桜、桜、弥生の空は。花盛り。
誤字報告ありがとうございます。
三月の中旬。桜のつぼみも膨らみ始めた。
「おはようございます!サマンサさん!」
朝の筋トレの後マーズさんはにこやかに、いの一番に
猫カフェに入ってくる。
後から苦笑しながらアンちゃんとミルドルとドギーが入ってくる。
「マア、お熱いことで。」
「ええ!アンディ様!毎日少しだけでも会えて嬉しいのです、ね、サマンサさん!」
「は、はい。」
マーズさんの熱と圧に押され気味のサマンサちゃんだ。
「今度お花見に行きませんか。」
「はい、ええと。」
「行ってらっしゃいヨ。」
アンちゃんもにこやかだ。
花見は私たちもやるつもりである。
お邪魔にならないように別の日にしないとなあ。
「とにかくマーズさん、タオルをどうぞ。」
「やあ、すみません、サマンサさん。」
満面の笑みのマーズさんである。仲良き事は美しきかなである。
(by 武者小路実篤)
「ミルドル君、入学の準備は進んでいるのかい?」
汗を拭きながら上機嫌でミルドルに話しかけるマーズさん。
いきなりの問いかけに驚くミルドル。
「は、はい。だいたい。学用品も揃ってるし。」
「そうか。ネモ兄の名代で私が入学式には挨拶に行くんだよ。
新設された中等科だからね。」
なるほど。
「リード様も出られるんでしょ。」
アンちゃんも汗を拭きながら言う。
「うん、そうですね。校歌斉唱をなさるそうです。」
「あとはエリーフラワー様か。」
そうそうたるメンバーである。
今回の入学式はミルドルの親、サンド兄達が来る。
息子の晴れ舞台だからな。
母達も見たいらしいが、孫の入学式を見に行く祖父母ってどうだろうか。
エリーフラワー様に頼んでみるか。
キューちゃんも来るだろうし。
「そうそう。ブルー婆さんだけどな。寮の舎監になるらしいぞ。女子職員の独身寮のな。」
「え。ぴったり。」
あのロッテ○マイヤーさんっぽいお婆さんだよね。
エメリンにも負けないぞ、ウン。
「中等科以上は学生の寮もあって、女子学生の寮はグリーン婆さんがやるそうだ。」
あー、普通のお婆さんっぽいものね。子供達は安心するかもね。
「割と寮生が多いんだよね。ちょっと要注意だ。他所の国からも来るのだから。
十五歳以下の子供は多少悪くってもキューちゃんは見過ごすからね。」
マーズさんは考えこむ。
「でもまあ、グランディよりマシでしょ。あちらは成獣様は、まったくノーチェックだし。
ミッドランド氏はいなくなってますしね。」
アンちゃんが薄く笑う。
その五日後。桜が満開になった。
さあ、お花見だ。
というか、母の家にはキューちゃんに植えて貰った桜がある。
庭も広いしバーベキューをして見るのもいいね!
明日あたりどうかな?みんな予定合わせてね。
と、思っていました。
「オハヨーサン!」
いつものように朝練軍団をカフェに入れて、あったかいものを振る舞おうとしていたのだが。
一緒に入っていたのは、誰だ?誰だ?
白い翼のガッチ○マンではなく、白銀の翼の龍太郎君だ。
「ウワア、美味シソウナノ飲んでるジャン!
甘酒かい?」
「そうだよ。飲む?」
これは酒粕を取り寄せて溶いたやつだ。
少しアルコール風味だよ。
「ウン。ワオ。生姜が効いてて美味いネエエ!」
そこに入ってきたのはハイド君だ。
今日は黒のバンコ○ン風のカツラである。
アイシャドウ塗ってほしいなあ。
「龍ちゃん、ひどいよ。人を降ろしたらさっさと先に行っちゃって。
皆様、お揃いで。お早うございます。」
「はい、おはよう。」
「うん?新顔がイルジャネエカ。コノお子さん達は誰でえ?」
「あら?ドギーはともかくミルドルも初対面だっけ?
ミルドルは私の甥っ子なのよ。母達と住んでるの。
ドギーはね、母のとこの執事見習いよ。」
「ア、ソウ。パイセンを通じて存在は知ってはイルヨ。
会うのは初めてカモナ。」
「し、神獣様。み、ミルドルと申します。」
「聖龍様。私はドギーでございます!」
「フウン。レイカサンのオッカサンのとこに住んでるノカ。
俺は龍太郎。知っトルケ?」
「は、はいいい!いつもお姿を拝見してさせていただいております、お会い出来て光栄です!」
「ウン。光栄デショ、デショ!」
良い気分になってクルクルと飛び回る龍太郎くん。
「ほら、龍ちゃん。ここにきた用件をお話しして。」
ハイド君の肩に乗る龍太郎君。
「ウン。アノネ、レイカサン。一緒に花見ヲヤロウヨ。あの火山の麓デサ。」
「花見のお誘いに来たのですよ。日本的なお弁当を作って欲しいんですって。もちろん私もやります。いかがですか。」
「急な話ダカラナ!来れる人だけで良いんダヨ。
マーズサンも来レルカイ?
あ、ソウダ、ご婚約オメデトサン。」
「ありがとう!神龍様!万障繰り合わせの上是非出席致します!
ね、サマンサさんも一緒にね?」
「ハイ、私はレイカさんのお仕事が無ければ。」
「フフフ。子守りデショ。チビッコも連れてくれば良いジャン。
ネエ、レイカさんのオッカサンも来てクレルダロ?
ソシタラ、パイセンも来るダロウ。
お子様いても大丈夫ー!!」
あらら。マーズさんはお花見デートしたかったんじゃ?
「敵わないなあ。龍の字には。」
アンちゃんも眉尻を下げてる。
「あら、龍太郎ちゃん。久しぶりねえ。」
奥から母が現れた。
「オッカサーン。」
にこやかに母のところに飛んでいく龍太郎君。
何度も言うが君のオッカサンではない。
「会イタカッタヨ。また背中掻イテ!」
「まあ。相変わらず甘えっ子で可愛いいわね。
そらそら!ここ?ここが痒いの?」
高速で両手を動かし背中を掻いてやる母。
「ええか?ええのんか。」
鶴光かい!鶴光でおま。のわんばんこかい!
「アハン!極楽ウ極楽!」
何を見せられているんだろう。
マーズさんやミルドルやドギーの顔は引き攣っている。
アンちゃんはいつものことだと欠伸している。
ハイド君は苦笑している。
サマンサちゃんの目は母に対する尊敬に溢れている。
「凄い。話には聞いていましたが。流石レイカさんのお母様だ。」
「お、お婆ちゃん。や、やめなよ。怒られないの?」
「さあ!龍太郎ちゃん。お腹も掻くわよ!転がって!」
「ハーイ♡
…ウワアア!キクキク!たまんねえ!」
楽しそうで何よりである。
「ネエ、オッカサンも花見を一緒にシヨウヨ。」
「あら。明日、ウチの桜を見ながらバーベキューをするつもりだったのよ。
キューちゃんが植えてくれた桜があって、一本だけど大木なのよ。」
「ヘエエ!」
「マーズさん達は二人っきりで何処か別のところで花見かな?」
「ヘエエエエエ!?」
「え、そうなんですか?明日お花見のご予定だったんですか?」
「そうよ。でもマーズさんはこないだサマンサちゃんを誘ってたでしょ。だから日程が被ってもお邪魔にならないよう、別の場所にしようと。だってそちらは行くなら麓の桜並木でしょう?」
「うん。それにね、ぶっちゃけ小さい子連れだからさ。麓の桜並木だとお手洗い問題がね。
自宅前だったら子供も疲れたら寝せられるしね。」
「レイカさんの言う通りですね。」
ラーラさんがランを抱っこして出てきた。
「ああ、そうか。まだ場所も日程も決めてなかったなあ。」
頭を掻くマーズさん。
「ネエ。ミンナ一緒に明日、オッカサンのとこで花見ジャダメなの?
バーベキューいいじゃん。俺焼くの得意ダヨ。」
龍太郎君が縋る目で見てくる。
「良いけど、一本しか生えてないわよ。」
「パイセンに頼もう。花咲爺さんミタイにアット言う間ダヨ。」
何ということか。
……本当にやりやがった。
龍太郎君と母の頼みでキューちゃんがウチの前に桜を五本追加で生やしてくれた。
いきなりの満開の桜である。
「ありがとう!キューちゃん。」
ザバババン!
母が鍋ごとキューちゃんの口に甘酒を流し込む。
「ああっ!なんと乱暴なっ!」
マーズさんは悲鳴をあげたが、キューちゃんは満足げに目を細めて消えた。
「…モルドール一族恐るべしですね。」
マーズさんの表情には畏怖があったが、それは母だけです。
さあ、明日はお花見だ。
短編「貧乏領主の姫ですが、草取って売ってたら美貌の青年を拾いました。」
投稿しました。
さくっと読めるコメディです。
読んで下さいね。




