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ニューなお家は、パラダイス。

誤字報告ありがとうございます

 シンゴ君達の新居にお呼ばれすることになった。

「どうぞ。いらっしゃいませ。」

父母の家の隣だ。

渡り廊下ではなくて玄関からお邪魔します。


わあ。可愛らしい飾り付けでいっぱいだ。

流石に新婚家庭である。

壁紙はミモザ柄だ。あら、プリザーブドフラワーも沢山。

薔薇にラベンダーだ。

うん、なんか良い匂いがする。


「はい、これ。お土産。」

エリーフラワー様と開発した乾麺セットを渡す。

「ありがとうございます。忙しい朝に最適です。」

「好物です!わ、これ。新製品ですね!」

ふふ。シーフード味や味噌味のカップ麺を開発したのよ。

というか、思い出しての再現ね。


「もっと早くアンディ義父さんたちをご招待しなきゃと思ってましたが、片付かなくて、というか物が揃ってなくて。」

シンゴ君が頭をかく。

「寝に帰るだけで。」

「お食事もお隣で一緒に済ますことも多いですから。」

母とラーラさんは一緒に仕事にきて、一緒に帰る。

そして一緒に食事を作ったりしてる。

すっかりあちらが母屋だ。

寂しがりやのラーラさんはすっかり母に懐いている。


「使ってない部屋も多くて。そこなんか物置きになってます。」

ラーラさんが二階を案内してくれる。

日当たりが良くて清潔だ。

ここもやはり神獣様達の清浄な気が満ちている。

母の家への彼等の祝福は、棟続きのコチラにも効いているみたいだよ。


「客間もありますが、まだ予備のベッドも置いてないんです。」

シンゴ君があけたドアの向こうはガランとしてて、何もなかった。

「あー、ヤマシロやロンドが泊めろってうるさいんだろ?」

アンちゃんが鼻で笑う。

「アイツら図々しいよな。こっちの集会所に泊まればいいじゃん。新婚家庭の邪魔する気満々だな。」


「非番の時、飲み明かしてそのまま泊まりたいそうで。ベッドがないからって断ってますが、そのうち寝袋持ち込みそうです。」

シンゴ君が苦笑する。

うわ、迷惑だな。


「けっ。ラーラは忍びじゃない一般人なんだぞ。アイツらは全く。独身気分が抜けてねえな。って独身か。」


「ま、ヤマシロはそろそろゴールインしそうですけどね。」


二階から降りて、一階の渡り廊下の方へ行く。

そこから内線で連絡して、応答があればあちらへ行く仕組みだ。

「留守宅に行く訳にはいきませんから。」


アンちゃんは家を見回して伸びをした。

「ま、静かでいいじゃん。非番の時は爆睡出来そうだな。

それに部屋も余ってるし、そのうち手伝いを置いてもいいかもね。」

なるほどね。

ラーラさんも子供ができたらベビーシッターとかも必要だよ。


「ではリビングへどうぞ、お茶をいれますね。」

ラーラさんが奥に行くと、

「なかなかの、からくり屋敷じゃねえか。」

アンちゃんがニヤリと笑った。

「やはりわかりましたか?」

シンゴ君も頷く。

「 ? 」

「こないだ廊下を繋げただけじゃなくて、あちこちを

改造したんだな。

そこら中に抜け穴や隠しスペースがあるな。」


そういやアンちゃん、壁をじっとみたり、軽く叩いたりしてたな。


「流石アンディ義父さん。」

「まあなア。蛇の道はヘビって言うからな。

でも、ま、良く出来てるよ。」


なんと。ではウチの自宅もそうなの?

アンちゃんを見るとにっこりと微笑んだ。

ええー、壁に持たれかかったら、

くるり。って、

どんでん返しに、なっちゃったり、なんかしちゃったりするの?

(広川太一郎みたいな言い回し)

もー、言っといてよー。


ラーラさんが紅茶をいれてくれた。

あら、このクッキーは?

「私が焼いてみました。」

ほほう。手作りかい。

「カレーヌ様のとは、比べ物にはなりませんが。」

「なるほどネエ。ジンジャークッキーか。ハシナ国は生姜が良く取れるからな。あちらの味か。

寒いときにはいいよな。これ。」

アンちゃんが感心している。

「うん、美味しいよ。」


「良かった。」

ラーラさんが花がほころぶように笑う。

彼女は料理が得意なのだ。スイーツ作りも。

カレーヌ様がスカウトしたくらいだものね。

「後でお義祖母ばあさんとこにも持って行きましょう。」

この場合の義祖母さんはウチの母である。


「まったく、あっちが自宅みたいな感じで入り浸ってます。」

シンゴ君が眉尻を下げる。

「いいんじゃないの。うちの両親は賑やかな方が好きだし。」

「そうみたいネ。ところでミルドルの奴はどうしてる?」


アンちゃんは紅茶にレモンをいれながら聞いた。


「うーん、大人しく勉強してると思いますよ。」

ラーラさんが言えば、

「フィフィ先生の詩集、【君に届け】を読んで、

はああっ、切ねえっ……てため息をついてましたよ。

思わず、どつきたくなりました。」

シンゴ君が口の片方を持ち上げて笑う。


…キミ、笑い方がアンちゃんそっくりだよ。


ミルドルはラーラさんとシンゴ君を、ラーラねえさん、シンゴにいさん、と呼んで慕っている。

あの子はひとりっ子だったからな。


兄弟ができたみたいで嬉しいんだろ。

ま、もうすぐホンモノの兄弟も出来るみたいだけど。

「レイカちゃん、サンド義兄さんところはいつ産まれるんだっけ。」

「六月かな?」

そう、安定期に入ったらしいのだ。

「お義母さんがこっちに来てるけど。手は足りてるのかしら。」

アンちゃんの心配に、

「…お義姉さんのお母様が来てるみたいよ。」

と、返す私。

「…へええ。」

アンちゃんがなんとも言えない顔をした。

「お義父さん達複雑じゃないのかネ。」


「こっちはこっちでウチの子の世話してもらってるしね。それと同じだよ。

それにミルドルには母方のおばあちゃんなんだから。里帰りも簡単でしょ。」

窓から隣の父母の家を見る。

「ウチの父母はもう引退してここにいるんだからね。」


そう、もう第二の人生のスタートなんだ。

子供の世話と事務のお手伝いくらいであとは、ゆっくりして欲しい。


「そうか、そうだな。」

アンちゃんは静かに微笑んだ。


「シンゴ君、からくりの壁ってどこなの?」

お茶を飲みながら聞いてみた。


「ここのリビングもそうですよ。」

「え、私も知らなかった。」

驚くラーラさん。

「教えておくか。何かの時に逃げられないとね。」

アンちゃんが立ち上がって廊下側の壁を触る。

「ここだろ?」

「ええ、ピッタリ閉まってるとわからないでしょ。」

みんなで壁の前に立つ。

シンゴ君が端を押すと、


くるり。


回転した。


「おおー!」

「面白いわ!」

「ね、なんかあったらここから逃げてって

……レイカちゃん?何度もナニやってるの??」


面白い。実に面白い。

くるりくるりと出たり入ったりして遊んだ。

ラーラさんもノリノリだ。

「ん、なんか楽しそうで良かったっす。」

シンゴ君の顔が引き攣っていた。



お茶もいただいて立ちあがる。

「じゃ。あちらのお宅にお邪魔するか。一度この廊下から行ってみたかったのよね。」

アンちゃんがニヤリと笑った。

もう父母が在宅なのはわかってる。


ノックをしたら、あちらからドアを開けてくれた。

ドギーくんだ。

「あ、みなさんお揃いで。」

「ヤァ。ドギー元気か。」

「ハイ、アンディ様。」


おお、肉付きが良くなってきている。

ほっぺもぷにぷにじゃないの。

「はい。皆様のおかげです。さあ、どうぞ。」

苦笑してる。


しまった、また口から出てたか!


執事の様に案内してくれた。


執事かあ。

そういや、うちのヒデージーニアス元気かな。

グランディ王国物語18話「学園八景からのアンディ再び」に出てきた、王都のタウンハウスにいた、老執事だよ。

その後兄のところにいたはずだけど。


「ヒデージなら、引退したわよ。」

母がラーラさんのクッキーを口に入れながら言う。

その略し方ってさあ。

ちびまる○ちゃんのヒデ○○さんみたいだぞ。


「そうだな。アイツの息子が立派な執事になったから。もう老兵は必要ありませんな、フォッフォッフォッ。とか言ってた。

ちょうど私達が引退してすぐの頃出て行ったらしいよ。」

父も頷く。

「ふーん。そうなんだ。じゃあさ、ここに来てもらっても良かったよね。」

「そうだな、レイカ。私達が猫カフェで働いているときとか、ここにいてもらうとな。心強いよ。」

「え、一緒懸命にやりますから、首にしないでください。」

青ざめるドギマギ。

「いいえ、違うのよ。部屋も余ってるし。」

「それに、お手本があれば、ドギーも立派な執事になれるだろう?」

慌てる父と母。


そう。このままだとただの下働きで終わってしまうかも。


「でも、見つかるかな。ヒデージ。」

(フラグ)


次の日。アンちゃんと父母の家にいたら、ハンゾー君が来た。


「実は、入国の係から連絡が来て。

こちらの方が、モルドール家の知り合いだとおっしゃっるのですが。

お心当たりは?」


頭を掻きながら1人の年配の男性を連れてきた。


「お久しぶりでございますな。

旦那様、奥様。

引退して各地を旅行しておりまして、ブルーウォーターに参りましたから、ご挨拶をと。

おや、レイカお嬢様とミルドルぼっちゃまもお元気そうで。

フォッフォッフォッ。」


「ヒデージーニアス!」


そこにはラフな格好をした好々爺がいた。


ニューシネマパラダイスから。

あの映画いいですよね。

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― 新着の感想 ―
評判だけは聞いていました。私の推しスケーターがSPの曲にしたことで改めて知りました。 心にじわっときますね。 広川太一郎さんって、ちゃんと二枚目だったんですよね。 ディーン・マーティンあたりのコメデ…
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