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ブルーウォーター公国物語(続グランディ王国物語のそのまた続き)  作者: 雷鳥文庫


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37/306

御身(おんみ)お大事に。

誤字報告ありがとうございます

 入学式の数日後、アンちゃんがクロタを抱っこしながら、朝練から戻ってきて自宅内に入ってきた。

もう抱っこ出来るようになったのね。えらーい。

そしてクロタ、抱っこさせてあげてえらーい。


コウテイペンギンの、コウ○ンちゃんの気持ちになった私。


マーズさんはサマンサちゃんとカフェで、お茶を飲んでいるし、子供たちもまだ寝ていて誰もいない。

ミルドル達は帰った。


「メリイさんとこの住み込みの使用人。

見つからないワね。

最初はさ。孤児院から引き取ろうと思ったんだけどネ。」


ソファに座ったアンちゃんがクロタを撫でまわす。

ぶにゃおん。

ひとこと鳴いて目を閉じるクロタ。

嫌なら逃げていいんだよ?


アンちゃんの話は続く。

「…ハイドがなかなか男前でしょ?孤児院から若い娘を引き取るとトラブルになりそうだからねえ。

――夫婦もんがいいんだが。」


その発想はなかったな。

確かに。最近ハイド君は王妃様からいただいたカツラをきちんとつけている。

眉なんかもそれにあわせて描いたりしてる。

元々地毛は薄いブロンドのようで、眉毛の色も薄いのであるが。

やはり眉大事だね。

スキンヘッドで眉が薄いときより、顔がハッキリクッキリとしてくる。


「龍太郎くんを怖がる人だといけない、とは思ってたけど。」

「それもあるよな。やっぱりゲン・ノジョーとオ・ツナ夫婦に頼もうかしら。今やってるシェルターとか保養所の管理人は辞めてもらって。」


「お互いに、元忍びだよね。だとしたらハイド君の後輩になるの?それとも先輩?」


「う、うーーん。キャリアは同じくらいかな。どっちかというとさ、ハイドは元々忍びの里出身だよ。

ただアイツは潜入する任務が多くて。ただの料理人として暮らしたり。

ちょっとだけ俺が面倒を見たけどさ。」


「そうなんだ。」


「俺はヤー・シチのとこのモンだからネ。ゲン・ノジョーはどっちかというとスケカクさんとこだよ。

その後さ、第一騎士団に形だけ入ったの。

リード様たちの護衛になるためにネ。

まあ、どっちにしろ王妃様が噛んでおられるけども。

俺はアラン様付き。ゲンの野郎はリード様付きだったな。」


「なるほど?」


それでリード様夫婦の影武者をやっていて、二人とも怪我をして引退して、保養所やシェルターの護衛をしてる訳ね。


「俺みたいにさ、堂々と影の人間が表に出て、護衛するってあまりないのヨ。

大体騎士団なんだ。

あいつらは影武者になるくらいだから見栄えも良くってね、騎士の格好をさせるととても良く似合って。それでしばらくリード様たちの近くにいたのさ。」


なるほど。確かにしゅっとしてたな。

ハイド君みたいに、目をひく美貌ではないが。



「そこでもねえ、夫婦モンだからリード様やヴィヴィアンナ様の美貌にくらりと来ないんじゃないか、

って選ばれたの。

あの二人はちっちゃな頃から仲が良くてね。お互い以外は目に入っていなかったのさ。」


へええ。


「ハイドとは、そんな感じで派閥が違うから、絡みもあまりないはずだが。

お互いに気まずいかなあ。でもなあ。

あとね、レイカちゃん。ヒデージに弟がいてグランディにいるっていってなかった?執事だったりしない?」

「ジージーズ?にルイジーニアスだよね?うん、一時期ウチで執事見習いやってたけど。

その後、独立して他所で働いてたよ。」


うちも三人も四人も執事は雇えなかったからねえ。


「今、手が空いてたらメリイさんの執事を頼めないかしら。」


メリイさんの執事しつじか。一瞬、メリーさんのひつじと聞こえたよ。


(一瞬、強面の少佐の顔が浮かんだ。

寝る前に、メリーさんのひつじとつぶやくんだよね。)


「ヒデージに聞いてみる。」

「ああ、頼むワ。早めにメリイさんとこに使用人を見つけてやらないとネ。」


「なんで?」


はーーっと、アンちゃんはため息をついた。

「昨夜、龍の字が俺んとこに来たのよ。」

「え、気がつかなかった。」

「ま、仕事がら耳がいいからね。それでそっと外に出た。」


ああー、回転する壁なんかつかったりしたのね。


「それでネ。半泣きになって誰か働き手いない?って言う訳ヨ。

多分、本人も他の人も気がついてないけどメリイはおめでただよ。って。

早く世話する人を雇ってって。」

「エッ。」

「しーっ。まだ他言しないでね、本人も自覚しない早期なら何があるかわからないし。」


コクコク。


無言で首を縦に振る私。

おめでたい。おめでたいが。龍太郎君は複雑か。

もう花見の時には予感があったのかな?

「花見の時は違うって。そうじゃなきゃ、メリイに酒なんか飲ませねえよって、言ってたよ。」


ああ、そう。


「もうね、わかるんだって。身籠ったのが女の子だって。総領娘として可愛がるつもりだって。」

そんなことまでわかるんだ。すげえ。

「え。じゃあパープル婆さんは?もうリーリエさんはグランディにいるんでしょ。

彼女、経産婦でしょ。」


アンちゃんがポカンと口を開けた。


「…その発想はなかったわ。ハイドも頭が上がらないしね。

王妃様から命じてもらえば、メリイさんに心底尽くすはず。龍太郎にもね。」


考え込むアンちゃん。

「年齢的な事を考えれば、おゲン夫婦の方がいいんだけど。」

「とにかく、執事はいた方がいいんだよね。

ヒデージに聞いてみるわ。

それにね、ハイド君に聞いた方がいいよ。おゲンさんとかパープル婆さんとか、嫌いだったりしたら困るでしょう。」

そうか。と言ってアンちゃんは考えこんだ。


「それからね、本人やハイド君にはおめでたのことを言った方がいいよ。身体を大事にして貰わないと。」

まずはそれからだ。

うっかり重い物を持ったりとか、階段を一個飛ばしで降りたりして転んだらどうする。


「でも、今医者にかかってもわからないでしょ。龍の字に言わせる?でもなんかアイツ、まだショック見たいだし。」

「メアリアンさんに頼みましょう。」


アンちゃんが目を見開いた。


「ああ!なるほど!」

「彼女ならわかる。神託を受けたとかなんとかいって、メリイさんに会いにいってもらう。」


「冴えてるわ!レイカちゃん!」

アンちゃんが私の手を取ってジャンプした。



…その後、ネコカフェの事務所に行ってメアリアンさんに会って頼んで、話は進んだ。

「わかりましたわ。私からも見てみましょう。」

横で話を聞いたランド兄は目を丸くしていたが、

確認するまでは黙ってるように頼んだ。


「わかった。もうすぐ母さんが出勤してくる。

ヒデージの兄弟のことは聞いてもらうように頼むね。」


「行ってらっしゃい。お子様は私が見てますわ。もうすぐラーラさんも来ますしね。」

ショコラさんが微笑んだ。


御身お大事に。手紙の結び言葉ですね。



時々ね、階段の最後を一個飛ばして降りてよろめく事がありました。老眼かしら。

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