のあの賢さ。

母親譲りの溢れる自信。押し出しの強さ。

立派にエドガー王子の妻が務まるはずである。家格も。公爵家ですし。


「レイカさん、安心して。私は無理強いする気はありませんから。」

そう言ってヴィヴィアンナ様は私の手をとる。

「は、はい。」

こんな時なのにドッキリ♡な私。


「…ヴィヴィアンナ様。」

アンちゃんは椅子に深く座る。

「あたしゃね、第三者として考えれば、王妃様のお気持ちもわかるのですよ。

変に権力と野心を持ってる貴族の娘より、ウチが良いですよね。

何しろモルドールの血筋は善良だ。

娘はオレら忍びが守りますしね。

…それに。アラン様がオレの子供に害をなす事はないだろうと、王妃様はお考えだ。

そして貴女も。

そしてね、それは多分その通りです。」


アンちゃんはじっとヴィヴィアンナ様を見る。


ヴィヴィアンナ様は唇を噛んでいらっしゃる。


「そうですね。私はリード様より少しだけ用心深くて、心配症なんですよ。

王妃様がお元気のうちはいいです。

だけど。少しでも安心する後ろだてが欲しいのは、

正直言ってありますよ。」

顔を覆う麗人。

美しい前髪が揺れている。


ああ、もう。うーん。

…そうだっ!



「ヴィヴィアンナ様。今度王妃様にお会いになってそんな話が出ましたらね、

学園に入って、出会いがあるとどうなるか分からないと、レイカが心配していたとおっしゃって下さい。

だって、三歳違いますから。フロル様の方が先に入学されます。ご学友も出来るでしょう。

同年代の可愛い子もいるでしょう。

ね?娘が悪役令嬢になったらどうしよう、ヒロインが現れたらどうしよう、と。

心配していたと。」


「え?それは先にウチの子が入学しますけど。」

困惑してらっしゃるヴィヴィアンナ様。


「ねぇ、レイカちゃん、悪役令嬢ってなあに?ヒロインって?」

目をぱちくり。口をポカンとした顔のアンちゃんだ。


「アンちゃん。王妃様には通じます!【なろう】を読んでらっしゃったのですから!

私も読み専だったし!」


(はい。王妃様は以前、なろうで見たわね、そんなの。とおっしゃったことがあります。)


「え、そうなんですか?」

こちらもポカンとした顔になったヴィヴィアンナ様だ。


閑話休題。


それから。ヴィヴィアンナ様は、やはり王妃様から、

「ねえ。フロルがランちゃんに会いたいというの。

婚約者になりたいって。

貴女からレイカに打診してくれないかしら。

レイカは貴女が大好きですもの。

ズルくて悪いけど私、レイカに嫌われたくないの。私からごり押ししたくないのよね。」

と言われたそうだ。

(王妃様。勝手だなあ。)


なので、

「レイカさんは悪役令嬢?にランちゃんがなるのは嫌だと。

小さなときからの婚約はやめて欲しいそうです。

ヒロイン?が来たらどうする?とかなんとか。」

とヴィヴィアンナ様は答えられたそうだ。


「あー!そう来たか。ナルホド。それは考えなかったわ!異世界転生してるからね、私たち。

そういう展開もあるかも知れないわ。」

と納得されたそうで。


そして、フロル王子には、

「フロル。好きな子に選んでもらえる様に頑張りましょうね?お勉強も、剣も。」

と、諭して下さったそうだ。


一件落着かな。やれやれ。


タイトルは同名のアニメ映画から。最近のですが。

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― 新着の感想 ―
うーん、そう来たか。(王妃様の真似ではありません) 確かに、そうなれば王族にとってはまたとない、安心できる縁談ですね。 ただねえ、誰もが王子妃を望むかといえばそれはまた別の話。 ちょっとばかり王妃様ず…
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