他人の気持ちはわからない。
誤字報告ありがとうございます
さて。その騒ぎはもちろんネモさんやリード様の知るところとなった。エリーフラワー様にも。
次の日。風薫る五月の一日。メーデーだったり夏も近づく八十八夜だったりする日だ。
(年によって八十八夜は五月二日のときもある。)
御三方とミッドランド氏がエメリンことエメラーダ先生を、公宮の会議室に呼び出したそうだ。
「ねえ。エメラーダ嬢。もうレプトン君のことは諦めてくれたまえよ。脈が無いってわかっているんだろう?」
バッサリと容赦なく斬り込んだのはリード様だ。
いつもと違って王家パワー全開で威嚇してくるリード様。
マジだぞ。本気と書いてマジと読むぞ。
震えあがるエメリンことエメラーダ先生。
「は、はいいい。も、申し訳なく、ぞ、存じます。」
「キミにつけていたブルー婆が舎監の仕事で忙しくなって監視が緩んだんだな。コレからはもう1人専門でつけることにしようか。
アンディ、頼むよ。」
「はい、リード様。」
そこでアンちゃんが影から現れる。
(だからこの顛末を知ってるんだけど。)
「最初は残ったパープル婆さんをと思いましたが、
このパワー溢れるエメリン嬢を押さえるのは三婆では無理ですね。
若いクノイチを招集して同室で見張らせます。」
「え!そんな。窮屈なのはカンベンしてくださいー!」
「レプトン君はもっと窮屈な思いをしてるがね。」
冷たい声と視線で切り捨てるリード様。
「リード様、ウチのスネちゃま達が彼女を見過ごして申し訳ありません。
エメラーダ嬢は一度スネちゃまに噛まれている。
あと何度か噛まれると死にますから。ちょっと彼等も躊躇したのです。」
恐ろしいことをサラリというネモさんに、エメリンの顔色はさあっと青くなったそうだ。
「いや、ネモ公。元はといえば虎子ちゃんが、ヴィーに付き添ってくれているからだ。
それはすまないね。アキ姫のことがあるからさ。」
謝り合う二大トップ。
「だけどねえ。側近のレプトン君に休まれるのも困りものなんだよね。根本的な解決が必要だ。
みんな、そう思うだろう?」
(これがアラン様なら、サクッとバッサリ、コロリかもしれなかったとアンちゃんは語る。)
「そうですわね。リード様。彼女は思い込みの恋に支配されているのですわ。だけども才能ある女性ですもの。
ちゃんと目が覚めれば大丈夫ですわよ。」
「そ、そうか、才女殿。貴女が、そう言うならそうかもしれないなあ。」
エリーフラワー様の言葉に動揺するリード様。
リード様は、エリーフラワー様に好き好き攻撃を受けていたものね。
お互いにそれを思い出したのか。
「エリーフラワー様。ではどうしますか?」
ネモさんが硬い表情で聞いたら、
「うーん、エメラーダさん。良く聞いてね?」
「は、はいっ。」
「貴女の【幸せであるように】ですけどね、あの歌。
レプトンさんのことなんでしょ。」
「は、はい!」
「では何故彼を不幸にするのかしら?」
と、言い放ったそうだ。
「……。」
え、それ言っちゃうんだ。
流石に怖い者なしのエリーフラワー様だ!いいぞ!
「あの詩に素晴らしい曲がついた。それをリード様が神がかった表現力で歌われた。
それがみんなの心を打った。ここまではいいの。
だけどもね、その後レプトンさんの事だと知れ渡ったのよね。
それでみんなが善意や興味本位で2人を結びつけようとした。そうでしょう。」
「…はい。」
「……うーん。何かね。きな臭いのよ。」
「 ? 」
「才女殿。どう言う訳なのかい?」
「リード様。彼女とレプトンさんがくっついた方が都合がいい、または逆に彼女がレプトンさんにこっぴどく振られた方がいい、そう言う人達がいるのかも。」
「え、待って。理解できない。」
アンちゃんの話の腰を折る私。
「…まあね。ワタシも少しは心あたりはあったのヨ。それで口を出した。」
アンちゃんの回想による説明は続く。
「皆様。ワタシの耳に入ってるのは、レプトンさんがカレーヌ様といい感じになってきたから、カレーヌ様に横恋慕してる奴らが、阻止しようとしてると。」
「アンディ、そうなのか?」
「ええ、リード様。とにかくレプトンさんはカレーヌ様に惚れ込んでいる。まさしく初恋の再燃という奴です。
リード様も後押しをされてるでしょう?」
「ああ、まあね。」
口元を上げるリード様。
「……ええ?ええええ!」
「エメリン先生。カレーヌ様の事は私も良く知ってますけどね。あの二人はお似合いですわよ。
毒舌のカレーヌ様に頬を染めて擦り寄るレプトン様。
なんだかね、おほほほ。レプトン様の性癖にピッタリですわよ。ほほほほ。
それに初恋って忘れられないものでしてよ。」
「え、ええと。」
ミッドランド氏が固まったそうだ。
「サードだけじゃなくて、レプトンもか。そんなにカレーヌ様に執着しているのか……。
初恋に執着するのはグローリー家の血筋なのか。」
「それとね、アラエル君。彼、厄介だよね。」
「アンディ様、やはりそうかしら。」
「うん?才女殿にアンディ?何の話だい?
以前エリーフラワー研究所にいて今、理科の先生をしている彼だよね?」
「ええ。副学園長を任せてますわ。」
アンちゃんの指摘は続く。
「アラエル君はエメリン女史に気があると思いますね。」
「私もそう思いますわよ、リード様。
早くエメリンさんがレプトン様に振られないかと思ってると。煽らせて、エメリンさんに突撃アターックさせたのだと、思いますわ。」
「ええっ?」
目玉が落っこちるくらいに目を見開くエメリンさんだ。
「あの?あり得ませんわ。いつも嫌なことばっかりいってくるんですよ、アラエルさんって。」
「貴女のことが気になってたまらないのよ。それでつい、口を出すのだわ。」
「それは私も感じておりました。アラエル君はキミのことばかり言っておりますよ。」
ミッドランド氏もエリーフラワー様に同調した。
「彼は多分、無自覚だ。貴女を正しい道に導かねばと思っている。
遅刻ばかりする貴女にガミガミ言うのも。」
そりゃあ、そうだ。
「派手な服装に文句つけるのも。」
あー、うん。でもあれは変装もあるからな。
「さっさとレプトン様に振られて現実を見ればいいのにと、呟いていました。」
うわあ。それは。余計なお世話か?
「正しいと言えば正しいけど、そいつ厄介だね。」
リード様は目をつむって考えこんだ。
「なあ、ミッドランド氏。」
「はい、リード様。」
「もう、直接対決しかないね。レプトン君を彼女と合わせよう。
彼も逃げ回ってばかりじゃ良くないよ。」
「そうですね。エメリン先生。キチンと振られて下さい。その覚悟をして下さい。」
ミッドランド氏の言葉にエメリンは項垂れたそうだ。
「でね、明日、対決?面談?が行われるのよ。」
アンちゃんが話を締めくくった。
「うん。」
「レイカちゃんにも来てほしいって。」
「なんで?」
「エメリンとエリーフラワー様の希望なのよ。
エメリンはレイカちゃんを命の恩人だと思ってるの。
自分だけアウェイでは嫌だと。
龍太郎も来るし。レプトンさんの護衛をするんだと。」
はあ。特に味方でもないけど。レプトンさん気の毒だし。
「エリーフラワー様は、冷静な第三者としていて欲しいんだって。
それに久しぶりにレイカちゃんに会いたいそうよん。」
ニヤリと笑うアンちゃん。
しゃあないなあ。
行くか。
……面倒くさいなあ。




