華麗なるブルーウォーターの一族。
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サマンサちゃんは夕方、キューちゃんに送られて帰ってきた。
「ただいま。」
「どうだった?心配してたのよ。」
母が駆け寄る。
「キューちゃん、ごめんね。付き添いありがとう。
ほら、このクッキー食べて。」
ざらざらざら。
ラーラさんのジンジャークッキーを全部、皿を傾けて神獣の口に流し込む母。
「ああっ、そんなぞんざいなっ。」
アンちゃんは狼狽えるが、キューちゃんは気にしてないようだ。
目を細めて飲み込む。
満足げに頷いた。
キュー。
淡く光って消えていく。
「気にいったみたい♬」
「……そうですね。すごいなあ。
で、サマンサ。どうだったのよ、デート。」
「うん、アンディ様。楽しかったですよ。
動物いっぱいで。
ダチョウとエミューの牧場にまず連れていって貰いましたよ。ダチョウもエミューも可愛いですね。
普通なつかないらしいんですけど、マーズさんには寄ってきて。私も撫でさせてもらいました。」
いいなあ。
「そしたら、マーズさんにそっくりの人がやって来て。」
「ああ、マーグさんか。双子の弟さんで少し背が低くて髪を反対にわけてるだろ。」
「ハイ。その方が、こんにちは。弟のマーグです。
サマンサさんだね。ビッグな鳥達は怖くないのかい。流石だね。って。」
ああ、お見合い相手の中には動物が苦手なお嬢様がいた訳ね。
「私が可愛いですよ、鳥さん達。って言ったら、ダチョウの卵のプリンもくれました。
ハイ、コレ。お土産です。
レイカさんにくれぐれも宜しくって言ってましたよ。
マーグさんともお知り合いなんですか。」
「まあね。以前グランディで王妃様の侍女をしていたの。そこにマーズさんとマーグさんはいたのよ。侍従をしていたわ。」
「あー、それで。帰りにマーズさんの方も、レイカさんにくれぐれも宜しくって言ってました。
なんかレイカ姉さんってラスボスみたいですね?」
ははは。
「それから、普通の動物園にも連れていってもらいました。
普段入らないところにも入れてくれて。
面白かったです。
それに動物がものすごく懐いていて、凄いですね!
みんなマーズさんに寄っていくんですもの!」
ほう、マーズさん。とことん自分のホームグラウンドに連れていって、勝負をかけてきたな。
「動物園の売店でアイスをご馳走になったんですけど、アイスを手渡してきた女の人が、ニコニコして、
マーズの母アリサです、ふふふ、驚いた?っておっしゃって。」
アリサさんかあ。相変わらずスタッフのふりをして驚かすのが好きだなあ。
「それで、なるほど。手が足りないんですね?
お手伝いします。猫カフェやってたから、アイスの売り子も出来そうです!って言ったら喜ばれて。
お手伝いは固辞されましたけど。
今日は良い服を着てたからですかね?」
「オマエ、それは。
……あーあ、やっちまったなあ。」
アンちゃんが頭を抱えている。
「皆様、雲の上の方達と思っていたけど、庶民的なお仕事もなさるんですね。」
いや、アリサさんのは仕込みだ。普通、国母はアイス売らない。
それに、サマンサちゃんの受け答えは百点満点だ。
アリサさんも嬉しかったろう。
地に足がついた花嫁候補だ。
…うん、もうサマンサちゃん。
あんたの将来は決まった。
ブルーウォーターの一族みんなに気に入られてるじゃないの。
「それでアリサ様もレイカさんにはくれぐれも宜しくと。やはりラスボスなんですか?」
「あっハイ。
ブルーウォーターの人達は私に負い目があるのよ。
もう気にしなくていいのにねえ。」
「 ? 」
「まあなア。そのうち誰かから聞くだろうけど、ネモさんの父親と、長男。そして三男は困ったやつらだったのさ。
次男がネモさんさ。本名はエレンと呼ばれていた。
王妃様に二段階改名された珍しいパターンでね。
アルバートからネモになったんだよ。
妻をないがしろにした父親と長男。
そしてレイカちゃんにストーカーした三男。
どうして同じ兄弟なのにあんなに違うんだろうな。」
「私がその三男に理不尽な兵糧攻めをされてね、食べるのもちょっと困ったときがあったのよ。
だからアリサさんの中では私は永遠の欠食児童みたいでね。」
「ええっ。」
「食べるものがなくて、具なしのお好み焼きを焼いたことあったのよ。
粉だけをといて丸く焼くの。それにソースをつけて食べる。
そのうちアンちゃんが野菜をくれたし、エリーフラワー様も特別手当てをくれたから、何回かで済んだけど。
まあお仕事でご飯作って、お相伴してたし。」
うん?クレープに近い?でもウスターソースつけてたからな。
卵もイースト菌もなかったから、パンケーキやパンも無理だった訳よ。
「粉だけのお好み焼き!お嬢!そんなに苦労してたの?やだア、言ってくれれば良かったのに。
そ、それなのにカレーヌ様にもご馳走して?」
おっ、懐かしのお嬢呼ばわりか。
「まあねえ。そんな事もあったの。
カレーヌ様ねえ、あの時はそこまで困ってなかったよ。
え、なんで抱きついてくるのアンちゃん、涙目で。
こら、人前ですよ。」
サバおりになるからやめて、ぐええ。
「許せませんね!その三男の男!」
怒るサマンサちゃん。
「セバスチャンさんでしょ!会ったときはそんな奴に見えなかったのに!」
「お母さん、奴もそこまでわかってなかったのよ。ただ、お給料が満足に払われないように、手を回されただけ。
それにもうセバスチャンは熊に食われてるから。」
「ええっ!」
驚愕するサマンサちゃん。
「ま、それでブルーウォーターの人はレイカちゃんに頭が上がらないのよ。ローリアさんの看病をしたのもレイカちゃんだからね。
サマンサ、もしマーズさんと結婚することになっても
イジメられることはないと思うワよ。」
アンちゃんの言葉に頷くサマンサちゃん。
「うーん、またデートしてくださいと言われたから、
OKしましたけど。すぐに、結婚するかどうか決めなくちゃいけませんよね。」
「まあなア。見合いなんだから。三回くらい会ったら返事しなきゃなあ。」
「そうですよね。」
「ランクの奴はもう、いいんだろ?もしエドワードを通して一度会いたいと言ってきたらどうする?」
アンちゃんが腕組みをする。
「アハハ。まさか。明後日は観劇に誘われてます。
私、お芝居観るの初めて。凄く楽しみ。」
もちろん、ボックス席だったそうだ。
グイグイ来るな。マーズさん。
これでサマンサちゃんがマーズさんの親しい女性と、全方位に知らせまくりである。
まったくブルーウォーターの一族は仕事が、早い。
……はい、フラグは立ったら回収されるものなんである。
次の日。エドワード様が現れた。
難しい顔をして。




