おめでとう。おめでとう。
馬車を走らせて、みんなでメリイさんのうちに行った。
(ウチには馬車がいくつかあるのよ。忍びの若者が御者をしてくれる。)
「朝早くからごめんなさいね?」
「はあ。アンディ様。お話があるからって、
お電話もらいましたから、メリイの出勤を遅らせましたが。」
ハイドくんは目をパチクリしている。
龍太郎君は飛んできて、メアリアンさんを見て頷いた。
「アンディサン、メアリアンサン連れて来てくれてアリガト。確認して、説明シテくれるんだネ?」
「龍ちゃん?」
ハイド君の肩に乗る龍太郎君だ。
そして、いきなりカツラを引っ張って剥がした。
「いててて。いきなり何するの。龍ちゃん。」
ポーイ!
速○真澄モデルのカツラは龍太郎君から放り投げられた。
「フン!」「ああっ、なんで。」
意地悪したいんだなあ。
生温かい気持ちになる私。
メリイさんのおめでたは嬉しい。だけどハイド君は永遠の恋敵なんだね。
可愛い嫉妬じゃないか。カツラ飛ばしだけで済んだんだから。
そこにメリイさんが二階から階段で降りて来た。
優雅に薄手の上着がふわりと揺れる。
妊婦さんだったら昇り降りにも気をつけなくっちゃなあ。大階段だもの。
「あの?皆さんお揃いで。急用とは何ですか?」
メアリアンさんはじっとメリイさんを見た。
「ああ!本当に。龍太郎君が言う通りですわね。」
そして、優しい笑みを浮かべだ。
「 ? 」
顔を見合わせるハイド君とメリイさん。
「ヤハリそうなんだナア。
一昨日カラネ、赤ん坊の鳴き声が聞コエルのさ。
パイセンも間違いナイって。子供の気配にビンカンだからね。俺ヨリ。」
「えっ!なにそれこわい!」
「龍ちゃん?ここ新築だよね?地縛霊じゃないよね!君の加護をすり抜けて荒ぶる霊が入ってきたの?」
「ハハハハハハハハハ!」
泣き笑いをする龍太郎君だ。
「違えよ、バーカバーカ!もう。
メアリアンさん、説明シテヤッテ。」
バサバサバサ。
龍太郎君はアンちゃんの肩に乗ってきた。
「ヨシヨシ、ナッツやろうな。」
アンちゃんから胡桃をもらう龍太郎君を横目で見ながら、
「私の目にも見えますの。赤ん坊が。
――メリイさん、貴女のお腹の中にですよ。
おめでとう御座います。」
メアリアンさんは静かに告げた。
「えっ。」
驚くメリイさん。
「えええっ。だってまだ、はらたいら。」
漫画的ー!じゃなくて。
トンチンカンな事を言うハイド君。
苦笑するアンちゃん。
「あのさア。まだ医者にもわかんねえくらいの初期なんだろ。まだ膨らむかよ。
それに、そう言うチカラがないとわからねえさ。」
「良かったわね、メリイさん。おめでとう!
身体を大事にするのよ!」
「レイカさあああん!」
抱きついてくるメリイさん。
「ヨシヨシ。」
「ほら、ハイド。呆けてねえで、これから先の事を考えろ。龍の字は昨夜オレに、早く使用人を見つけてくれって来たんだぜ。」
「あ、ああ!はい。」
「この屋敷はでかい。オマエとポーリイだけじゃ手が回らねえだろ。
掃除とかメリイさんもしてたんだろ。
どっちにしろ、貴族のお屋敷だ。使用人は必要なんだぞ。今までだましだましやって来たんだろうが本腰入れて探さないとな。」
「そうですね。」
「でさ、パープル婆さんか、ゲン・ノジョー夫妻、どっちがいいか?」
「ええええええええ!?なんですか、その二択!」
「執事はモルドールの方で探してもらう。」
「それは、すみません!」
「アイツらと確執はあるか?意地悪されたとか?」
「あ、いえ、特には。」
「龍太郎に怯えない人材だぞ。」
「まあ、そうでしょうが。
すみません、なんかまだ混乱していて。」
「ハイドおめでとうな。良かったじゃねえか。」
「はい。」
照れた様に笑うハイド君。
「チナミに。女の子ダヨ。俺可愛がっちゃうカラネ。」
「ええ、私にもそう見えますわ。」
「娘ですかあ!可愛いでしょうね。」
ハイド君の顔もぱあっと明るくなる。
「フフフ。俺は女の子しか守護シネエカラな!」
「もう。龍太郎。何言ってるのよ。」
困り顔のメリイさん。
「とりあえず世話をする人が必要だよ。ポーリイだけじゃな。妊婦の世話は出来ねえだろ。
今度王妃様にご相談して、上手くいけばオ・ゲン夫妻やパープル婆さんを寄越すから。
顔合わせと、相性もあるからさあ。」
アンちゃんの言葉にポカンとした顔のメリイさん。
「あの。とりあえず母に相談しますわ。
良ければこの家に住んでもらったらと。お部屋ありますし。」
ああ!そうか!
「その発想はなかったな!」
アンちゃんがポン!と、手を打つ。
「メリイさんのお母さん達は賃貸に住んでらっしゃいますし、将来的に同居もありかなと思ってましたよ。」
ハイド君が腕組みをする。
確かに。ミッドランド邸にハイド君は一緒に住んでいたのだ。特にトラブルは無かったと聞く。
ちょっとだけシスコンレプトンさんに嫌味を言われたくらいだと。
「メリイさんの母上は初等科で礼儀作法を教えてらっしゃるのよね。」
「ええ。毎日授業があるわけではないようです。開校のときはとても大変だったみたいですが。落ち着いたとか。」
そうかあ。実母に世話してもらうのが1番よね。
「ただ、母も貴族ですから何もかもできるわけでは。
でも経産婦ですから心強いです。」
考え込むメリイさん。
「そしたら別にパープル婆さんは呼ばなくてもいいな。
若者をやとって雑事をしてもらおう。」
「その方がいいと思うよ。」
私も同意する。
横でハイド君がホッとするのが見えた。
はは。やはり三婆さんは苦手か。
「まあ、ゲンの野郎は嫌いじゃないですよ。
彼らが嫌でなければ良いんじゃないかな。」
ハイド君が頭を掻きながら言う。
「そうだな。保養所やシェルターの管理人や護衛はいくらでも成り手がいるが、」
アンちゃんがそこでニヤリと笑った。
「ハイドの麗しの顔によろめかない夫婦ものはそういないもんナア。」
「もう。ふざけないでくださいよ。」
眉をひそめるハイド君。
「とりあえず、母に話をしますわ。
あの家を引き払ってここに来てくれるかどうか。
そしたらあちらにいるクノイチさん。ルシアさんでしたっけ。
彼女もここに来ていただいて。」
「あ、そうだったね、メリイさん。アイツもハイドには慣れてるね。以前はみんなで同居してたんだしね。」
「ウフフ。賑やかになりそう。私ね、わりと大家族って好きなんです。」
嬉しそうに笑うメリイさん。
「ソウダネ、メリイ。あのときはそれにレプトンさんもイタッケ。」
あー、そう言えばレプトンさん元気かな。
なんかね、そういうCMがあったんですよ。
はらたいらさんがね、
「なん杯食べても、はらたいらー!」っていうの。
そうすると女優さんが、
「漫画的ー!」って突っ込むのです。
何のCMだったかな?
もしかしたら、
「何杯飲んでも、はらたいらー!」だったかもしれない。
それに「おめでとう、おめでとう」と連呼するとエ○ァの最終話みたいですかね。




